PIVOT TALK BUSINESS
株価下落時の心得【篠田尚子×木原直哉】
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2025年3月29日

トランプ関税により乱高下する株式マーケット市場。そんな状況下における心得についてファンドアナリストの篠田尚子氏がプロポーカープレーヤー兼投資家の木原直哉氏に聞いた。 <ゲスト> 木原直哉|プロポーカープレーヤー 1981年生まれ。 東京大学卒業後、プロのポーカープレイヤーとなり、2012年「第42...
投資家も見習うべき?プロポーカープレーヤーの確率思考
普段はマーケット関係者を招いて話を展開するこの番組。しかし今回は少し趣向を変えて、プロポーカープレーヤー兼投資家の木原直哉氏をゲストに迎えた。木原氏はプロとして17年のキャリアを持ち、近年は株式投資にも力を入れているという。今回は投資とポーカーの共通点や、相場が揺れ動く現在の市場をどう見ているのかについて語った。

「バリュートラップに引っかかるべき」という逆説的アドバイス
Q: 最近の市場の変動についてどう感じていますか?
今回の市場の揺れ動きをそれほど気にしていない。S&P500のような指数が数ヶ月で約8%下落したことについて「そのくらいはよくある」と感じている。40%上がることを期待するなら、40%下がることも想定しなければならない。投資で利益を得ようとするなら、それと同等のリスクがあるのは当然だ。
Q: 初めて株式投資を始めた人が今の状況をどう捉えるべきでしょうか?
新NISAを利用して投資を始めた人は「聞いていたのと違う」と感じているかもしれない。特に2021年から2024年までは円安効果もあり、日本の投資家にとって異常な好環境だった。現在の下落はこの「ボーナスステージ」が終わりつつあることを示している。本質的には、世界全体の富の何パーセントを持っているかという視点で考えるべきだ。市場全体が20%下がり、自分の資産も20%下がったなら、相対的な保有割合は変わっていないので実は損していない。
Q: 投資においてどのような考え方が重要だと思いますか?
投資において基準とすべきは円ではなく「オールカントリー」や「ゴールド」のような普遍的な価値だ。円の価値を基準に考えるから市場の上下に一喜一憂してしまう。株が上がると通貨の価値は下がり、株が下がると通貨の価値は上がる。この関係性を理解することが重要だ。また、価格を追いかけるのではなく、世界全体の富の中でどれだけの割合を持っているかという視点で見ると、相場の変動に振り回されにくくなる。

Q: なぜ「バリュートラップに引っかかるべき」と言うのでしょうか?
バリュートラップという言葉はよく使われるが、実はそれほど恐れる必要はない。バリュートラップに引っかかって銘柄を保有しても、損失が出るわけではなく、相対的にリターンが少ないだけだ。むしろ、バリュートラップから教訓を得ることができるのは貴重な経験だ。お金を減らさずに教訓を得られるからこそ「みんなもっとバリュートラップに引っかかるべき」と考えている。対照的に、高値掴みで損失を出す方がはるかに痛い。

「日本株の小型株」に着目する理由
Q: どのような投資スタイルを実践していますか?
基本的に時価総額が小さい銘柄が中心で、特に人気のない日本株を狙っている。PBRを基準にスクリーニングし、安い銘柄を中心に調査して、今は人気がないが将来的に良くなりそうな会社を探している。投資を始めた当初はバリュートラップに引っかかることもあったが、その経験から銘柄を見る目を養ってきた。現在は幅広く約200銘柄を軽く追いながら、約20銘柄を深く調査し、そのうち4〜5銘柄には特に注力している。
Q: なぜ日本株、特に小型株に集中しているのですか?
情報の非対称性を活かすためだ。米国株は世界中の投資家が参加する市場で、言語の壁もある。日本語話者として日本に住んでいれば、日本企業の情報収集は比較的容易だし、小型株は機関投資家のカバレッジも薄い。時価総額が1000億円未満、さらには100億円程度の小型株に投資することで、市場の盲点を突けると考えている。また、PBRで並べた時に、こうした小型株は相対的に安いことが多い。

Q: 投資信託ではなく個別株を選ぶ理由は?
投資信託、特にインデックスファンドは確かに簡単で便利だが、個別銘柄を調査する過程自体が面白い。ポーカーと同様、投資も「ゲーム」の一種だと捉えている。特に投資を始めて4年と比較的新しいため、日々知識が増えて上達していくプロセスが楽しい。1年前より今の方が確実に強くなったと感じられるし、今より1年後の方がさらに強くなっているだろうという実感がある。
ポーカーの世界から見える経済動向
Q: ポーカーの世界と投資市場には関連性がありますか?
非常に関連性がある。特にポーカーの世界大会「WSOP」の参加状況は経済状況を反映している傾向がある。2023年は参加者が多く景気が良いと感じたが、2024年は相対的に渋い印象だった。特に注目すべきは、参加費が1万ドル(約150万円)のチャンピオンシップクラスの大会だ。このクラスにはプロと富裕層しか参加できないため、富裕層の景況感が直接反映される。
Q: 具体的にはどのような変化が見られるのですか?
高額な参加費の大会への参加状況は、富裕層の景況感を敏感に反映する。アメリカではインフレが進行しているため、通貨価値の低下により相対的に参加しやすくなるはずだが、実際には参加者数の増加が見られない。これは経済状況の悪化を示唆している。また、プロプレイヤーの参加状況も重要な指標だ。プロが高額大会に参加できなくなるということは、普段のゲームでの稼ぎが減っている、つまり富裕層のプレイが減少していることを意味する。
Q: 暗号資産(仮想通貨)はポーカー界でどのように使われていますか?
ポーカー界では8〜9年前から一般的に使われている。プレイヤー間の送金や決済に利用され、従来の通貨と同様に価値交換の手段として機能している。2018年にビットコイン価格が高騰した際には、それまで低額のゲームに参加していた人が突然高額ゲームに参加するようになるなど、プレイヤーの行動にも直接影響した。ビットコインで考えると、価格が4倍になっても同じ量のビットコインで参加できるため「同じレートを打っている感覚」になるのが面白い現象だ。
Q: 投資家として重要な心構えは何だと思いますか?
長期的な視点を持ち、価格の短期変動に一喜一憂しないことが重要だ。株価が下がった時こそ買い時と考える姿勢も大切で、「なぜ下がっているものを買わないのか」と不思議に思う。一般的な消費感覚では安いものを好むのに、投資では上がっているものを追いかける傾向があるのは矛盾している。また、自分のリスク許容度を正しく認識し、利益を期待するならそれに見合うリスクも受け入れる準備が必要だ。最終的には、個々の銘柄の価格ではなく、世界全体の富の中での自分の割合という観点で考えることが長期的な成功への鍵となる。