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移民リスク
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2025年5月3日

現在ヨーロッパで進む、移民問題による政治の分極化。長年ドイツを取材してきたジャーナリストの三好範英氏は、日本の移民問題との共通点を指摘する。ドイツの現状から日本は何を学べるのか? <ゲスト> 三好範英|ジャーナリスト 東京大学教養学部卒。82年読売新聞社入社。バンコク、プノンペン、ベルリン特派員。...
「日本的ゆるさ」が国家基盤を揺るがす? ドイツの移民問題から学ぶこと
「日本社会は非常に寛容で多元的だが、それが無原則と混同されがち」と語る三好範英氏
ドイツの経験から見た移民問題の本質と日本への警鐘。ジャーナリストの三好範英氏が、ヨーロッパで進む政治の二極化と日本が直面する課題について語る。

Q: 移民リスクという本を書いた理由は?
長くドイツの特派員を務め、ドイツの街を歩けば移民なしには存続し得ない社会になっていることを実感した。ドイツでは人口の約1/3が移民系の人々となっている。
外国人労働者として受け入れてきた人たちをどのようにドイツ社会に取り込んでいくかという課題があり、様々な議論がある。この経験から、きちんとした政策なしに安易に移民や難民を受け入れることが社会に大きな影響を与えることを日本人に伝えたかった。日本人はまだその影響に無自覚ではないかと考えている。

Q: 「日本的ゆるさ」とは何を指しているのか?
日本社会は非常に寛容で多元的な社会だが、それが無原則と混同されがちだ。移民受け入れについても、きちんとした線を引いて受け入れる人と受け入れない人を明確に分けることをためらう傾向がある。
例えば不法残留者の問題がある。入管法に違反しているにもかかわらず、相当慎重な手続きを経て「日本にいることができない」と判断されているにもかかわらず、かなりの数の外国人が日本に残留している。人道的に日本に留まることを認めるべきだという主張もあるが、それは間違っていると思う。
Q: ドイツで起きている移民問題とは具体的に何か?
移民問題がドイツの選挙における最大の争点となっている
最も深刻な問題は、不法残留者あるいは難民申請を却下されたにもかかわらず送還できないでいる人によるテロ的な犯罪が続発していること。車がクリスマスマーケットに突っ込むなどの事件が起き、ドイツ社会に大きな心理的インパクトを与えた。
また、元々のドイツ人にとって、自分たちのアイデンティティが全く違う文化や価値観によって浸食されているという感覚が強くなってきた。そうした普通のドイツ人の感覚が、今回躍進した「ドイツのための選択肢(AfD)」という右派政党の支持につながっている。
外国人犯罪率が高いという統計もあり、生活習慣や価値観が全く違う人々が隣近所に住むことへの心理的な違和感もある。さらに、移民の子どもや孫である移民2世、3世が社会で分断され混乱が生じている。
地方自治体も大きな負担を感じている。メルケル首相が100万人以上の難民を受け入れた際、難民は地方自治体にも振り分けられ、自治体は施設を整備しなければならなかった。そのために地域のコミュニティの体育館などを収容施設に変えるケースもあり、地元住民は施設を使えなくなるといった問題も生じた。
Q: なぜドイツの経験が日本に関係あるのか?
日本も今、日本社会とは異質な価値観や文化を持つ人々がかなり入ってきている。在日コリアンの問題などもあったが、比較的文化的に近い人々だった。今はトルコ国籍のクルド人やアフリカ系、南西アジアからの人々など、様々な外国人が増えてきている。
ドイツと日本は比較的条件が似ており、環境問題や歴史認識問題など様々な形で比較されることが多い。歴史的に移民を受け入れてきた国であるドイツの経験から、日本が学べることは多いと考えている。
Q: クルド人問題の本質は何か?
基本的には入管法の穴や弱点が原因だ。法整備がきちんとされ、それが執行されていれば、これほどクルド人が川口市や蕨市に集住することはなかったはずだ。
多文化共生を無条件に良いものとして捉える日本社会の雰囲気も一因だ。その雰囲気があったため、行政も政府も政治も強い手段を取れなかった面がある。
クルド人自身も、自分たちが難民であるとは思っていないのではないか。政治活動をしてトルコにいられなくなって日本に来たという人も中にはいるが、少数派だ。日本クルド文化協会の事務局長も、そうした人は最大で100人程度だと言っていた。日本の入管当局が難民認定したのはこれまで1人だけだ。
Q: 入管制度の課題は?ドイツと日本で共通する問題は?
課題は同じだ。一度入国して在留期限が切れても、本人が確信的に留まる場合は送還が難しい。物理的に強制力を使って送還しなければならず、それは日本でもなかなかやりづらい。

