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権田修一の仕事の流儀:休みたい時は休む
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2025年3月16日

日本代表でNo.1の変人と言われる権田修一選手。ゴールキーパーとして国内外で活躍する中で体得した「仕事の流儀」とは何か?スポーツライターの木崎伸也氏とミムラユウスケ氏が話を聞いた。
サッカー日本代表GK権田修一が語るカタールW杯PK戦の裏側と責任を負うことの価値
クロアチア戦のPK戦前に徹底分析した権田修一は「クロアチア人の自信を持って蹴る力は高かった」と振り返る。また「休みたい時に休む」という心構えについても解説。サッカー日本代表として活躍した彼の経験から生まれた知恵を紹介する。

Q: カタールワールドカップのクロアチア戦前、PKについてどのように分析していたのですか?
クロアチア戦が決まってから、代表の分析担当スタッフにPKの映像をできるだけ多く集めてもらいました。国内リーグのPKやPK戦の映像など、クロアチアリーグの映像まで徹底的に分析しました。
特に注目したのは、モドリッチやコバチッチなど責任を持てる主力選手です。彼らが1番か5番を蹴ってくると想定し、そこを止められればPK戦で波に乗れると考えていました。トーナメント戦で勝ち抜くためには重要なポイントだと思っていました。
しかし蓋を開けてみると、モドリッチは交代していて、予想外の展開になりました。モドリッチは普通なら絶対に蹴るはずの選手です。ブラジル戦では彼もPKを蹴っています。日本戦ではなぜ変えたのか、クロアチアの監督に聞いてみたいところです。
Q: クロアチア選手のPKに対する姿勢から何を感じましたか?
PKはゴールキーパーのゴールキックやフィールドプレーヤーのフリーキックと同じで、自分のタイミングで好きな場所にボールを蹴れる状態です。そこでキックの能力が最も出る場面だと思います。
クロアチアの選手たちは皆、自信を持ってインステップで狙ったコースにしっかり蹴るという技術を持っていました。これは彼らの強みの一つだと感じました。
PKスポットに向かって歩いてくる姿を見ていても、「朝の散歩をしているような」リラックスした様子でした。プレッシャーをあまり感じていない、あるいは上手くコントロールしている印象がありました。自分の弱みを見せない、落ち着いて自信を持って蹴ってくる彼らの姿勢に、「厄介だな」と感じました。

Q: クロアチア人選手の責任感について何か特徴はありますか?
以前オーストラリアでプレーしていた時、セルビアやクロアチア、ボスニアなど旧ユーゴスラビア出身の選手が多くいました。彼らは自分の責任というものを非常に大事にする傾向がありました。
責任を負うことに慣れているため、PKのような最もプレッシャーがかかる状況でも「普通にやればいい」という感覚で臨むことができるのだと思います。
日本代表にとって重要なのは、選手全員が「私も蹴れます」という状態でPK戦に臨むことです。「私は蹴れません」という選手がいると、責任を終えるメンタリティを持つ選手が少なくなります。アルゼンチンのPK戦では全員が「俺に蹴らせろ」と手を挙げたという話がありますが、理想はそういう状態です。

Q: PK戦で日本が勝つ確率を上げるには何が必要ですか?
私自身、7番目のキッカーとして準備していましたが、蹴る感覚がそこまで強くありませんでした。もっと「1番でも2番でもいいですよ」という感覚になれるくらい、責任を終えることができると、PK戦で勝つ確率は上がると思います。
PKを蹴る感覚は練習が必要ですが、まずは心構えとして全員が責任を持つことが大切です。会社のプレゼンでも同じで、全員が責任を持ってプロジェクトに参加するとクオリティが上がります。
日本のサッカー界全体として、個人が責任を負うことに慣れていく必要があります。これはチームだけの話ではなく、メディアや少年サッカーに関わる方々も含めて、みんながサッカーファミリーとして一体感を持つことが重要です。
Q: 「休みたい時に休む」という言葉の意味を一般の人向けに説明してください
人にはキャパシティがあります。体のキャパシティはもちろん、メンタル面の容量も人それぞれです。まず大切なのは、たくさん仕事をしている人と自分を比較するのをやめることです。
例えると、食事の時の胃袋の大きさと同じです。たくさん食べられる人がいれば、少ししか食べられない人もいます。食事なら「これしか食べられません」と言えますが、仕事になるとそれが言えません。「あの人がたくさん働いているから、私も休まずに頑張らないと」と考えがちですが、それは間違いです。
もちろん仕事量を増やしていくことは大切ですが、急に増やそうとするとメンタル的に辛くなります。少しずつ量を増やしながら、休むべき時にはしっかり休む。それが長期的に見て近道になることもあります。
一日の中でも「仕事は終わり、今は休む時間」とメリハリをつけることが大事です。また、チームや組織においては、一人が倒れても回る体制を作ることも重要です。責任を一人に集中させず、みんなで分担することで、休むべき時に休める環境が生まれます。

Q: 「レガシーを残したいと思うと自分が変わる」とはどういう意味ですか?
昨シーズン、「これが最後のシーズン」という気持ちで清水エスパルスでプレーしました。自分にプレッシャーをかけることでスピード感が生まれると考えているからです。実際、エスパルスでの4年間も、常に「今年で終わり」という感覚で取り組んできました。
特に最後のシーズンは、自分が去った後も強いチームであってほしいという思いがありました。息子がエスパルスのジュニアチームでプレーしていることもあり、クラブの未来に貢献したいと考えました。
そこで、キーパーコーチや若手のゴールキーパーたちに、自分の持つすべての知識や技術を惜しみなく伝えました。「こういう時はこう考える」「こういうセービングの時はこうする」など、企業秘密のようなものも全て伝えました。
理想としては、J1に上がってシーズン前半でチームが残留を決め、夏には若手キーパーに出場機会を与えながら、翌年以降もJ1で戦えるチーム作りに貢献することでした。現在エスパルスは好調で、秋葉監督も「J1で戦ってトップの優勝争いに加わる」という高い目標を掲げています。
Q: 変人と言われることについてどう思いますか?
何事にも興味を持つ性格なので、いろいろなことを考えたり話したりします。その結果「変わっている」と言われることがありますが、それは自分にとってポジティブなことだと思っています。
この本に書いたことが今は響かなくても、生活環境や仕事環境が変わった時に「どう考えればいいんだっけ?」と立ち返れるものになれば嬉しいです。
現在は所属がなく夏に向けて準備していますが、楽な道を選びたくなる時もあります。でも自分の信念を持ってやっていきたい。そのための拠り所として、この本の45の言葉のうち1つでも持っていてもらえると嬉しいです。
結局、何事も目標から逆算して決めることが大切です。サッカー選手として、そして人間として、自分の目指す場所に向かって進んでいきたいと思います。
Q: どんな選手になりたいですか?
すべては目標のために行動していきたいと思います。最終的にはワールドカップでの優勝です。常に高い目標を持ち、そこに向かって努力を続けることが重要だと考えています。
そのためには個人としての成長だけでなく、日本サッカー界全体の発展が必要です。一人が責任を持つのではなく、皆が一体となって同じ目標に向かう。そうすることで、いつか日本は強豪国として認められるようになると思います。
強豪国とは、一度だけベスト4に入るような国ではなく、常にベスト8以上に進出し、5大会中3回は決勝に進むような国です。そのレベルに到達するには、長期的な視野と多くの人々の協力が必要です。
私は今後も、自分の役割を全うしながら、日本サッカーの発展に貢献していきたいと思います。