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農協の闇:過大なノルマが生む悲劇
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2025年4月2日

JAで「神様」と呼ばれた男の溺死。対馬JAで起きた悲劇を描いたノンフィクション『対馬の海に沈む』が話題だ。取材を通して見えてきた「農協の闇」とは何か?日本の農業に今、何が起きているのか?作者の窪田新之助氏に聞いた。 <ゲスト> 窪田新之助|ノンフィクション作家 1978年福岡生まれ。明治大学文学部...
「農協ってパチンコと風俗以外全て扱う」という驚きの事実 - 『対馬の海に沈む』作者が語る農協の闇
農協は日本の地域社会に深く根付いた巨大組織だが、その実態は意外と知られていない。ノンフィクション作家・窪田新之助氏の著書『対馬の海に沈む』は、農協内部の闇と不祥事を描き出し、大きな反響を呼んでいる。農協とはそもそも何なのか?なぜ過大なノルマが課されるのか?組織の歪みはどこから生まれるのか?窪田氏に農協の実態について聞いた。

「農協は最初から総合商社のような形でスタートしていた」
Q: 農協とはどのような組織なのでしょうか?
農協は1947年に誕生しましたが、その時から単なる農家の組織ではなく、保険や金融など様々な事業を行える組織として設立されています。一般的に農協というと農家のための組織と思われがちですが、最初から総合商社のような形でスタートしていました。
Q: 農協の組合員数はどれくらいなのですか?
農協の組合員数は1000万人以上で、日本の人口の約1/10を占めています。意外かもしれませんが、組合員の6割以上は農家ではない一般の方々です。残りは専業農家や農業から離れた方々が組合員として農協のサービスを利用しています。

Q: 非農家でも農協に入れるのですか?
はい、どなたでも入れます。最低1000円程度の出資金を払えば組合員になれます。地域に住んでいる人が広く利用できる組織なのです。
「パチンコと風俗以外全て扱う」巨大組織の実態
Q: 農協はどのようなサービスを提供しているのですか?
農協は実に幅広いサービスを提供しています。農薬販売などの経済事業、保険の共済事業、金融事業だけでなく、ガソリンスタンド、農産物直売所、観光農園など、「パチンコと風俗以外全て扱う」と言われるほど多様な事業を展開しています。

Q: なぜそんなに多くのサービスを提供しているのですか?
農協は日本の隅々まで存在しており、特に地方では不可欠なインフラとなっています。農業がない地域はないため、あらゆる場所に農協があり、地域社会を支える重要な役割を担っています。
Q: 農協の規模はどれくらい大きいのですか?
保険の契約高や総資産で見ると、日本生命や第一生命といった大手企業と比べても遜色ないほどの規模を持っています。金融機関としての農協は非常に大きな存在です。
Q: なぜ農協はそれほど多くの顧客を集められるのですか?
農協の大きな強みは、顧客の口座情報が全て見えることです。どの顧客がどれくらいの金額を持っているかが把握できるため、営業がしやすいという点が他の保険会社や金融機関と大きく異なります。しかも個人だけでなく家族全体の情報も把握できるのです。

Q: それは個人情報保護の観点から問題ないのですか?
かつての郵便局にも似た構造がありましたが、郵政は民営化されて分社化されたため現在はそうした情報共有は制限されています。しかし農協では今でも「協同利用」という形で、目的があれば顧客の口座情報を見ることができる仕組みになっています。
Q: 農協の職員には厳しいノルマがあると聞きますが、本当ですか?
はい、農協には特に保険や金融商品に関して非常に厳しいノルマがあります。本に登場する西山さんは、ノルマを達成するために「自爆営業」と呼ばれる方法を取っていました。自爆営業とは、職員が自分で商品に加入し、掛け金を自ら払うという行為です。
Q: なぜ農協は営利企業でもないのに過大なノルマを課すのですか?
これは農協の経営構造に問題があります。農協の本来の事業である農業関連の「経済事業」がほとんどの農協で赤字になっているのです。その穴埋めをしているのが、銀行業務である「信用事業」と保険事業である「共済事業」の黒字です。組織を維持するためには、これらの事業で収益を上げる必要があるため、過大なノルマが課されるのです。
Q: ノルマがきついのに、なぜ職員は農協を辞めないのですか?
地方では、生まれた土地で仕事をするとなると選択肢が限られています。役場に勤めるか農協に勤めるかという選択肢の中で、給料の良さなどから農協が選ばれることが多いのです。また、先輩や地域の人間関係の中で農協に入社するケースも多く、簡単に辞められない構造になっています。これは都会に住む人には理解しにくい「村社会」的な側面があります。
Q: 農協では不祥事が多いと聞きますが、なぜですか?
農協は外部からの目が入りにくい構造になっています。安倍政権時代に改革が試みられましたが、監査体制についても「みのり監査法人」という農協系の組織が担当しており、実質的にはあまり変わっていません。このように内部で完結する構造が不祥事を生み出しやすく、また発覚しても握りつぶされやすい環境を作っています。
Q: 農協改革はなぜ難しいのですか?
農協、農林族議員、農水省という「農政トライアングル」と呼ばれる構造があり、この三者が農業政策を決定してきました。安倍政権は官邸主導の政治スタイルで農協改革に踏み込みましたが、このトライアングルは強固で、現在も大きな影響力を持っています。このトライアングルの各主体には改革のインセンティブがないため、変化が起きにくいのです。
Q: 農協の問題について、メディアではあまり取り上げられないのはなぜですか?
農協は1000万人以上の組合員を抱える巨大組織であり、政治的にも大きな影響力を持っています。また、多くの人にとって農協の問題は身近でなく、関心が低いという面もあります。そのため、メディアでも農協の構造的問題についてはあまり詳しく報じられないのが現状です。
Q: 日本の米価が高く維持されているのはなぜですか?
農政トライアングルの構造が米価を高く維持する方向に働いています。高い米価は農家の利益を上げ、政治家の票につながるという構造があります。このトライアングルが続く限り、米価を高く維持して票を獲得するインセンティブがあるため、改革が進みにくいのです。
Q: 農協の今後の展望についてどう考えますか?
農協の問題は非常に複雑で、簡単な答えはありません。一方で、日本の農業や地方の課題とも密接に関わっている問題です。農業の担い手不足や地方の人口減少など、様々な課題が絡み合う中で、農協のあり方も再考されるべき時期に来ているのかもしれません。
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『対馬の海に沈む』は、対馬のJAで起きた不祥事を通して農協の構造的問題を描いたノンフィクション作品です。一人の優秀な営業マンの自殺という出来事から始まり、農協の暗部に切り込んでいく内容で、ノンフィクション賞も受賞しています。作者の窪田氏は、前作『農協の暗闇』でも農協の問題を取り上げており、1年半にわたる取材を経てこの作品を完成させました。