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米中貿易戦争。優位なのは中国
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2025年4月27日

加熱する米中貿易戦争。この戦いはどちらに分があるのか?中国経済は今どんな状況にあるのか?米中対立の行方と、中国経済の最新アップデートを大阪経済大学の福本智之教授に聞いた。 <ゲスト> 福本智之|大阪経済大学 経済学部教授 1989年日本銀行入行。在中国大使館一等書記官、国際局参事役、北京事務所長、...
中国の景気は「大転換」へ──トランプ関税ショックで見えてきた新たな成長戦略
福本智之教授による中国経済分析
「米国依存からの脱却を加速させた中国。実は米中の貿易戦争は中国にとって内需拡大への転機となっている」

Q: トランプ関税ショックに対して中国はどのように反応していますか?
中国の公式見解としては「一方的ないじめ行為に対して反対する」というものですが、興味深いことに世論を米国批判で盛り上げるような動きはあまり見られません。むしろ政府は「我がことをきちんとやっていかなければならない」というメッセージを発しています。
実際、中国政府はトランプ氏が大統領選挙の段階で「対中関税を60%まで引き上げる」と公約していたことから、昨年秋口からすでに準備を進めていました。特に昨年9月末以降は経済重視に重点を置き、内需拡大策を次々と打ち出してきました。その成果は徐々に表れつつあり、家電や自動車の購入補助金政策により消費が持ち直し始めています。
Q: 米中の貿易関係と、このトランプ関税による影響はどの程度のものですか?
米中の貿易額は非常に大きく、双方とも数千億ドル規模の輸入を行っています。しかし中国の対米輸出依存度は2006年の7.3%から昨年は2.8%まで低下しており、米国市場への依存度を着実に減らしてきました。

この状況を米国財務長官は「中国は米国に5倍輸出しているので米国の方が有利」と主張していますが、実際は逆です。ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は「貿易戦争においてエスカレーション有利性を持つのは中国だ」と指摘しています。
なぜなら、米国は中国からの輸入に大きく依存しており、短期間でそれを他国からの輸入に切り替えることは困難だからです。例えば、米国で販売されるスマートフォンの半分以上はアップル製のiPhoneですが、その8割は中国で生産されています。また世界のエアコンの8割、米国が輸入する扇風機の4分の3、玩具や自転車の75%も中国製です。
Q: 中国経済の現状はどうなっていますか?
2024年第1四半期のGDP成長率は5.4%と市場予想を上回りました。この好調さの背景には、消費の回復と輸出の駆け込み需要があります。特に耐久消費財の買い替え補助金政策が消費を押し上げ、一方で外需(輸出)が成長率に2.1%も寄与しています。ただし、この輸出増加にはトランプ関税前の駆け込み需要という特殊要因が含まれているため、第2四半期以降は下振れする可能性が高いと見られています。
不動産市場については、依然として構造的な問題を抱えています。不動産開発投資は前年比マイナス10%程度で推移し、不動産販売面積も前年比でマイナスが続いています。ただし、大都市の中古住宅価格は上向き始めており、政府の住宅市場対策が一部効果を出し始めています。しかし、地方都市では価格下落が続いており、不動産デベロッパーの経営難や膨大な住宅在庫という根本的な問題は解決していません。
Q: 中国はアメリカからの輸入に依存している商品はありますか?
中国がアメリカから輸入している主な商品は飛行機、穀物、液化天然ガスや原油などの資源、そして半導体などです。しかし、これらの多くは代替が可能です。
例えば穀物については、トランプ政権1期目の関税強化以降、ブラジルなど他国からの調達を増やしてきました。飛行機はボーイング機の輸入を急に止めたというニュースも出ていますが、エアバスからの調達が可能です。資源についてもロシアなど他国から調達できます。
このように、中国は第1期トランプ政権の時から米国依存を減らすべく調達先を分散化してきました。米国の関税引き上げは確かに影響はありますが、致命的なダメージにはならない体制を構築しています。
Q: 中国のデフレ懸念と株価の動向はどうなっていますか?
中国では依然としてデフレ圧力が続いています。3月の消費者物価指数(CPI)は前年比-0.1%と再びマイナスになり、生産者物価指数(PPI)も3年近くマイナスが続いています。これは生産能力過剰の問題が続いていることを示しています。
一方、株価については、トランプの総合関税発表を受けて一時大幅に下落しましたが、比較的早く回復しました。この回復は、中国政府系の投資ファンドが株を買うと公言し、実際に買い支えたことも要因の一つです。興味深いことに、トランプ大統領就任後の株価騰落率を見ると、上海総合指数は若干のプラスを維持しており、米国のS&P500や日経平均が10%以上下落しているのと対照的です。

Q: 中国政府は今後どのような経済対策を講じる可能性がありますか?
中国政府は今年3月の全国人民代表大会で、政府債務の発行額を前年比2.9兆元(約60兆円、GDP比2.1%)増加させると決定しました。これはちょうど60%の関税がかけられた場合にGDPを2%程度押し下げるという試算に対応するものでした。
現在は決定済みの国債と地方債を前倒しで発行して経済刺激を図っていますが、今後さらに1兆元程度の追加発行が行われる可能性もあります。
注目すべきは、その中身が消費拡大に重点を置いていることです。耐久消費財の買い替え補助金は昨年の1500億元から今年は3000億元に拡大されており、さらなる拡充も考えられます。また、中低所得者層の消費を増やすために、社会保険料の引き下げや農民向け年金給付の増額なども検討されています。
金融政策としては、利下げや預金準備率の引き下げが第2四半期中に実施される可能性が高まっています。
Q: 今回の米中対立は日本との関係にどのような影響を与えますか?
米国市場が中国企業にとって厳しくなることで、中国企業は日本を含む他の市場への進出を加速させる可能性があります。これは日本にとって一種の脅威となりますが、同時に中国市場が日本企業にとって重要性を増す可能性もあります。
日本企業は従来「チャイナリスク」を意識してきましたが、今後は「アメリカリスク」も考慮する必要があります。米中のサプライチェーンが分断される中で、日本企業は両方の市場でビジネスを維持するために、より複雑な戦略が求められるでしょう。
中国企業の競争力は急速に高まっていますが、そこには新たなビジネスチャンスも生まれる可能性があります。米中対立という新たな国際環境の中で、日本は中国とより真剣に向き合う必要があるでしょう。
Q: 米中の経済関係は今後どうなると予想されますか?
中国も米国も対話の必要性を認識しており、どこかの段階で対話が始まる可能性があります。両国経済への影響や世界経済への影響が大きすぎるため、完全な対立状態が長く続くことは考えにくいからです。
ただし、第1期トランプ政権時の状態(互いに約20%の関税を課している状態)まで戻ることは容易ではないでしょう。ある程度の対立関係は続きながらも、特定の分野では協力関係を模索する形になると予想されます。
最終的には米中首脳会談が開催され、そこで大枠の合意が形成された上で、事務方が詳細を詰めていくというプロセスになるでしょう。いずれにせよ、中国は米国市場への依存度を下げつつ、内需拡大と他の海外市場の開拓を進めていくという方向性は変わらないと考えられます。