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プラザ合意2.0が非現実的な6つの理由
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2025年4月15日

トランプ関税後に米国からの資金流出が加速し、長期金利が急騰している。今後、「プラザ合意2.0」によるドル安政策実施は本当にありうるのか?ドル売り・ゴールド買いはどこまで進むのか?為替ストラテジストの佐々木融氏と貴金属スペシャリストの池水雄一氏に展望してもらった。 <ゲスト> 佐々木融|ふくおかフ...
「プラザ合意2.0は起きるのか」為替とゴールド専門家が激論
トランプの総合関税政策により、世界の金融市場に動揺が広がっている。アメリカの長期金利が上昇する一方でドルが売られるという「異常事態」が発生。これはアメリカからの資金流出を意味するのか?


Q: 激動の1週間で市場に何が起きているのか?
最大の変化はドル安の進行だ。アメリカの債券が売られ、ドルも売られているが、長期金利は上昇している。通常、長期金利上昇はドル高要因だが、逆行している点が異常だ。
この現象は、米国債を売却してアメリカからお金を引き出している投資家がいることを示唆している。中国による売却という見方もあるが、ヨーロッパの年金基金や中東のファンドなどが「アメリカにお金を置いておけない」と判断し、米国債を売却してドルを引き上げている可能性がある。
これは単なる円高ではなく「ドル安」主導の動きだ。ユーロやスイスフランに対してもドルが下落しており、特にドル/スイスフランは2011年以来のドル安水準となっている。投資家がアメリカから資金を引き出し、ヨーロッパへシフトさせている兆候が見られる。

Q: 長期金利上昇が続くとどんな影響があるのか?
景気に対して明らかにネガティブな影響が出る。インフレ率が高いまま金利が上昇する状況は、スタグフレーションを引き起こす恐れがある。
イエレン財務長官は「強いドル政策を維持する」「ドルは基軸通貨であるべき」と繰り返し主張し、長期金利を下げたいと表明してきた。しかし現実には真逆の方向に進んでいる。
Q: 「プラザ合意2.0」は実現するのか?
プラザ合意2.0と呼ばれる構想は、円高・ドル安に誘導する国際協調の枠組みだが、実現可能性は極めて低い。
まず、トランプ政権の経済顧問スティーブン・ミランの論文には関税引き上げなどの提案はあるものの、同時に重要なリスク警告も記載されている。その警告とは「報復関税は避けるべき」「インフレ圧力が高い時に関税を引き上げるべきでない」「アメリカからの資金流出が起きる恐れ」という三点だ。
ミランは「インフレが落ち着いた段階で、段階的に政策を実施すべき」と提言していたが、トランプは一度にすべてを実行してしまった。結果として警告されていたリスクが全て現実化している。
プラザ合意2.0が非現実的な理由はさらにある:
1. 為替市場が1980年代と比較して約14倍に拡大し、政府のコントロールが困難になっている
2. 国際協調が必要だが、現在の地政学的状況では協調は期待できない
3. G5だけでなく中国の参加が不可欠だが、米中対立下では協力は想定できない
4. ミランの論文では「日本は協調会議に応じるかもしれないが、経済規模が小さすぎて意味がない」と指摘されている
5. 日本の外貨準備には限りがあり、大量のドル売りは不可能
また、元のプラザ合意も必ずしも成功した政策ではなかった。意図していた10〜12%のドル安が予想を超えて30%もの下落となり、1年半後にはドル買い介入のルーブル合意が必要になった。貿易赤字は一時的に減少したが、またすぐに増加し、インフレ圧力も高まった。

Q: 為替市場の将来展望をどう見ているか?
これまで「ドルも強く、円も弱い」という前提でドル円相場が上昇すると予想されていたが、ドルが弱くなることで予想は変わらざるを得ない。ただし、日本の構造的な問題を考えると「ドル安は進むが、円安も続く」という複雑な状況も想定される。
日本の人口減少などのファンダメンタルズを考えると、円が長期的に強くなるのは非現実的だ。世界が混乱すればするほど、日本は弱い立場になる可能性が高い。
例えばリスクシナリオとして、日本の金融機関は現在多くのドル建て貸出を行っているが、市場混乱時にドル調達にプレミアムが付くと、ドル返済のためにドル買いが発生し、円安圧力につながる可能性がある。こうした「どちらがより弱いか」という通貨間の競争になる可能性も否定できない。
Q: トランプ政権は市場の混乱をどう受け止めているのか?
総合関税について90日の延期を突然発表したことから、金融市場の混乱に危機感を持ったと考えられる。アメリカはドルの暴落は望んでいないはずだ。
ただし、トランプ政権が目指しているのは「ドルは強いまま、他国通貨も強くする」という矛盾した状態だ。例えば日本に対しては対日貿易赤字を減らしたいが、為替レートではなく貿易収支の改善が真の目的である。
しかし突然のドル安に直面し、アメリカ側も誤算を感じている可能性がある。トランプ政権がマーケットメカニズムを軽視し、自分で操作できると考えているとすれば、それは危険な思い込みだ。
Q: 市場の信頼回復は可能か?
トランプ政権が方針を転換するには、バーターのような形ではなく、明確に誤りを認めて一から政策をやり直す必要がある。ただし方針転換自体が新たな不確実性を生み出すジレンマもある。
アメリカと中国の関係では、中国の輸入に占めるアメリカの割合は約6%だが、アメリカの輸入に占める中国の割合は約14%と大きい。そのため報復関税の応酬はアメリカにとって不利な戦いになる可能性が高く、経済的合理性に欠ける。
安全保障上の理由から中国依存度を下げる意図があるかもしれないが、その場合も同盟国に安全保障コストの負担を求めるという側面がある。国債を100年債や永久債に転換してリスク負担を強いる発想も、投資家の信頼を損なうものだ。
トランプ政権には既に信頼の傷が付いており、本格的な方針転換が必要だが、不確実性の高まりはマーケットにとって大きな負担となっている。