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幸せになるための「お金の使い方」
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2025年3月21日

行動経済学のスペシャリスト、相良奈美香氏は「同じお金でもどう使うかによって幸福度が変わる」と語る。幸せになるためにはお金をどう使うべきか?その秘訣を聞いた。 <ゲスト> 相良奈美香|行動経済学のスペシャリスト まだ行動経済学が一般的に広まる前の2013年から10年以上にわたり、サガラ・コンサルティ...
行動経済学が教える「幸せになるためのお金の使い方」
同じ金額でも使い方によって得られる幸福感は大きく変わる。行動経済学のスペシャリスト、相良奈美香氏が科学的に実証された「お金の最適な使い方」について解説する。日常の些細な選択から人生の大きな決断まで、私たちの意思決定を左右する「感情」の仕組みとその活用法とは?

人は「合理的」ではない—感情が意思決定を支配している
Q: 行動経済学では人の感情をどのように捉えているのですか?
伝統的な経済学では「人は合理的に行動する」という前提がありました。しかし行動経済学は「人は非合理的でありうる」と考え、感情が意思決定に与える影響を重視します。
感情は大きく2種類に分けられます。1つは「エモーション」で、喜怒哀楽のように明確に区別できる強い感情のこと。もう1つは「アフェクト」と呼ばれる淡い感情です。
例えば、可愛いマグカップを見て「素敵だな」と思ったり、満員電車に乗らなければならないと知って「ちょっと憂鬱だな」と感じたりする程度の気持ちの変化がアフェクトです。

Q: アフェクトは日常生活でどう影響しているのでしょうか?
アフェクト理論によると、人はあらゆる情報、物、人に対してポジティブまたはネガティブなアフェクト(感情)を持っています。ピンク色を見て「可愛い」と感じたり、灰色を見て「暗い」と感じたりするように、私たちは無意識のうちにすべてに感情的な反応をしています。
重要なのは、この感情が意思決定に大きく影響するということです。例えば、好意を持っている上司から残業を頼まれた場合と、あまり好感を持っていない上司から頼まれた場合では、同じ仕事内容でも受け取り方が全く異なります。
人はこのアフェクトを「ヒューリスティック」として使い、瞬間的な判断を下しています。「コーヒーを飲みますか?」と聞かれた時、コーヒーに対してポジティブなアフェクトを持っていれば「はい」と答え、ネガティブなら「いいえ」と答える。このように感情を手がかりに、深く考えることなく意思決定をしているのです。
幸せになるためのお金の使い方—科学的に証明された3つの方法
Q: 行動経済学的に見て、どのようにお金を使うと幸せになれますか?
行動経済学の研究によると、同じ金額でもその使い方によって得られる幸福感は大きく変わります。たとえば、500円の光熱費割引と500円相当のスイーツ引換券では、後者の方が人々に喜ばれる傾向があります。価値は同じでも、得られる幸福感が異なるのです。
幸せになるためのお金の使い方として、以下の3つの方法が科学的に証明されています:
1. 物より経験に投資する
物質的なものを購入するよりも、経験にお金を使う方が長期的な幸福につながります。例えば、1万円の洋服やアクセサリーを買うよりも、友人との日帰り旅行や普段行かない高級レストランでの食事など、経験に使う方が記憶に残りやすく、幸福感も持続します。
最近は若い世代を中心に「モノよりコト」という価値観が広がっていますが、これは科学的にも裏付けられた考え方です。オンラインショッピングで衝動買いした物はすぐに忘れてしまいがちですが、思い出に残る体験は長期的な幸福につながります。

2. お気に入りの物は「ご褒美」として使う
もちろん、物を買うことが悪いわけではありません。大切なのは、お気に入りの物を毎日使うのではなく「ご褒美」として特別な日に使うということです。
人は同じものに毎日触れていると慣れてしまい、それに対するポジティブな感情(アフェクト)が減少してしまいます。お気に入りの香水やマグカップ、ペンなどを毎日ではなく、例えば「土曜日の朝だけ」「金曜日のモチベーションが下がりがちな時だけ」というように使い分けることで、その物から得られる幸福感を長続きさせることができます。

3. 時間を買う
特に日本人にとって重要なのが「時間を買う」という考え方です。日本では長時間労働や飲み会などで自分の時間が取りづらい状況にあります。
「時間を買う」とは、例えば食事を作るのが面倒な時にデリバリーを頼んだり、掃除をロボット掃除機に任せたり、余裕があれば家事代行サービスを利用したりすることです。こうして生まれた時間を自分のリラックスや大切な人との関係構築に使うことで、幸福度が高まります。

Q: 日本では「自分でやるべき」という価値観がありますが、どう考えればいいですか?
日本には「自分でやることに美徳がある」という文化的価値観がありますが、行動経済学的に見ると、それが必ずしも幸福につながるわけではありません。家事を外注することに罪悪感を覚える方も多いですが、それによって生まれた時間でパートナーとリラックスした時間を過ごす方が、二人の関係性にとってもプラスになることが多いのです。
例えば、家事の分担においても、「女性がやるべき」という固定観念から脱却し、二人の大人が平等に分担するという考え方もあります。また、AIやテクノロジーの発達により、人間の様々なタスクを効率化できるようになれば、より豊かな生活が実現する可能性があります。
Q: パートナーとの関係を長続きさせるコツはありますか?
パートナーとの関係においても、「特別な経験」を共有することが重要です。毎日一緒にいる中で感情が薄れていくのは自然なことですが、定期的に二人だけの時間を作り、特別な場所でディナーを楽しむなど、日常と異なる経験を共有することで関係性を新鮮に保つことができます。
たとえ月に1回だけでも、子どもを預けて二人だけの時間を作ったり、普段とは違う環境で過ごしたりすることで、お互いへの感情を再確認し、関係性を深めることができるでしょう。
まとめ—行動経済学を日常に活かす
行動経済学は、経済学だけでなく心理学とも密接に関連した学問で、私たちの日常の意思決定に数多くの示唆を与えてくれます。特に感情(アフェクト)が意思決定に与える影響を理解することで、より良い選択ができるようになります。
お金の使い方においても、単に「何を買うか」ではなく「どのような経験を得るか」「時間をどう使うか」という視点で考えることが、持続的な幸福につながります。物質的な豊かさだけでなく、経験の豊かさや時間の豊かさを大切にする生き方が、行動経済学の視点からも推奨されているのです。