PIVOT TALK BUSINESS
スタートアップが伸び悩む理由。圧倒的な営業力が必要だ
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2025年3月17日

日本でスタートアップの裾野は広がりつつあるが、大型上場、ユニコーンの数は増えていない。スタートアップが伸び悩みを脱して、次のフェーズに進むために何が必要なのか?スタートアップ支援を行う、デロイトトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬社長に聞いた。 <ゲスト> 斎藤祐馬(デロイト トーマツ ベンチャー...
スタートアップの試練:「論語とそろばん」の両立が求められる時代に
日本のスタートアップ業界は転換点を迎えている。企業数は増えたものの、大型の成功事例は限られている。スタートアップ5カ年計画が進む中、業界はどのような構造変化に直面し、どう乗り越えるべきなのか。デロイトトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬社長に、現在の課題と打開策について聞いた。

Q. 日本のスタートアップ業界はどのような変化を迎えているのか?
スタートアップという概念は2010年頃から徐々に形成され、2015年頃までに資金調達環境が整い始めました。大企業によるコーポレートベンチャーキャピタルや官民ファンドが増え、その流れの中でメルカリなどの成功企業も誕生しました。2021年頃が資金調達やIPO市場のピークとなり、政府の支援もあって起業数は確実に増加しています。
しかし、課題は「大成功」する企業の少なさです。日本の経済活性化のためには、新しい大企業を生み出すことが重要です。社会のトップ企業が長年固定化していると若者のチャンスも生まれにくくなります。中国など他国はこの点で成長を続けています。
Q. 上場基準の変化はスタートアップにどのような影響を与えるのか?
現在、スタートアップが上場する際の時価総額は平均60億円から100億円程度ですが、「スモールIPO批判」が強まっています。これにより、今後は大型の上場案件が増える傾向にあります。これ自体は良い変化ですが、上場できる企業の割合は必然的に減少します。
この状況を打開するには、M&Aを通じた「連続起業家」の育成が重要です。最近では連続起業家が集める資金調達額は増加傾向にあり、投資家も成功確率の高い経験豊富な起業家に集中投資する傾向が強まっています。
今後は、M&Aの件数を5倍、10倍に増やすことが業界の発展に不可欠です。M&Aで得た資金で再起業する人材が増えれば、結果的に大型の企業が生まれやすくなります。

Q. スタートアップにとって「論語とそろばん」の両立はなぜ重要か?
スタートアップ業界が直面している最大の課題は「どうやって収益を上げていくか」という点です。「論語とそろばん」という言葉があるように、スタートアップはビジョンで引っ張りながらも、ビジネスとして成果を出さなければ長続きしません。
M&Aを増やすためにも、企業が収益を上げることが不可欠です。M&A市場では一般的に、利益を出している企業は売却しやすく、株価算定も容易です。赤字企業では算定が難しく、のれん代も発生しやすいという課題があります。
今後、スタートアップは以下の2つのタイプに分かれていくでしょう:
1. 深い技術開発に大きな資金を必要とする「ディープテック」企業
2. 比較的早い段階から収益化を目指す企業
どちらのタイプであっても、資金調達と売上創出のバランスを考える必要があります。「スタートアップだから赤字でいい」という考え方ではなく、商売の原点に立ち返ることが重要です。

Q. 資金調達と営業力のバランスをどう取るべきか?
近年のスタートアップでは、プロダクトやサービスを売るための営業力よりも、資金調達のための営業力に注目が集まりすぎていた面があります。自社で事業からキャッシュフローを10億円生み出すことと、投資家からの資金調達で10億円を集めることを比較すると、後者の方が容易に感じる経営者も多いでしょう。
しかし、資金的余裕があると経費やコスト管理の規律が緩みがちになります。将来的な大きな成長のための投資(Jカーブ)と、単なる規律の緩みによる赤字を明確に区別することが重要です。
ディープテック分野や急速な拡大期における広告投資など、戦略的に赤字を計上する場合はありますが、「スタートアップだから赤字でいい」という考え方は適切ではありません。永続的な赤字のビジネスモデルは成立しないからです。

Q. スタートアップが強化すべき具体的なスキルは何か?
スタートアップが強化すべき重要なスキルは、「営業力」と「採用力」です。成功している企業を見ると、圧倒的な営業活動を行っています。特に、小規模企業から大企業へと顧客を広げていく過程で多くのスタートアップが壁にぶつかっています。
大企業への営業は、意思決定プロセスやセキュリティ基準など、中小企業とは異なる要素が多く、そのための専門的なスキルを持つ人材の採用が不可欠です。例えば、エンタープライズ営業の経験がある人材は、営業力も高く、独特の文化や手法を持っています。
スタートアップ界隈には、ファイナンスの世界から優秀な人材が流入し、資金調達のノウハウが向上しました。同様に、営業の世界からも一流の人材を獲得し、業界全体のレベルを上げることが必要です。楽天やキーエンス、光通信出身者など、営業力の高い企業文化出身の人材を積極的に取り込むことも一つの方法です。
Q. M&Aをさらに増やすための鍵は何か?
M&Aを増やすためには、利益を出している企業の数を増やすことが最も重要です。収益性のある企業が増えれば、M&A仲介業も自然と活性化します。
また、ファンドによる企業のバリューアップ後に大企業に売却するモデルも今後増えていくでしょう。ユーザー数が多く社会的インパクトのあるサービスは、赤字でも評価されることがあります。
さらに、起業を通じて成長する能力を持った優秀な経営者のキャリアが中断されることは社会的損失です。専門性の高い人材がよりスタートアップに流入する環境を整えることが、業界発展の重要なポイントとなります。
今後日本が2030年に向けてユニコーン企業を多数輩出し、産業が活性化するためには、こうした取り組みを継続的に行っていくことが重要です。