思考技術超分析
東大生続々輩出 名門校の国語
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2025年3月21日

東大生を数多く輩出する奈良県の超進学校『西大和学園』。20年以上国語を教える辻孝宗先生をゲストにビジネスパーソンにも使える国語のエッセンスを高松智史が聞いた。 <ゲスト> 辻孝宗|西大和学園中学校 高等学校教諭 岐阜県出身。東大古文講座を長年担し、多数の東大合格者を輩出。 100人規模で実施される...
「読む」と「読解」の違いがわかればビジネスで差がつく!国語教師が伝授する思考技術
20年以上国語を教える辻孝宗先生が提案する「読解力の考え方」は、ビジネスパーソンにこそ必要なスキルかもしれない。単なる「読む」だけで終わらせず、深く「読解」することで見える世界とは?


Q: 国語で習う「読解」とはどういうものですか?
国語教育で教えている「読解」と単に「読む」ことには大きな違いがあります。例えば「私は彼のために料理を作る。髭を剃ってあげる。風呂に入るのも手伝う。でも彼の目にはもう私は映っていない」という短い文章があるとします。
これを「読む」だけなら「料理を作って一生懸命やっているのに、彼の目に映っていない。浮気でもされているのかな」という表面的な理解で終わってしまいます。
一方「読解」するなら「料理を作るだけでなく、髭を剃り、風呂の手伝いをしているのは恋愛関係だけでは説明できない。これは介護的な関係ではないか?そして『もう私は映っていない』という表現から、相手は病気が重い状態なのではないか」というように、関係性を掛け算して深く理解することができます。
Q: なぜ国語の授業が社会に出てから役立つと感じたのですか?
国語で教えていることは、小学生の時は具体的なことから始まり、高校になると抽象度がどんどん上がっていきます。抽象度が高いと直接的には使えないように感じられますが、逆に言えばどんな場面でも応用できるということです。
実際に教育現場で見てきた事例では、生徒同士の喧嘩の仲裁をする時に「事実と解釈を分けて考える」という国語で学ぶスキルが非常に役立ちます。子どもたちは「あいつがこんなことをした」「あの子がこう言った」と事実と感情が入り混じった状態で話します。それを整理して事実と解釈に分け、問題解決につなげるのが教師の仕事です。
こうした思考プロセスは、ビジネス書でも同様の内容が書かれています。学校で習った国語の知識が、気づかないうちに社会人としての思考力の基礎になっているのです。

Q: 国語の授業改善に取り組まれた経験を教えてください
私は20年前に教師になった時、古文の授業を担当することになりました。しかし自分自身が古文を専門的に学んだ経験がなく、3年間の契約期間で結果を出さなければならないという状況でした。必死に勉強しましたが、当時の生徒たちには申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
その中で気づいたのは、文法をどれだけ教えても文章は読めるようにならないということです。文法は大切ですが、それは読解の最終段階、登場人物の心情を細かく理解する時に初めて必要になるものです。しかし従来の教育ではこの順序が逆になっていました。
そこで発想を転換し、まず「読解」から入り、次に「語彙」を学び、最後に「文法」を教えるというアプローチに変えました。この方法で今では中学3年生が20行程度の古文を、たった1分で内容理解できるようになっています。時にはもっと短い時間で理解させる訓練も行い、「全体の流れを掴んでから部分の理解に進む」という思考法を身につけさせています。

Q: 帰国子女の生徒から学んだ読解のヒントとは?
興味深い発見があったのは、古文の授業で最も成績が良かった生徒が帰国子女だったことです。この生徒は普段の会話は英語で、日本語の敬語も上手く使えないのに、古文はスラスラと解いていきました。
なぜできるのか尋ねたところ、「こう書いてあったらこうなると思うもん」と答えたのです。この生徒の頭の中には「こう来たらこうなる」というパターン認識があったのです。
この気づきをきっかけに、生徒たちと一緒に「どんなパターンがあるか」を考え始めました。漫画や小説、評論文など様々なテキストから文章パターンを抽出し、最終的に約7つの基本パターンにまとめました。ただし、この7つが絶対だとは思っておらず、生徒たちと一緒に考えるプロセス自体が大切だと感じています。
Q: 現在の国語教育の問題点はどこにありますか?
多くの国語の授業では「この段落は何を書いていますか?」という問いかけがされますが、これは実は難しい質問です。全体の流れがあって初めて各段落の意味が分かるものなのに、部分だけで意味を考えさせるのは本末転倒です。
文章が上手い人というのは、落ちやリズム感が天才的で、伏線を張ったり全体の構成を考えたりしています。一回目に読んだ時には気づかず、最後まで読んで初めて「あれが伏線だったのか」と気づける仕掛けが優れた文章の特徴です。
また、国語の答えは一つではないという認識も重要です。様々な解釈があり得ることを含めて国語を突き詰めていくべきなのに、一つの正解を求める教育になっている点も問題です。

Q: ビジネスパーソンがこの「読解力」を活かすには?
ビジネスの現場では「読解力」が非常に重要です。例えば上司が「この案件やりましょう」と言った時、経験の浅い人は表面的に「やりたい、売れそう」と解釈するだけです。しかし経験を積んだ人は、その言葉の裏にある意図や文脈を読み取り「実はやるなという意味かもしれない」と複数の可能性を考えます。
この違いは、表面的に「読む」だけか、立体的に「読解」するかの差です。ビジネスパーソンが成長するためには、言葉の表面だけでなく、関係性や背景を掛け算して理解する力が必要です。
国語で学ぶ「事実と解釈を分ける」「全体から部分を理解する」「パターンを認識する」といった思考技術は、そのままビジネスの思考法と重なります。学校で習った国語の知識が、社会に出てから様々な場面で活きてくるのです。