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現代アートの楽しみ方 #1
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2025年5月1日

アートってどこを見ればいいの?「美術解説するぞー」さんは、難解な現代アートを理解するには型が必要だという。美術館で使える、アートを見るための三つの「型」を紹介。 <ゲスト> 鈴木博文(美術解説するぞー)|美術解説家 9年間の美術教員経験を経て、子どもよりもまずは大人にアートの楽しさを伝えたいと考...
現代アートの楽しみ方—知識なしでも理解できる9つの型
「アートは映画や漫画のように気軽に楽しめるエンターテイメントの一つ」と語る美術解説家の「美術解説するぞー」さん。現代アートは難解で敷居が高いと感じている人に向けて、シンプルな鑑賞法を提案している。いったい現代アートとは何なのか?どうやって楽しめばいいのか?ビジネスにどう活かせるのか?その疑問を解き明かしていく。

現代アートとは何か?時代の象徴を切り取った表現
Q: 現代アートとは何ですか?
現代アートという言葉にはさまざまな定義があります。世界的には1950年以降や第二次世界大戦以降に作られた作品を現代アートと呼ぶことが多いです。しかし、1980年以降や2000年以降を現代アートとする考え方もあります。「現代」という定義自体が時代とともに変化するものです。
私は「当時の流行りや象徴を切り取った表現」が現代アートだと考えています。この定義に従えば、各時代に現代アートがあったと言えます。例えばモナリザも、描かれた当時は現代アートでした。その中で20世紀、21世紀らしさがあり、なおかつクオリティの高い作品が、今日私たちが「現代アート」と呼んでいるものです。

アートを理解するための9つの型—まずは3つの基本から
Q: 本の中で紹介されていた「9つの型」とは何ですか?
アートにはスポーツと同じように、様々な種目やジャンル、型があります。そういった型を知ることで、アートがより自然に見やすくなります。全9つの型のうち、特に重要な3つの基本を紹介します:
1. 作品の中を見る型:作品に描かれているものを解釈する方法です。女性が描かれている、ポーズがかっこいい、物語がある、暖かそう、怖そうなど、何が描かれているかを読み取ります。多くの人がイメージする美術鑑賞の方法で、学校の美術の授業でも自画像や運動会の思い出を描くなど、この型が中心です。
2. 作品の表面を見る型:作品に何が描かれているかよりも、表面の質感や塗り方に注目します。絵の場合は、筆のタッチやテクスチャー、色の塗り方などを楽しみます。彫刻であれば、どのように刻まれているか、素材感、動きの感じなどを味わいます。描かれている内容より表面の雰囲気を楽しむ方法です。
3. 作品の外を見る型:作品そのものより、それが置かれている空間との関係に注目します。何も置かれていない空間には特別な意味はありませんが、作品が置かれることで空間に意味が生まれます。特に現代アートでは、空間との関わりを重視する作品が多くあります。

