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ニッポン半導体復活。TSMCに学ぶヒント
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2025年4月24日

トランプ関税で揺れる世界の半導体業界。ニッポン半導体が復活するカギは何か?ラピダスは成功できるのか?TSMCに学ぶヒントは何か?日本経済新聞小柳建彦・編集委員とジャーナリストの杉本りうこ氏に語ってもらった。 <ゲスト> 小柳建彦|日本経済新聞 編集委員 1988年日本経済新聞社入社。東京、シリコン...
ファブレス半導体の日本での可能性と課題 - トヨタがダークホース?
日本で新たなファブレス半導体メーカーが誕生する可能性はあるのか。専門家が語る半導体産業の最前線と、意外なダークホースの存在。TSMCの成功の裏にある秘密から、日本の半導体産業復活の道筋まで、業界の未来を考える。
トヨタが半導体業界のダークホースになる可能性がある?
Q: 日本国内に何らかのファブレスの半導体メーカーを作ることはできないのでしょうか?
個人的にダークホースはトヨタだと考えています。近年の半導体産業の傾向として、純粋な半導体企業ではなく、AppleやGoogle、Amazonといった本来は別のビジネスを持っている企業が、自社ビジネスに最適化した半導体を設計するという動きがあります。アメリカではインターネット産業で起こったこの現象が、日本の自動車産業でも起こる可能性があります。
トヨタが自動運転のための最高の半導体を自社で作りたいと考えるのは十分あり得ることです。トヨタ本体で行うか、デンソーで行うか、あるいはトヨタやデンソーが出資したスタートアップを立ち上げるという形も考えられます。日本の自動車産業が自前の自動運転AIチップを開発しないで、どうやって競争するのかという問題があります。
トヨタとNVIDIAの提携の意味は?
Q: 最近トヨタがNVIDIAと提携を発表しましたが、その狙いは何ですか?
現在、AIや自動運転のAIのニューラルネットワークを開発しようとした時に必要なチップは、NVIDIAのGPUです。それを確保するために提携という形にしたと考えられます。しかし将来的には内製化していく可能性も十分あります。そうしなければ、利益の相当部分をNVIDIAに取られることになります。
トヨタとデンソーには半導体のエンジニアやプロフェッショナルが多くいます。TSMCの熊本工場(ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング)にはソニーとデンソー、そして後付けでトヨタも出資しています。これはトヨタとデンソーが半導体に対して大きな関心を持っていることを示しています。

TSMCの成功要因は何か?
Q: TSMCがこれほど抜群の会社になった原動力は何ですか?
2010年以降のTSMCの目覚ましい成長は、基本的に2つの企業によって支えられています。一つはApple、もう一つはNVIDIAです。特にNVIDIAと当時のTSMCを結びつけたのは、NVIDIAのジェンスン・ファンからのクレーム(お手紙)でした。顧客の声をいかに聞くかということが、TSMCの数字に表れない強さです。
TSMCの強さは単に先端プロセス技術を持っているということだけではありません。顧客が使いやすい工場システムを構築し、遠隔地にいる顧客でも自分のチップがTSMC工場内でどのように流れているかをバーチャルに確認できる仕組みを持っています。これはある種のインターネットサービス企業的な側面を持っており、物づくりを超えて、半導体製造をサービス業に変えたという点が革新的でした。

半導体産業における人材の定着率の重要性
Q: 中国が最先端の半導体分野で追いつけない理由は何ですか?
労働力の流動性が高いことが大きな理由です。台湾の森さん(TSMCの創業者モリス・チャン氏)がテキサス・インスツルメンツ時代の1970年代にソニーの森田明雄氏から学んだことがあります。当時、モリス・チャン氏は森田氏に、日本にTIの工場を作る計画について相談した際、森田氏は「日本の工場を見たら、生産性の高さに驚くだろう」と言いました。
モリス・チャン氏が生産性の高さの理由を調査した結果、技術的な問題だけでなく、雇用環境の良さや女性が長く働ける環境などが、工業製品の生産性に関わることを理解しました。これは半導体産業の坂本氏(エルピーダメモリの元社長)も同様の主張をしており、中国のYMTC(長江存儲科技)という会社は、日本並みに社員旅行やパーティーを開催するなど、社員の帰属意識を高めて定着率を上げる経営を始めています。

アリゾナ工場の挑戦とTSMCの国際戦略
Q: TSMCが台湾以外の海外拠点を拡大する理由は何ですか?
TSMCにとって最も重要なのはマーケットの存在です。世界で大きな工場を建設して採算が取れる国は基本的にアメリカと中国の2つしかありません。中国は今後の可能性が制限されているため、純粋にマーケットがある場所に工場を建設するしかありません。
アリゾナ工場では、台湾から大量のエンジニアを投入して懸命に稼働させています。最近のTSMCの発表では、先端製品(2nmや1.6nm)の30%はアメリカで製造するとしています。これにより台湾では「産業の空洞化」が議論されています。日本のプラザ合意後の円高と半導体日米摩擦の時期のような局面に台湾も向かう可能性があります。
アリゾナ工場ではカルチャーギャップも課題になっています。台湾から来た人は「もっと働け」と言うのに対し、アメリカ人は「もう帰りたい」と考える傾向があります。しかし期限に間に合わせるためには徹夜してでも作業するという姿勢が、かつての日本のように重要です。

日本の半導体産業復活の可能性
Q: 日本で新たな半導体経営者が生まれるとしたら、どのような形が考えられますか?
日本にはエンジニアが多くいるので、スタートアップを起こしてほしいと思います。ソニーやデンソーなどの企業で働くサラリーマンではなく、自ら起業する半導体デザイナーが現れれば、そこには資金も集まるでしょう。ファブレスメーカーであれば、設備投資が必要ないため、立ち上げのハードルは比較的低いです。
今後の可能性としては、アメリカのスタートアップで働いた経験がある人や、Appleで働いた経験がある人、アメリカで起業した経験がある人が日本に戻ってきて会社を作るというパターンが考えられます。ノーベル賞を受賞した研究者がアメリカでの研究経験を持つのと同様に、海外での経験を積んだ人材が日本の半導体産業を復活させる可能性があります。
日本のラピダスは今年試作品を発表する予定で、これが最初の関門です。その次の関門は、試作品を産業製品として量産できるかどうかという点で、これは1〜2年後に訪れます。道のりは長く、現在はまだ「登山口」の段階にすぎません。