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中国車がEVの次に狙う「ハイブリッド攻略」
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2025年5月17日

EVで先行する中国の自動車メーカーは、ハイブリッドでも存在感を示し始めている。AIエージェント活用など、上海モーターショーでの最新トレンドを自動車ジャーナリストの川端由美氏に解説してもらった。 <ゲスト> 川端由美|自動車ジャーナリスト 群馬大学大学院工学科修了。住友電工にてエンジニアとして務めた...
上海モーターショーで見た!中国自動車産業の最前線、その驚くべき進化とは
中国の自動車産業は日進月歩で発展を続けている。2023年4月に開催された上海モーターショーは、その最前線を知る絶好の機会だった。自動車ジャーナリストの川端由美氏が現地を取材し、中国自動車産業の最新動向について詳しく解説する。

シャオミのEV事故から変わった「自動運転」の表現
Q: 今回の上海モーターショーで注目すべき点は何でしたか?
中国自動車業界の2つの大きなトピックスは「電動化」と「知能化(インテリジェント化)」です。電動化は成熟段階に入り、知能化については車全体がAIを搭載していることが当たり前になっています。その上でどんなサービスを提供していくかという段階に進んでいます。
また、直前にXiaomi(シャオミ)の自動運転車で死亡事故があったことが業界に大きな影響を与えました。事故の詳細としては、セミ自動運転(L2)状態で衝突事故が発生し、その後EVの特性から火災が発生。さらに電動式のドアハンドルが機能せず、非常時の緊急開錠装置が見つけられなかったため、乗員が車内から脱出できずに亡くなったというものです。
この事故を受けて、中国政府から指導が入り、「完全自動運転」という表現をほとんど見かけなくなりました。代わりに「ドライバー支援」「安全重視」という表現が強調されるようになりました。
ハイブリッド車の躍進が意味するもの
Q: EVだけでなくハイブリッド車も注目されていたとのことですが、詳しく教えてください。
意外かもしれませんが、電気自動車大国の中国でハイブリッド車が注目を集めています。中国メーカーはEVの電池技術に強みがあり、そのノウハウを活かしながらエンジン開発を進めています。特に充電できるプラグインハイブリッド(PHV)が先行していますが、通常のハイブリッド車も開発が加速しています。
BYDのエンジニアは「ハイブリッド技術は日本の方が優れている」と認めつつも、「日本ほど高性能でなくてもコストを抑えた製品を作れば十分市場がある」という見解を示していました。これは日本メーカー、特にトヨタの強みとされる領域にも中国メーカーが参入してくる可能性を示唆しています。
中国車に搭載されるAIの実力とは
Q: 中国車のAI搭載状況はどうなっていますか?
驚くべきことに、かなり安価なコンパクトカー(約200万円程度)にもAIエージェントが搭載されています。これらのAIはユーザーの声に反応して、音楽再生や電話の操作、レストラン検索など様々な機能を提供しています。

中国では車とスマートフォンの連携が日本よりもはるかに進んでいます。例えばファーウェイやシャオミなどのスマホメーカーが独自のOSを持ち、それらと車が緊密に連携しています。スマートフォンを持って車に乗り込むだけで自動的に接続される仕組みが実装されており、日本のように複雑なBluetooth接続の手順は必要ありません。
自動運転技術の新たな主役たち
Q: 自動運転技術の最新状況はどうなっていますか?
自動運転の分野では「ポニーAI(小馬智行)」や「モメンタ」といったスタートアップ企業が存在感を増しています。特にポニーAIはトヨタと提携し、すでに自動運転タクシーを展開中です。日本では報道されていませんが、トヨタは中国で一足先に自動運転サービスを開始しています。
これらのスタートアップは大きなブースを出展し、まるで自動車メーカーのように存在感を示していました。完全自動運転(L4レベル)の開発も進めており、様々なユースケースを展示していました。
女性向け高級車からぬいぐるみまで多様化する中国マーケット
Q: 中国の自動車マーケットならではの特徴はありますか?
中国、特に上海では女性が車の購入決定権を持つケースが多く、女性向けの高級車が多数展示されていました。上海の女性は経済力があり、おしゃれで自分の意見をしっかり持っているため、「女性の憧れの車」というコンセプトが多く見られました。
また、車の外観デザインの特徴として、EVはエンジン車と違ってフロントグリルが不要なため、代わりに目の端が強調されたデザインが多く採用されています。これが「いかつい」印象を与えるデザインになっています。

