MONEY SKILL SET EXTRA
今さら聞けない税金の基礎知識【会社員編】/給与明細の見方/節税対策
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2025年3月25日

株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを一流のプロの講義を受けて学ぶMONEY SKILL SETの応用編。今回は「今さら聞けない税金の基礎知識」を税理士・高橋創さんに教わる。前編は、会社員に向けた給与明細の見方、確定申告、節税対策。
サラリーマンが知っておくべき税金の基礎知識
「手取り額がこんなに少ないのはなぜ?」「確定申告って本当に必要?」「年収の壁って何?」—年末調整の時期になると、多くのサラリーマンが感じるこうした疑問。実は、税金の仕組みを正しく理解するだけで、あなたの手取り額は変わるかもしれません。税理士の高橋創さんに、サラリーマンが知っておくべき税金の基礎知識をQ&A形式で聞きました。

Q: 給与明細をきちんと見ている人はどのくらい?
実は、税理士でも自分の給与明細をきちんと見ていない人は多いです。私も税理士になる前は、所得税を教える講師をしていましたが、自分の給与明細はあまり見ていませんでした。現実を知るとショックを受けるからかもしれません。
給与明細は複雑で、支給項目や控除項目がたくさん書かれています。「控除って何?」「税金と社会保険料の違いは?」など、ぼんやりとしか理解していない人が多いのが現状です。

Q: 給与明細の基本的な見方を教えてください
給与明細は大きく「支給」「控除」「備考」の3つの部分に分かれています。
支給の部分は、会社からもらえるお金の総額(額面)を示しています。これは2種類に分かれます:
1. 税金がかかるもの:基本給や各種手当(住宅手当、家族手当、残業代など)
2. 税金がかからないもの:通勤手当など、すぐに支出する費用に対する補助
これらを合わせたものが「総支給額」となります。通勤手当が多い人(例:新幹線通勤)は、総支給額が大きく見えますが、実際には手元に残るわけではありません。
控除の部分には、主に3つの項目があります:
1. 所得税
2. 住民税
3. 社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険)
これらが引かれた後の金額が「差引支給額」(手取り額)になります。
Q: 手取り額が少ないのはなぜ?
多くの人が「税金が高い」と不満を言いますが、実は給与から一番大きく引かれているのは社会保険料です。所得税は意外と少ないのです。
例えば、総支給額が34万6664円の場合、社会保険料は5万2966円(健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険の合計)であるのに対し、所得税は6210円程度です。社会保険料は給与の約15%にもなります。さらに、会社も同じくらいの額を負担しているので、実際には給与の約30%が社会保険料として支払われています。
以前は社会保険料はボーナスにかからなかったり、料率も低かったりしましたが、現在は負担が大きくなっています。これは高齢社会で現役世代が上の世代を支える仕組みになっているためです。

Q: 年収の壁とは何ですか?
「年収の壁」には大きく分けて、所得税に関する壁と社会保険に関する壁の2種類があります。
所得税の壁:
- 103万円:配偶者以外の扶養親族(子どもなど)が控除対象となる上限額
- 150万円:配偶者が配偶者控除を満額受けられる上限額
政府は現在、特に19歳から22歳の大学生世代についても、配偶者と同じ150万円まで引き上げようという検討をしています。
社会保険の壁:
- 130万円:この金額を超えると、配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険に加入する必要が出てくる
- 106万円:大企業の場合はこの金額が壁になることもある
これらの「壁」が複雑に絡み合っているため、パートなどで働く配偶者は月収を調整する必要が出てきます。特に社会保険の壁(130万円)は大きな影響があり、これを超えると自分で社会保険料を支払わなければならず、手取り収入が減ってしまいます。
本来は、こうした複雑な「壁」を一本化して、もっとシンプルな制度にすべきではないでしょうか。
Q: サラリーマンができる節税方法はありますか?
サラリーマンの節税は基本的に難しいのですが、いくつか方法はあります。確定申告書を見ると、「所得控除」という部分があり、ここを増やすことでサラリーマンは節税できます。
主な節税方法は以下の通りです:
1. iDeCo(個人型確定拠出年金):掛け金が全額所得控除になります。
2. 医療費控除:年間の医療費が10万円を超えた場合、超えた部分が控除対象になります。インプラント、レーシックなどの高額な医療費も対象です。ただし、美容目的のものは対象外です。
3. ふるさと納税:寄付金控除として利用できます。2,000円を超えた部分が控除対象になり、実質2,000円の負担で返礼品がもらえます。
医療費控除やふるさと納税などは、お金が戻ってくるタイプの確定申告なので、3月15日の期限にとらわれず、過去5年分まで申請できます。過去に高額な医療費を支払っていた場合は、領収書を再発行してもらって申請することも可能です。
ただし、これらの節税方法はいずれも「お金がかかる」ものばかりです。iDeCoは積立が必要ですし、医療費控除は病気や怪我の治療費が必要です。お金がある程度余裕がある人にしか使えない節税方法と言えるでしょう。
Q: 世帯の収入構成によって税負担は変わりますか?
同じ世帯年収でも、収入の分散具合によって税負担は変わります。所得税は累進課税なので、高所得になるほど税率が上がります(5%~45%)。
例えば:
- 夫婦それぞれが年収1000万円のパワーカップル(合計2000万円)
- 1人だけで年収2500万円を稼ぐ独身者
この場合、パワーカップルの方が税負担は少なくなります。なぜなら、それぞれが1000万円の税率で計算されるからです。
また、子育て世代の例として:
- 夫婦が年収500万円と700万円で稼ぐケース(合計1200万円)
- 主に一方が稼ぎ、一方が少し稼ぐケース(年収1000万円と200万円、合計1200万円)
同じ世帯年収1200万円でも、前者の方が税負担は重くなる可能性があります。これは所得を分散することで高い税率を避けられる「所得分散」という古典的な節税方法の一例です。
所得税だけで判断はできませんが、一人に所得が偏りすぎると税金面では不利になることが多いです。

まとめ:サラリーマンが押さえておくべき税金知識
1. 給与から最も多く引かれているのは「税金」ではなく「社会保険料」である
2. 年収の壁は所得税の壁と社会保険の壁があり、特に130万円の壁は大きい
3. サラリーマンができる節税はiDeCo、医療費控除、ふるさと納税が代表的
4. 世帯の収入分散が進んでいる方が税負担は少なくなる傾向がある
5. 過去5年分の医療費控除などは後から申請できるので、高額な医療費を支払った記憶がある場合は確認する価値がある
給与明細をきちんと理解し、自分の状況に合った税金対策を考えることで、より効率的な家計管理ができるようになります。