PIVOT TALK BUSINESS
世界を覆う“武器経済"の正体
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2025年4月11日

ウクライナ戦争以降、世界中で高まる安全保障リスク。 日本はロシア・中国・北朝鮮とどのように向き合うべきか?防衛研究所主任研究官・小野圭司氏は「防衛問題について知り、有権者一人ひとりが判断することが重要」と語る。今知っておくべき国防の基礎知識について聞いた。 <ゲスト> 小野圭司|防衛研究所 理論研...
「防衛産業の知性覚」は必須の教養?専門家が解説する世界情勢と日本の立ち位置
「日本はこのままで大丈夫なの?」—多くの人が漠然とした不安を抱える中、防衛研究所主任研究官の小野圭司氏は「まず考えることが大切」と語る。軍事や安全保障に関する話題は私たちの生活から遠いように感じるが、実はスマートフォンやPCと同じく、急速に変化する技術革新の世界だ。

世界の軍事費、アメリカは圧倒的な39%を占める
Q: 世界の軍事力を理解するには、どこから勉強すればいいのでしょうか?
世界地図的な把握が必要だ。アメリカが世界で最も強大な軍隊を持ち、中国が続き、ヨーロッパ諸国がそれに続くというイメージは多くの人が持っている。しかし、それぞれがどのくらいの軍事力を持っているのか、数値で理解することも重要だ。
軍事費で見ると、アメリカは世界全体の約39%を占めており、これは圧倒的な規模だ。2位の中国は14-15%程度だ。ただし、アメリカはグローバルに軍隊を展開しているのに対し、中国は自国周辺に集中しているため、密度としては中国もかなり高い。
上位5カ国(アメリカ、中国、ロシア、インド、サウジアラビア)で世界の軍事費の6割以上を占めている。ただし、金額だけでは軍事力を正確に比較できない。物価水準が低い国では、同じ金額でも人件費が安いため、装備の数や隊員の数が多くなる場合がある。

日本の防衛費はヨーロッパ主要国と同レベル、しかし環境は大きく異なる
Q: 軍事費から見た日本の立ち位置はどうなのでしょうか?
日本の防衛費は西ヨーロッパの主要国(ドイツ、フランス、イタリア、イギリス)と同レベルだ。しかし、日本の地政学的環境は西ヨーロッパとは大きく異なる。
西ヨーロッパとロシアの間には東ヨーロッパ諸国という緩衝地帯があるが、日本は宗谷海峡を隔てて対岸がすでにロシア領土になっている。さらに中国からの圧力や北朝鮮のミサイル発射など、周辺環境は緊張が高まっている。同じ規模の防衛費でも、置かれた環境は西ヨーロッパとは異なるのだ。
これまで日本はアメリカとの同盟関係によって、国力に見合った努力で抑止力を維持できると考えられてきた。しかし最近は風向きが変わりつつある。アメリカ世論にも「同盟国への依存を減らしてほしい」という考えが広がりつつあり、日本も独自に防衛力を維持していく必要性が高まっている。

ウクライナ戦争が変えた世界の軍事産業の姿
Q: ウクライナ戦争は世界の軍事バランスをどう変えたのでしょうか?
ウクライナ戦争は武器の需要と供給のバランスを大きく崩した。ロシア側は武器の大量生産を24時間体制で行っているが、それでも足りないため北朝鮮から弾薬を購入したり、以前に輸出した武器を買い戻したりしている。部品不足も深刻で、輸入した電化製品から半導体を取り出して武器の修理に使うこともある。
西側諸国もウクライナへの武器供与で在庫が不足している。アメリカは自国の防衛のための在庫を払い出し、韓国に砲弾の供給を要請している。日本もミサイルを供給した。
各国は防衛産業の強化に取り組んでいるが、日本では生産能力の拡大に課題がある。防衛装備品の製造には一定の設備投資が必要だが、注文数が少ないと工場の稼働率が上がらない。特に人材の確保が困難になっており、各企業は苦労している。

進化する戦争の形態—ドローンからサイバー攻撃まで
Q: 防衛費が増えるというと武器の増強をイメージしますが、実際はどうなのでしょうか?
現代の防衛力強化は単に従来型の武器の数を増やすことだけではない。ウクライナ戦争から新しく得られた知見を基に、装備の見直しが進んでいる。例えば、ドローンの有効性が明らかになり、高価な専用機だけでなく、市販の小型ドローンも戦場で活躍していることから、その活用方法が研究されている。
また、サイバーセキュリティの重要性も高まっている。サイバー攻撃からの防御だけでなく、能動的なサイバー防衛の研究も本格化している。
日本の防衛産業では、三菱重工や川崎重工などの重工メーカーが伝統的に大きな存在感を示してきたが、最近では富士通や日本電気といったソフトウェア開発会社の受注も増えている。これは装備品がますますコンピュータ化していることの表れだ。
民間企業が国家の命運を左右する時代
Q: 防衛産業に注目すべき理由は何でしょうか?
防衛産業は私たちの身近な企業が関わっていることが多い。エアコンやバイクなど民生品を作っている企業が、安全保障上必要な武器も製造している。また、その裾野は広がりつつあり、将来的にはスタートアップ企業も重要な役割を果たす可能性がある。
イーロン・マスクが立ち上げたスターリンクは、ウクライナの通信を支える重要なインフラとなっている。これは民間企業が国家の命運を左右する時代になったことを示している。かつては石油メジャーが国家の命運を握ると言われたが、今ではスタートアップから始まった企業が軍事面でも主権国家に影響を与えている。
正解はない、だからこそ考え続けることが重要
Q: 今後の世界情勢をどう見るべきでしょうか?
防衛や安全保障の問題に正解はない。今正しいと思われることも、2〜3年後には正解でなくなる可能性がある。だからこそ、無関心ではなく常に考え続けることが重要だ。
私たちは税金を払い、投票を通じて政治家を選び、防衛力の構築に参加している。だからこそ、主体的に考え、知識を身につける必要がある。世界は同時多発的に防衛産業に対する危機感が高まっており、日本政府だけでなく、EU、アメリカも防衛産業に関する戦略文書を出している。
技術革新のスピードは速く、例えば6000機のドローンを1箇所で制御し、それぞれが爆弾を持って攻撃してくるような事態も想定される。こうした新たな脅威にどう対応するか、私たち一人ひとりが考える必要がある。