
森保ジャパン、W杯本大会への課題
日本代表「バーレン戦」勝利と予選総括:強みと課題と世界への戦略
「遠藤航は外れることはないだろう。キャプテン就任時に『僕をベンチに置いてもいい。全部の試合に使わなくていい』と言うほど。」
日本代表はバーレン戦で2-0の勝利を収め、ワールドカップ出場権を確保した。この試合のレビューと共に予選全体を振り返り、本大会までの戦略について、スポーツライターの木崎伸也氏とミムラユウスケ氏に話を聞いた。

バーレン戦レビュー:後半に真価を発揮
Q: バーレン戦を全体的にどう評価しますか?
前半は日本がやや苦戦した。選手たちも「きれいにやりすぎた」と反省していた。特に左サイドの南野選手と三戸マン選手の連携が前半終盤にようやく機能したが、それまでは相手のコンパクトな守備に苦戦した。もう少し早くシンプルにロングボールを使う展開に切り替えられれば良かった。
後半は修正が効き、実力通りの戦いができた。ハーフタイムに「もっとシンプルにロングボールを使っていこう」という指示が出て、鎌田選手を投入したことでゲームが動いた。
これは「森保ジャパン」らしい試合展開だった。森保監督は「同じことを続けていれば、どこかで相手に水漏れが起きて結界する」という方針を持っている。見ている側は心配になるような前半でも、監督サイドからすれば想定内の流れだった可能性が高い。
両サイド攻撃の苦戦と修正
Q: 日本の強みである両サイド攻撃は機能しませんでしたが?
前半は三苫選手と南野選手の連携は試合終盤の5分間程度しかうまく機能しなかった。右サイドは久保選手がそちらに寄ってチャンスメイクしていたため、堂安選手が孤立気味になってしまった。
バーレンは非常にコンパクトにラインを形成し、守備組織を16メートル四方ほどに収める戦術で対応。これが日本にとって非常にやりづらい状況を作り出した。
Q: 3バックで起用されたディフェンダーはどうでしたか?
板倉選手の1対1の勝率が非常に低く、46%だった点が気になった。特に前半の劣勢の一因になっていた。アジアカップやインドネシア戦でも同様の課題があり、移動などでコンディションが整っていない可能性もある。
また、スリーバックでボールをつなぐ意味では、もう少し丁寧さやプレースピードの速さが求められる。前半のデュエル勝率は30%台と低調だった。
一方で藤井選手はビルドアップで良さを発揮。先制点の起点となった縦パスも彼から始まっている。前半は苦しみながらも、そのトライが後半に結果として出た。
Q: 本大会に向けてディフェンスのレギュラーはどうなりそうですか?
富安選手の怪我からの復帰状況が最大の懸念材料だ。町田選手や谷口選手も怪我で今回は出場できなかった。万全のメンバーが揃わない場合の布陣は難しい問題となる。
本大会ではスリーバックよりも4バックを採用する試合が多くなると予想される。その場合、右サイドバックのポジションが課題となる。理想は富安選手だが、復帰が間に合わない場合は高橋選手や石塚選手が候補になるだろう。
また、渡辺選手はベルギーで高評価を得ているにも関わらず、代表では評価が低い点が不思議だ。チーム作りへの貢献度や監督の描くイメージとの相違があるのかもしれない。
Q: 森田選手は前半で交代しましたが、どう評価しますか?
森田選手は前半45分で交代したが、これには戦術的な意図があったと考えられる。監督の「きれいにやりすぎた」という前半の反省を踏まえ、よりシンプルなプレーで打開するために田中選手との交代が選択された。
森田選手はきれいに崩そうとするタイプだが、後半はロングボールを多用する戦術に切り替えたため、よりフィジカルに強い田中選手の方が適していた判断と思われる。
ただし、森田選手と田中選手の序列については、森田選手の方が上だと考えられる。森田選手はチームメイトからの信頼も厚く、攻撃面だけでなく守備面でもチームに対する貢献が大きい。
Q: 久保選手と鎌田選手のコンビネーションはどうでしたか?


