政策超分析
デフレ化する中国経済、トランプ関税が追い打ち/柯隆 峯村健司
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2025年3月27日

杉村太蔵氏をレギュラーコメンテーターに迎え、「政策」をどこよりも深く徹底分析する番組。今回のテーマは「トランプ2.0と中国」。前編では中国経済に焦点を当てる。 <目次> 00:00 ダイジェスト 00:49 本編スタート 03:34 トランプvs習近平 米中関係の行方は 10:09 トランプとバ...
「ディールの王」トランプと「経済音痴」習近平 - 米中関係の真実
今、世界で最も注目を集めるテーマ「トランプ2.0と中国」。この国際関係の行方を、中国・アメリカのトップエキスパートである東京財団主席研究員の柯隆氏とキャノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司氏が解説。表面的な対立の裏にある驚きの真実とは?


Q: 今のトランプ政権と中国の関係はどうなっていくのでしょうか?
トランプは中国と真に対立したいわけではなく、最終的には「ディール(取引)」を目指しています。トランプ自身が「ディールの王」と自称するように、最大の狙いは中国との交渉で成果を上げることです。一見、強硬派を政権に配置していますが、これは「アメとムチ」戦略の一環です。
就任演説で中国批判をほとんど行わなかったのも意図的なシグナルで、水面下での外交を進めている証拠です。実際、トランプは就任前から習近平との首脳会談を急いでおり、積極的に電話外交を展開しています。
ただし両国関係は複雑です。個人と個人のレベルでは中国人はアメリカに好意的で、共産党幹部の子どもたちも留学先や資産の保管先としてアメリカを選んでいます。柯隆氏によれば「中国人はアメリカを『美国(美しい国)』と呼び、決して嫌っていない」のです。
Q: バイデン政権とトランプ政権の対中政策の違いは何ですか?
意外なことに、バイデン政権の方が中国にとって厳しい状況でした。バイデンは同盟国と団結して中国に圧力をかける「狼の群れ」戦略を取り、QUAD(日米豪印)やAUKUS(豪英米)など多国間の枠組みで中国を包囲しました。
これに対してトランプは一国主義的で、同盟国にも関税をかけるため「狼同士が噛み合っている」状態になっています。中国にとって「友達がいない」という弱点が際立たないという利点があります。
峯村氏によると「習近平はバイデンに裏切られたと感じている」といいます。かつて副大統領時代に親交があった二人でしたが、バイデンは大統領就任後、中国に対する認識を大きく変えたのです。
Q: 中国経済の現状はどうなっていますか?
中国経済は深刻な状況にあります。政府発表の「5%前後」の成長目標は信頼性が低く、実際は1〜2%程度との見方があります。中国経済はデフレに陥っており、これは14億人の人口を持つ大国としては異例の事態です。
経済状況を把握する指標として峯村氏が挙げるのはマカオのカジノ状況です。「余剰資金で遊ぶ中国人が減少している」ことが経済の実態を示しています。柯隆氏は「雇用の悪化と消費の落ち込み」を重視し、デフレ状態を指摘しています。
この経済低迷の主因は外部要因ではなく国内政策の失敗にあります。特にコロナ禍の「ゼロコロナ政策」が経済に甚大な被害をもたらしました。柯隆氏によれば「3年間で400万社の中小企業が倒産し、300万の飲食店が閉店した」のです。

Q: 中国経済の問題はなぜ起きているのですか?
峯村氏は「習近平政権の経済音痴」が根本原因だと断言します。市場経済から社会主義への回帰を進め、経済成長よりもイデオロギーを優先しているのです。
さらに問題を複雑にしているのは、政府が設定する高い経済目標です。これが需要と供給のバランスを無視した過剰生産を生み、国内で売れない製品を海外に安く輸出する構造を作っています。
加えて、中国は新型コロナ対策で日本のような中小企業向け信用保証制度や個人への給付金制度を整備しませんでした。その結果、雇用を支える中小企業が大量に倒産し、経済の回復力が失われたのです。

Q: トランプの関税政策は中国経済にどう影響していますか?
現時点での影響は限定的です。20%の追加関税はまだ開始されたばかりですが、すでに企業のサプライチェーン分散という動きが出ています。外国企業、特に台湾企業などは迅速に中国からベトナムやインドへ生産拠点を移しています。
日本企業は意思決定が遅いものの、同様の動きが予想されます。これは中国にとって税収や雇用の減少だけでなく、技術移転の機会喪失という大きな痛手になります。特に工作機械などのハイテク分野では国産化率が極めて低く(6%程度)、日本の技術が不可欠だからです。
柯隆氏は「中国がハイテク製品の製造に苦戦している」ことを強調し、「ボールペンの芯すら国産化できていない」という例を挙げました。この技術的脆弱性が、中国が日本との経済協力を強く望む理由になっています。
Q: 台湾有事は起こる可能性がありますか?
専門家の見解は分かれています。柯隆氏は「中国は準備ができたら行動を起こす」と警告し、まず封鎖作戦から始めるだろうと予測します。中国は米軍の介入があるかどうかだけを注視しており、アメリカが介入しないと判断すれば行動に出る可能性があるとしています。
一方、峯村氏は現時点での可能性は低いと見ています。その理由として「人民解放軍の指揮系統の混乱」を挙げ、立て続けに3人の国防部長が更迭されていることから、軍のコントロールが難しい状況にあると指摘しています。
また、中国経済の低迷も軍事行動を制約する要因になるとの見方もあります。いずれにせよ、台湾海峡の緊張は今後も継続し、アメリカの対応次第で情勢が変化する可能性があります。
Q: 今後の米中関係の行方は?
短期的には関係改善の可能性があります。トランプは戦争回避を重視し、中国との「ディール」を成立させることで外交的成果を上げたいと考えています。中国側も経済悪化から抜け出すために関係改善の余地を探っているでしょう。
しかし構造的な対立は続きます。中国は「100年に1度の国際秩序の大変革期」と考え、アメリカ主導の国際秩序に挑戦し続けるでしょう。アメリカも半導体など重要技術分野での規制は維持すると思われます。
最終的に、この二大国の関係は個々の指導者の性格や思惑に大きく左右される状況が続きそうです。世界は、「ディールの王」と「経済音痴」と評される二人の指導者の駆け引きを見守ることになります。