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トランプ乱世の半導体。ラピダスの成功確率は?
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2025年4月23日

トランプ関税で揺れる世界の半導体業界。ニッポン半導体が復活するカギは何か?ラピダスは成功できるのか?TSMCに学ぶヒントは何か?日本経済新聞小柳建彦・編集委員とジャーナリストの杉本りうこ氏に語ってもらった。 <ゲスト> 小柳建彦|日本経済新聞 編集委員 1988年日本経済新聞社入社。東京、シリコン...
「日本半導体に未来はあるのか?ラピダスの成功確率は10%」専門家が語る厳しい現実
半導体産業において、かつては世界を席巻した「日本」。しかし今や台湾のTSMCや韓国のサムスンに大きく水をあけられている。日本政府は千歳市のラピダスに1兆7000億円もの資金を投入し、半導体産業の復活を目指しているが、その成功確率はわずか「10%程度」という厳しい見方もある。専門家たちは何を懸念しているのか?


Q.トランプの半導体関税政策が日本の半導体産業に与える影響は?
トランプ次期政権が半導体に25%の関税を課す方向で動いている。基本的にアメリカでは最先端の半導体をほとんど製造していないため、これは大きな問題になる可能性がある。
現在、iPhoneなどのスマートフォンに使われる半導体のほとんどは台湾か韓国製だ。台湾ではTSMC、韓国ではサムスンが主な製造元となっている。これらの半導体は中国で最終製品に組み立てられた後、アメリカに輸入されている。
半導体製造装置に関税がかかると、アメリカ国内の半導体工場建設にも影響が出る。アメリカ政府は補助金を出してTSMCやインテルの工場建設を促進しているが、製造装置の約半分は必ずオランダや日本から輸入しなければならない。これらの装置は非常に高価であり、そこに25%の関税がかかると大きな負担になる。
Q. 最先端半導体工場がアメリカと日本に建設されている理由は?
コロナ後の半導体不足が大きなきっかけとなった。2021年頃には、エアコンや冷蔵庫といった家電製品ですら「在庫がない」という状況が発生し、「日本に半導体工場がないのか?」という議論が巻き起こった。
これを受け、国家安全保障の問題として半導体の国内供給体制の構築が求められるようになった。同時に米中対立の深刻化により、中国に半導体技術へのアクセスを制限する動きも加速。日本企業の中国市場依存度が高かったこともあり、国内の半導体産業を再建する必要性が高まった。
その結果、熊本にTSMCの工場が建設され、千歳にはラピダスの工場が建設されることになった。

Q. 日本はなぜ「半導体王国」から転落したのか?
かつて日本の半導体産業は世界をリードしていた。1990年代には、NECや東芝が世界市場を席巻していた。しかし、現在の半導体企業ランキングで日本企業の姿はほとんど見られない。
日本の半導体産業衰退は段階的に進んだ。まず、1980〜90年代に強みを持っていたDRAM(メモリー)分野で韓国勢の台頭により競争が激化し、利益が出にくくなった。日本企業は次々と撤退し、最終的に日立とNECがDRAM部門を分離してエルピーダメモリを設立した。
次に、メモリーを捨てた日本企業はシステムLSI(家電製品の頭脳となる半導体)に移行したが、これも利益が出ず、多くの企業がルネサスエレクトロニクスに統合された。しかしルネサスも長年赤字を出し続け、最先端製品はTSMCに委託するようになった。
結果として、日本では長年最先端の半導体工場が建設されなくなった。唯一の例外は、エルピーダが倒産した後、買収したアメリカのマイクロンが広島で先端製品を製造し続けたケースだけだ。
Q. エルピーダメモリの失敗から何を学ぶべきか?
エルピーダメモリは2012年2月に倒産したが、実はその直前にiPhone向けDRAMの大型受注を獲得していた。
当時Appleは、ライバルとなったサムスンからの部品調達を減らす方針を取っており、エルピーダにサムスンのシェアを奪う大きなチャンスが生まれていた。2012年夏から本格生産が始まる予定で、1000億〜2000億円の利益が見込まれていた。
しかし、政策投資銀行からの融資に期限があり、銀行団も政府も融資の借り換えに応じなかった。当時は「DRAMは付加価値が低い」という認識が強く、「人件費の高い日本では製造すべきでない」という世論があった。また、民主党政権下で大企業への公的資金投入に消極的な姿勢があったことも影響した。
結果として、エルピーダはわずか600億円でマイクロンに買収され、国民の税金から277億円、債権者から約1700億円の損失が生じた。皮肉なことに、エルピーダの倒産翌年には、マイクロンが「エルピーダ創業以来最高の利益」を記録した。

Q. ラピダスプロジェクトの成功確率はどれくらいか?
専門家によれば、ラピダスプロジェクトの成功確率は10%程度と非常に低い見方もある。成功確率が低い主な理由として、以下の点が挙げられる:
1. リードカスタマーの不在: TSMCのアリゾナ工場ではAppleがリードカスタマーとなり、半年間にわたり製品テストを重ねた。ラピダスには明確なリードカスタマーが見えない。
2. 順序の問題: 工場から建設するのではなく、まず「何を作るか」から考えるべきだという批判がある。坂本幸夫氏をはじめとする専門家は「製品設計→マーケティング→製造」の順序を重視すべきだと指摘する。
3. 財務基盤の弱さ: 資本金わずか75億円で、1兆7000億円以上のプロジェクトを進めている。半導体産業は「エクイティ(資本)で運営すべき」という教訓がある中、借入への依存度が高いビジネスモデルには懸念がある。

4. 国際情勢の変化: トランプ政権下での半導体関税政策が実施されれば、アメリカ市場向けのビジネスモデルが根本から揺らぐ可能性がある。
Q. ラピダスの成功確率を上げるにはどうすればいいか?
ラピダスの成功確率を上げるためには、経営面での改善が必要だ。具体的には:
1. 段階的アプローチ: 小規模から始めて大きく育てる戦略が必要。短期間で巨大な工場を建設し、多額の投資を行うのではなく、小規模なラインで実験を重ね、実績を積み上げていくべき。
2. マーケティング強化: 現在のラピダスは「マーケット」の部分が弱い。有力なリードカスタマーを獲得することが急務であり、ブロードコムなどの大手企業との提携が成功の鍵となる。
3. 財務基盤の強化: 半導体産業は景気変動の影響を大きく受けるため、厚い資本と少ない借入れの財務構造が求められる。TSMCは自己資本比率60%以上、自己資本利益率30%以上という驚異的な財務体質を誇る。
4. 日本国内の顧客開拓: トヨタなど自動車分野でのファブレス半導体メーカー育成も一案。自動運転など特定用途に最適化した半導体設計ができる企業が国内で育てば、ラピダスのようなファウンドリ(製造専門企業)のビジネスチャンスも広がる。
最終的には、日本が再び半導体産業で世界をリードするためには、製造(Make)より前に、創造(Create)とマーケティング(Market)の視点が不可欠だ。工場建設を急ぐ前に、何を作り、誰に売るかを明確にする経営戦略が求められている。