さらに経済状況の影響か、ぬいぐるみをかぶせた展示車やゲームとのコラボレーション、SNSアプリとのコラボなど、車単体ではなく様々なマーケティング手法が採用されていました。
トヨタの中国戦略と進化する現地開発
Q: 日本メーカーの中国での状況はどうなっていますか?
トヨタは中国市場で健闘しています。その要因の一つは現地の研究開発(R&D)拠点の充実です。今回のモーターショーでは、完全に中国で開発された「BG3」が展示されていました。チーフエンジニアも中国人で、中国市場向けに設計されており、価格も手頃で人気を集めていました。
このように現地でのR&D強化は、海外メーカーにとって中国市場で生き残るための必須戦略になっています。フランスの自動車部品メーカーであるバレオも、中国国内でエンジニアを採用し、CTOから現場のチーフエンジニアまで中国人スタッフを起用して開発を加速させています。
テスラの評価と今後の展望
Q: テスラの中国市場での評価はどうですか?
興味深いことに、上海モーターショーにテスラの出展はありませんでした。街中では3やYなどの手頃なモデルはよく見かけますが、かつて中国のプレミアムEV市場を牽引していたテスラは、現在では多くの中国メーカーが参入したことで「ワン・オブ・ゼム(一選択肢)」程度の存在感になっています。
テスラの課題としては、車の利益率があまり高くないこと、イーロン・マスクの関心がテスラより宇宙事業などに向いていることなどが挙げられます。中国市場での苦戦を受け、テスラはASEANなど他地域への輸出強化に舵を切っている様子です。
BYDとトヨタの競争、そして日本市場への影響
Q: BYDの今後の展望と日本への影響はどう考えますか?
BYDはEV市場で圧倒的なシェアを持ち、さらにプラグインハイブリッドや低価格車種にも進出しています。商用EVでも強みを持ち、最近では充電技術でも革新を見せています。例えば、1000kW(1メガワット)の超高速充電器を開発し、ディーラーに設置し始めています。これは一般的な高速充電器(50kW)の20倍もの出力で、わずか5分での充電を可能にします。

BYDが今後、日本市場でどう展開するかも注目点です。現在日本に投入しているモデルはエントリーレベルが中心ですが、もう少し上位モデルが投入されれば、在日中国人などをきっかけに浸透する可能性があります。また、軽自動車クラスのEVが投入されれば、日本でも一定の需要が生まれるかもしれません。
最新のAudiブランド戦略
Q: 欧州メーカーの動向で興味深いものはありましたか?
Audiが「フォーシルバーリングスナッシアウディ」という新ブランドを発表しました。Audiは中国では高級車のイメージが強く、「官僚の車」というイメージもあり、若者向けにリブランディングを図っています。
この新ブランドは若い層がアクセスしやすい価格帯で提供されますが、ロゴデザインについては日本人や欧米人からは違和感があるという声もあります。一方、中国人の評価は「Audiが中国市場に本気になった」と好意的です。これは文化的背景と市場理解の違いを示す一例です。
まとめ:急速に進化し続ける中国自動車産業
上海モーターショーから見えてきたのは、EV、ハイブリッド、AI、自動運転などあらゆる分野で着実に力をつけている中国自動車産業の姿でした。特にAI統合やスマートフォン連携では、むしろ日本や欧米よりも進んでいる部分もあります。
また、BYDをはじめとする中国メーカーは国内市場だけでなく、ASEANや南米、アフリカにも積極的に進出しています。トヨタにとってBYDは今後、最も警戒すべきグローバルライバルになる可能性も十分あります。
日本メーカーも中国市場で生き残るためには、現地でのR&D強化や中国ユーザーの嗜好に合わせた戦略が不可欠です。トヨタのように現地開発を進めている企業は健闘していますが、中国市場の急速な変化に対応し続けることが求められています。