入管法改正前の問題の一つは、難民申請を乱用するケースだった。難民申請をしている間は送還できないため、申請を2回、3回、4回と繰り返し、その申請中は送還できないという状況があった。
クルド人の場合、ビザ免除で日本に来ることができる。難民申請をすると特定活動という在留資格を得られ、多くの場合仕事ができる。入管法改正までは、難民申請を何度でも繰り返すことができた。
これは法の枠組みでやってほしい。きちんと在留資格を取って日本で働いている外国人もいる中、クルド人のかなりの数が裏口から日本に入ってきて勝手に居座り、仕事をしている。それは不法就労であり、保険も期間がないので、事故があった場合の医療費の踏み倒しなども起きている。
Q: もし対策が進まなかった場合、日本では何が起きると予想されるか?
「ヨーロッパの現状に近づく可能性がある」と警鐘を鳴らす三好氏
ヨーロッパの現状に近づいてしまうだろう。経済的なメリットもあり、難民を受け入れることは人道的に素晴らしいことだが、数が増えると社会に大きな摩擦を生み出し、排外主義も高まる。
ドイツの選挙で見られたように、政治が二極化する可能性が高い。ドイツでは難民受け入れを巡って左右両極が勢力を増し、中道的で常識的な政治を行っていた政党の勢力が狭まってしまった。政治の不安定化は免れないだろう。
社会的な影響も大きく、政治的にも大きな影響を与える。どれくらいの数を受け入れたときに日本社会にうまく同化できるか、統合できるかを慎重に見極めた上で受け入れていかないと、メリットよりもデメリットの方が多くなってくる。
ヨーロッパで起きていることや世界情勢をよく見渡して、日本がどういう外国人政策を取るのかをきちんと見極め、制度設計や運用をしていくべきだ。
Q: AfD(ドイツのための選択肢)の支持層はどのような人々か?
普通のドイツ人だ。保守的な考え方を持つ人々だが、極右や極左という言葉から連想されるような活動家ではない。支持層に関しては普通の保守的なドイツ人だが、一部にナチズムの過去に共感していると思われる幹部や活動家も入り込んでいる。
AfDが20%の支持を集めたことは、一昔前には考えられなかった。ナチズムの過去があるため、右の政治勢力に対しては非常にアレルギーが強かった。そうした政治勢力が出てくれば、メディアが非常にネガティブに報道して潰すということをしてきた。
そうしたメディア状況にも関わらず20%の支持を集めたことは、社会の中に大きな不満があることを示している。一方で、そうした動向に対する反発も強い。AfDに投票したくないという人々も依然として多く、政治の二極化が進んでいる。

Q: 日本はどのような対策を進めるべきか?
入国管理については、トルコ国籍クルド人の場合はビザ免除で日本に来られることが問題だ。ビザを復活させるのが一つの手段として考えられるが、外交的に難しい面がある。
それを補完する手段として、事前審査制度がある。アメリカやイスラエルなどでは、事前に自分の身分などを申請して、それがないと飛行機に乗れないシステムになっている。そうした形で、来てほしい人、来られる人をきちんと来てもらい、日本に来てはいけない人については事前に、飛行機に乗る前に入国を拒否する仕組みを整えつつある。
入管法の改正により、法的には解決の方向に進んでいる。ただし、実際にそれを執行するにあたって、きちんと送還が進むかどうかはまだ未知数の部分がある。帰りたくないという人は様々な形で抵抗するからだ。
日本も世界も慎重に見極めて、社会にどれだけの外国人を受け入れられるか考える必要がある。何人まで受け入れれば日本社会にうまく同化・統合できるかを慎重に見極めた上で受け入れていくべきだ。そうでなければ、メリットよりもデメリットや弊害の方が多くなる。