両選手は似たようなタイプで、ポジションを崩しながら距離感を近くして崩すプレースタイルを持っている。これはかつての遠藤保仁、本田圭佑、香川真司の時代のような即興性のあるサッカーを彷彿とさせる。
ただし、守備のバランスが崩れるリスクもあるため、プランAというよりもプランBとして、点が取れない時に切り札として使われる可能性が高い。
予選では久保選手がホーム戦で、鎌田選手がアウェイ戦でそれぞれ起用される傾向があった。今後も南野選手との使い分けとなるだろう。南野選手は守備力の高さと狭いスペースでの動きが評価されている。
Q: 上田選手のパフォーマンスはどうでしたか?
上田選手はシュート0本と物足りない面もあったが、チームのために汚れ役を担っていた印象だ。相手の守備陣に背を向けたポストプレーでボールをキープし、時間を作るという重要な役割を果たしていた。
本来の強みは裏抜けだが、現在はバランス型になって何でもできる選手になってきている。ただ、ワールドカップではより高いレベルの相手となるため、パワーだけでは通用しない場面も増えるだろう。もっと足元での連携やパス回しなどを磨くことが課題となる。
日本はセンターフォワードの決定力が課題とされるが、フランス代表のように必ずしも点を取るセンターフォワードがいなくても優勝できる例もある。周りの選手を生かすセンターフォワードとして上田選手を進化させる道もある。
Q: 予選をとおして見えた収穫と課題は?
最大の収穫は鈴木彩艶選手の成長だ。アジアカップでの起用を経て、安定したパフォーマンスを見せるようになった。インドネシア戦やバーレン戦でも重要な場面で好守を見せ、チームメイトからの信頼も高まっている。
また、「プランB」を作れたことも大きい。守備的なスタイルからウイングバックを活用した攻撃的な布陣まで、複数のオプションを練習できた。これは本大会で点が必要な時や強豪と戦う際に役立つだろう。
一方、課題としては選手の個人戦術、特に基本的な「止める・蹴る」の技術向上が必要だ。イタリア対ドイツの試合で見られるような質の高いパスやサイドチェンジ、クロスの精度には差がある。
また、固定されたメンバーが硬直化する懸念もある。アジアカップではチャレンジも多かったが、今回の予選ではスタメンをかなり固定していた。勝ちに徹した結果だが、チームの伸びしろや柔軟性という面では不安を残す。

Q: 本大会までの15ヶ月間で何が重要ですか?
森保監督のアプローチには3つのポイントがある:
1. ターンオーバー(選手の入れ替え)- 必ずしも100%変更するわけではないが、2〜3チーム分の選手を準備する方針
2. ワールドカップ仕様の戦い方 - アジア予選とは異なり、おそらく4バックをベースにしたより堅実な戦術を採用する
3. 後半勝負、最後まで戦い抜く力 - これはジャパンズウェイとも言える森保監督の核心的な戦術思想
残りの期間では予選3試合に加え、約11試合の親善試合がある。この時間をどう活用するかが重要だ。
森保監督は「王道を突き詰める」タイプの指導者だ。基本的な1対1の勝負や切り替えといった基礎を重視する。一方で、選手やコーチからのアイデアを取り入れるボトムアップ型のチーム作りも進めている。
懸念されるのは、メンバーの固定化が選手の思考や成長を制限してしまう可能性だ。選手たちがリスクを冒さずに現状維持を図るようになると、チーム全体の伸びが止まる。過去の大会でも、コアメンバーが固定化したことで伸び悩んだ例がある。
また、キャンプ地選びも重要な課題となる。アメリカ大会では東部、西部、中部のどこに抽選されるかで準備が変わってくる。過去のワールドカップでは、キャンプ地の選択が結果に影響したケースもある。