Q: なぜ現代アートは空間との関係を重視するのですか?
西洋美術は西洋哲学と密接に結びついており、西洋哲学は前のものを検証・否定しながら新しいものを提案していく考え方です。美術においても「今までと違うものを作ろう」「前提になかったものを新しく作ろう」という発想が発展してきました。
作品の中だけでは表現が足りなくなると表面に出し、表面だけでも足りなくなると空間にまで表現を広げていくという歴史があります。これが現代アートで空間との関係が重視される理由の一つです。
自由と無法則の違い—アートには型があった方が楽しめる
Q: アートは自由な解釈が認められるべきという意見について、どう思いますか?
「自由」と「無法則」は異なります。何の知識もない、何の型も知らない状態で「あなたらしく何かをやってみて」と言われても、アート以外のものでも難しいでしょう。
例えば、テニスを学ぶ時、「テニスは自由なプレイスタイルだから、好きな持ち方で自由にボールを打ってごらん」と言われても困ります。まずは基本的な打ち方を教えてほしいと思うはずです。アートも同じです。
ある程度の文法や型を知っていた方が、より自由な鑑賞が楽しめます。中学1年生の英語文法程度のつもりで、これらの型や文法をインプットすると、アートをより自由に見ることができるようになります。
時間と変化を扱う型—現代アートならではの表現
Q: 他の型の例として、「時間と変化を扱う型」について教えてください。
絵画は変化しない、動かないものというイメージが強いですが、現代アートには消えてなくなるものや形が崩れていくもの、見た目が変わっていくことを前提とした作品があります。
例えば、泡のアートや霧のアートがあります。霧のアートは、霧を吹き出して形を作っていきますが、その形は作者がコントロールできない偶然性を持っています。また、大きな空間を使って一種の彫刻を作り出すという意味で「霧の彫刻」と呼ばれることもあります。
こうした作品を見るときは、時間の存在に気づくことが楽しさの一つです。霧ならすぐに出てきてすぐに消えていく、水が蒸発するアートなら別の時間軸で変化していく。そこから人間の時間軸はどのくらいのスピード感なのかなど、いろいろなことを考えるきっかけになります。
作品の表面を見る型の実践—松村咲希の作品から
Q: 実際の作品を例に、「作品の表面を見る型」を説明してください。
松村咲希さんの「Combination Waves」という作品を例に見てみましょう。この作品は「作品の表面を見る型」にとてもよく当てはまります。
砂に書いたような質感の部分と印刷のようにフラットな部分があり、その対比が面白いところです。凸凹した部分があることで、平坦な部分の「平坦さ」が強調されています。
もちろん、白い形が定規のように見えたり、もくもくした形が雲や惑星の表面のように見えたりと、「作品の中を見る型」で解釈することもできます。しかし、作者の意図としては、テクスチャーの感じや色の見え方を楽しんでほしいという思いがあると思われます。
タイトルの「Combination Waves」は、様々な波、つまり曲線の組み合わせを意味しています。さまざまな質感の波があるという組み合わせを表現しているのでしょう。

アートをもっと楽しむには?初心者向けアドバイス
Q: もっとアートを深く知りたいときのアドバイスはありますか?
まず、9つの型の残りの6つがどのようなものか調べてみるといいでしょう。9つの型を知ると、自分の好みの型が見えてくるはずです。例えば時間軸を利用した型が好きだと気づいたら、そこから派生するアートをもっと探求してみる。あるいは、色や素材感を楽しむアートにも様々な種類があるので、その方向で深掘りしてみるのもいいでしょう。
もし印象派から入った方は(多くの日本人がそうです)、その前後のつながりを探ってみるといいでしょう。印象派の後はどうなったのか?ゴッホやシャガールの後はどう発展したのか?あるいは印象派はなぜ生まれたのか?という風に、好きなジャンルを軸に広げていくと面白いでしょう。
また、あえて自分の好みではない展示に行ってみるのも新しい発見があります。全然好みではなかったけれど、これまで学んだ型で見てみると、実は違う角度から楽しめることに気づくかもしれません。
ビジネスとアートの接点—イノベーションの考え方
Q: アートの考え方はビジネスにどう応用できますか?
アートからは「新しさをどう提案していくか」というイノベーションの考え方が学べます。例えば、500年ほど前は、キリスト教のルールで裸の一般女性を描くことは禁止されていました。しかし、あるアーティストが以前の作品を踏襲する形で新しい裸婦像を描き、それが結果的に受け入れられました。
全く新しいものではなく、過去の作品を基にしながらも新しい提案をしたことで、イノベーションが起きたのです。これはビジネスにも当てはまります。「作品は一点物」「手作り」という前提を守りつつも、「大量生産してはいけない」という固定概念を疑問視することで、新しい価値が生まれることがあります。
アートの歴史を学ぶことで、固定概念からどう抜け出すか、どうやって新しい提案を受け入れてもらうかというヒントが
得られるでしょう。