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「米国債売り」は今後も続くのか?
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2025年4月18日

トランプ関税発表後、急上昇した米国の長期金利。「米国債売り」は今後も続くのか?債券マーケットが安定するための条件は何か?BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈氏に聞いた。 <ゲスト> 中空麻奈|BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長 1991年 慶應義塾大学卒...
トランプ再選ショックがクレジットマーケットに与える影響
世界経済の行方を左右するアメリカの関税政策と金融市場への影響について、BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈氏に聞いた。米国債市場の動向からベットダン財務長官の重要性、そして今後の世界経済のシナリオまで幅広く解説する。

Q: トランプ再選ショックの米国債市場への影響はどうでしたか?
マーケットへの影響は非常に大きかった。米国債が大きく売られ、長期金利が上昇した。これまで絶対に揺るがないと思われていた米国債が揺さぶられたことは重要な意味を持つ。
実際、「トランプ大統領が90日間の追加関税停止を決めたのは、米国債の売られ方に対する警告をベットダン財務長官が伝えに行ったため」という話もある。米国債の反応がトランプ大統領の政策判断に影響を与えたとすれば、それだけ市場の反応が重要だということだ。
根本的には、これから先の米国に対する信用が徐々に失われていくという懸念が、米国債売りという形で表れている。
Q: クレジットリスクの今後の見通しをどう予測していますか?
将来予測は容易ではない。実際、多くの専門家が「最大60%の関税」と予想していたが、トランプ大統領は最大145%の関税に言及し、従来の予測を覆してしまった。
短期的には日米間の交渉の行方が重要だ。最初の協議が終わり、今月中に2回目の協議が予定されている。両国がどのような準備をしてくるかで状況は大きく変わる。
ただし、多くの金融機関や事業会社は「数ヶ月のうちに、以前よりは高い関税だが、過剰な関税ではないところで落ち着くだろう」と見ている。
Q: 市場の安定にとって重要な人物は誰ですか?
ベットダン財務長官が今後最も重要な人物だ。彼が財務長官の職にとどまるかどうかが、2025年の世界経済全体を大きく左右する。
ベットダン財務長官はトランプ政権において、一般の人々と同じような考え方を示せる数少ない人物だ。彼の発言は理解可能で常識的なものが多い。トランプ大統領の関税政策に対してどこまで影響力を持つかは未知数だが、現時点では最も重要なキーパーソンと言える。
さらに彼は日本に好意的な姿勢を持っているとも言われており、日米関係にとっても重要な存在だ。
Q: 関税交渉はどういう着地点になると予想されますか?
一般的なシナリオでは、その中間を取ったようなところになるだろう。製品によっては関税がゼロになるものもあれば、24%のままのものもあるかもしれない。しかし全体的な実効関税率としては10%程度に落ち着くという見方が多い。
交渉の進め方としては、名目上の関税率より、個々の製品に対してどの関税がかかるかを根気よく交渉し、例外条件を多く付けてもらうことが重要だ。例えば「部品の一部をアメリカで製造しているなら関税対象から外す」といった条件を設けることで、自動車に対する実質的な関税率が2%程度になるといった結果を目指すべきだ。
Q: 欧州など他国との関税交渉はどうなりそうですか?
欧州に関しては、トランプ大統領は元々欧州や中国の関税に不満を持っていた。しかし欧州も賢く対応し始めている。マクロン大統領は防衛費を増やすと言及するなど、交渉の糸口を探っている。
欧州自身も当初は報復関税をかけると言っていたが、トランプ大統領が90日間の延期を発表した後は様子見の姿勢を取っている。欧州としても高い関税は受け入れられず、イノベーションや生成AIに力を入れる方針を掲げている以上、関税競争には乗りたくないはずだ。
各国がそれぞれ交渉しながらも、アメリカを除く国々で連携して対抗する可能性もある。特に環境問題などの分野では、アメリカを除く国々で連携して、CO2排出量に対するペナルティを設けるなどの対抗策も考えられる。

Q: 関税政策が世界経済に与える影響はどうなりますか?
関税をかけると、基本的に二つのことが確実に起きる。関税をかけ合う国同士のGDPは下がり、物価は上昇する(インフレになる)。
しかし、それだけでは終わらない。例えば、A国がB国に関税をかけると、A国はB国から輸入できなくなるため、C国から買うようになる。するとB国の売上は減るが、C国の売上は増え、C国のGDPは上昇する可能性がある。
サプライチェーンの複雑さも考慮する必要がある。他国に調達先を変えたつもりでも、実は元の国の製品を間接的に購入していることもある。こうした複雑な要因が絡み合うため、実際の影響は蓋を開けてみないとわからない部分が大きい。
最悪のシナリオでは、世界中が不景気になり、同時にインフレも進行するという状況も否定できない。
Q: 株式市場と債券市場の関係はどう変化しますか?
これまでは「株が悪くなったら債券に逃げよう」という投資の常識があった。米国債は安定していると思われていたからだ。しかし今回、米国債も安定していないことがわかってしまった。
現在の金融市場はほとんどが動きを停止している状態だ。1日で状況が変わりかねない不確実性の中で、M&A取引なども停滞している。投資家は「今ではない」と判断して様子見の姿勢を取っている。
不透明感が払拭されれば、資金はどこかに流れていくはずだ。欧州などの債券市場に一部資金がシフトする動きも見られるが、全体としては方向性が定まるまで大きな動きは見られないだろう。
Q: トランプ政権の規制緩和や減税政策はクレジットリスクにどう影響しますか?
基本的にはプラスの要因となる。現在は関税政策の不透明さからクレジットスプレッドが拡大している。関税政策の不透明感が解消されれば、再びスプレッドは縮小に向かうだろう。
さらに規制緩和や減税の話が出てくれば、株価にもポジティブな影響を与える。これまでは関税政策や移民政策など、ネガティブな話題ばかりが出ていたが、これからはポジティブな政策が出てくる可能性もある。
ただし減税については財政赤字を拡大させるリスクもある。トランプ政権は4.5兆ドル分の減税を計画しているが、1.5兆ドル分の財源しか確保できていない。残りの3兆ドルの財源をどうするかという問題がある。米国債の発行増加につながれば、新たな不安要因となる可能性もある。
Q: 日本のクレジットリスクはどうなっていますか?
最近、日本国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドが拡大している。これは日本の国としての信用に懸念が生じている可能性を示している。
日本のCDSは取引量が少なく異常値が出やすいという反論もあるが、これまで安定していたものが急に拡大したことには何らかのメッセージがあるはずだ。
例えば、アメリカからの要求を受け入れて日本が財政支出を増やすのではないかという懸念や、最近議論されている借金を増やすような政策への懸念が反映されているかもしれない。
「玉木リスク」とも言われる少数与党による財政規律の低下への懸念もある。マーケットはこうした動きに敏感に反応しており、政策決定者はマーケットの声に真摯に耳を傾ける必要がある。
Q: 現在の不透明な状況でどう投資すべきですか?
現在は過度にネガティブなムードになっているが、冷静に状況を見極める必要がある。一度下がった市場が再び上昇するタイミングがいつ、何によってもたらされるかを見極めることが重要だ。
今後数か月の間に関税政策がある程度落ち着けば、市場も安定に向かうだろう。アメリカ側は7月4日の独立記念日までに一定の決着をつけたいと考えているようだ。
それまでの間は大きなリスクを取らず、状況を見守るというのも一つの賢明な選択と言える。過度のボラティリティが続く可能性があり、日々のニュースに一喜一憂せず、中長期的な視点を持つことが大切だ。