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トランプショックと投資戦略:バフェットに学ぶ
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2025年3月15日

トランプショックにより下落する日米の株式相場。その背景にある構造変化は何か?逆風下でどんな投資戦略をとるべきか?バフェットは今何を考えているのか?ファンドマネージャーの奥野一成氏に聞いた。 <ゲスト> 奥野一成/農林中金バリューインベストメンツCIO 京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・フ...
トランプショックと世界経済、本当の影響は?市場の構造的変化と投資戦略
相場が大きく動く中、トランプ政権の影響をどう見るべきか。大船ファンドマネージャーの奥野一成氏が、短期的視点だけでなく中長期的な視点から市場と経済の行方を語ります。

Q. トランプ政権による市場への影響は想定内か予想以上か?
現在の市場の変動はトランプショックによるものと言われていますが、実はもっと根本的な問題があります。元々経済状況はあまり良くなく、2018年頃からグローバリゼーションは終わりつつありました。
習近平氏とトランプ氏が対立を始め、関税問題で株価が下落しました。その後コロナ禍で一時的に対立が和らぎ、金融緩和によって市場はバブル状態になりました。
近年はAIという新しい技術が登場し、特にアメリカ企業が牽引してきましたが、経済全体としては一本足打法のような状態でした。
トランプ政権の影響というより、現在の調整は想定内とも言えます。S&P500が年初来で13%程度下落していますが、その約半分は為替の影響です。純粋な株価の下落は7%程度で、これは調整と呼ぶほどでもありません。通常、調整は15%程度の下落で、2022年には20%以上下落しています。
市場構造の変化と隠れたリスク
市場には大きな構造変化が起きています。10年前、S&P500においてGAFAM+NVIDIAの比率は10%以下でしたが、現在は30%近くまで増加しています。
これらのテック企業は標準偏差(リスク)が高い銘柄です。インデックス投資家は「ベータ1(市場平均のリスク)」と考えていますが、実際には構成銘柄の変化によってポートフォリオのリスクは大きく上昇しています。
たとえば、ギャファムプラスNVIDIAは「250km/hで走る車」のように速すぎるスピードで成長してきました。一方、ビザやS&Pグローバルなどの構造的に強靭な企業は「80km/hで走る車」のように安定しています。
こうした市場構造の変化を理解していれば、調整局面も想定内のリスクとして冷静に対応できます。

PL発想とBS発想の違い
投資における考え方には「PL(損益計算書)発想」と「BS(貸借対照表)発想」があります。
PL発想は短期的な損益に注目し、円高・ドル安になれば「やられた」と考えます。一方、BS発想では自分の資産全体を長期的に増やすことを考え、円高はこれから買う資産の購買力が上がるチャンスと捉えます。
特に積立投資をしている人はBS発想を持つべきです。円高になっても、今後購入する資産の購買力が上がったと喜べる視点が重要です。
今後の金利と経済見通し
今後の市場動向は金利に大きく依存します。トランプ氏は景気対策として金利引き下げを望むでしょうが、インフレが止まっているかどうかがより重要です。
グローバリゼーションの終焉により、国をまたぐコストが上昇し、コストプッシュ型のインフレが根強く残る可能性が高いです。そのため、短期金利は下げられても、インフレ対策のため高止まりする可能性があります。
これは世界経済が「スタグフレーション」(経済停滞下のインフレ)に近い状態になることを示唆しています。中国経済も下火になり、世界全体が「ダラダラとした景気」になる可能性があります。
ただし、優良企業はコストプッシュ型インフレでも、価格転嫁できる強さを持っています。個別企業の強さに着目できれば、悲観する必要はありません。
Q. 円高傾向はどうなる?
日銀の金融政策は「円安」に戻ることを避けようとしています。円安が進むと、資源輸入国である日本はインフレが止まらず、国民の購買力が落ちて生活が苦しくなります。
それを避けるため、金利を上げて通貨防衛をしている状況です。普通の状態であれば、135円前後が中心になるレンジと考えられます。10〜20年前であれば115円程度がセンターでしたが、地政学リスクや日本の国力などを考慮すると、現在は135円程度が妥当でしょう。
現在の140円台は十分に円安であり、円高に進む余地は十分にあります。輸入国である日本では、通貨の強さは国民にとって非常に重要です。
ウォーレン・バフェットの投資戦略から学ぶこと
バフェットが最近キャッシュを増やしていると言われますが、その理由は単純です。短期金利が4.5〜5%になっている現在、リスクを取らずにこれだけのリターンが得られるなら、大きなリスクを取って15%を目指す必要がないという考え方です。
しかし、彼の年次レターによれば「素晴らしい企業の持ち分を持つことよりキャッシュを持ちたいと思ったことは一切ない」と明言しています。上場株式の比率が減ってキャッシュが増えているように見えますが、実際には非上場のポートフォリオ(風力発電、鉄道、輸送など)が拡大しています。
また、バフェットは債券(特に固定クーポン債)について警戒感を持っています。国の財政運営次第で紙切れになる可能性があるためです。彼の投資哲学の真髄は「通貨より、コカ・コーラを作る能力をバランスシートに入れる」という考え方です。通貨がどんなに価値を失っても、コカ・コーラを飲みたい人がいる限り、その価値は減じないからです。
個人投資家が注目すべきポイント
「バフェット指数」(時価総額とGDPの比率)でみると、アメリカ市場だけでは現在約2倍と非常に高いように見えます。しかし、グローバル企業の多いアメリカ市場は全世界で稼いでいるため、全世界のGDPと比較すべきです。その場合、現在の水準は1.16倍程度と、過度に割高とは言えません。
個人投資家が最も注目すべきは自己投資です。自分の稼ぐ力を上げることが最も確実な投資です。その上で、人の稼ぐ力のオーナーになるという発想で株式投資をすること。相場を当てようとするより、良い会社を見極める力をつけることが、ビジネスパーソンとしても重要な視点です。
また、アメリカ経済は調整があっても一強の状態は変わらないでしょう。だからこそ、グローバルに強い企業を自分のバランスシートに組み込む発想が大切です。

オルタナティブ投資の注意点
日本でもオルタナティブ投資が増えていますが、リターンだけを見て「リスクが低い」と判断するのは危険です。中身がどういう稼ぐ力を持っているかを理解することが重要です。
オルタナティブ資産は流動性がないことが最大のリスクです。地政学リスクが高まる現在の世界情勢では、売りたいと思った時に売れない資産を持つことは危険です。
さらに、通貨についても分散を考えるべきです。世界の中心となる通貨で自分の資産を考えることが重要で、円高になった時はドル資産を買うチャンスと捉える発想を持つことが大切です。
投資と学びの関係
投資で最も重要なのは学ぶ姿勢です。投資は利益にも損失にもなりますが、そこから学べることは必ずプラスになります。
ピケティの「R > G」の理論では、投資のリターン(R)は労働のリターン(G)より高いと言われています。そのため、働くことと人に働いてもらうことをバランスシートに組み込むことが重要です。
日本が「1億総株主」になっていくことは、先進国としての重要なプロセスです。お金を使ってオーナーシップを持つという発想を広げることは、不労所得の増加につながり、より多くの投資オプションを持つことができるようになります。
結局のところ、相場を予測することよりも、自分の稼ぐ力を高め、グローバルに強い企業を自分のバランスシートに入れていくことが、着実に資産を増やすための王道なのです。