2025年のマーケティングはどう変わる?「広告崩壊」「バイブス時代」「AI人格」が鍵を握る
「私たちが知っているかつての広告という意味では、もう終わっています。今のフェーズは、全体で終わっていないフリを一生懸命しているという状況です」
マーケティング業界が大きな転換点を迎えている今、第一線で活躍する専門家たちが語る未来像とは?デジタルシフト、広告の崩壊、AIとの向き合い方について徹底討論した内容をQ&A形式でお届けします。



Q. マーケティング業界は今どのような変化を迎えているの?
マーケティングの定義そのものが34年ぶりに刷新されるなど、業界は大きな変革期を迎えています。宣伝会議の吉田和彦氏によると、マーケティングは「生産・財務・人事を含む経営全体を包括するもの」へと進化し、中小企業にとっても重要な時代になりました。
デジタル広告費も右肩上がりで伸び続けており、企業はデータに基づいた広告戦略を展開しています。電通 zeroの嶋野裕介氏は「以前はテレビや新聞、雑誌のメディア費を先に分けて、余ったものをネットに回していましたが、今はインターネットでどう設計するかを考えてから、テレビや新聞を組み合わせるようになりました」と指摘します。
Q. 2024年のマーケティングを一言で表すと?
TBWA\HAKUHODOの細田高広氏:「まるまるマーケティングの終わり」
電通 zeroの嶋野裕介氏:「バイブス時代が来た」
細田氏は「これまで当たり前だと思ってきたパーパス、SDGs、Z世代マーケティング、パフォーマンスマーケティングなどに対して、疑問符が出てきました。一周回って、人のことを考えるという基本的なマーケティングに戻ってきているのではないか」と語ります。
嶋野氏は「バイブス(気持ちの高まり)が重視される時代になっています。情報過多の時代に人々が求めているのは、情報を信じたくなるような気持ち、共感です。マーケティングも事実を積み上げるのではなく、人の気持ちをどう高めるかを設計することが求められています」と説明しました。

Q. 広告は本当に崩壊するの?

「有料アプリのランキング1位がアドブロッカー(広告ブロックアプリ)だった」という事実は、広告が消費者から嫌われている現実を示しています。
細田氏は「広告を見ることが、課金しない人の罰ゲームになっている。みんな課金して広告のないスムーズな体験を求めている」と指摘し、「私たちが知っている従来の広告は終わっている。ただ業界全体が終わっていないフリをしているだけ」と断言します。
しかし、広告の崩壊は終わりではなく新しい始まりでもあります。「終わらせて始めたい」という細田氏の言葉には、マーケティングの本質に立ち返り再構築する必要性が込められています。
嶋野氏は「広告はクリエイティブとメディアの2つの要素で成り立っている」と指摘し、「愛らしさがあれば大丈夫」と主張しています。企業のメッセージが固くなりがちな中、消費者と商品の間に入って「見たくなる」「好きになってもらえる」設計ができれば広告はまだ有効だと語ります。
Q. 消費者に届く広告とは?
「世界中の人々が2000円払って見に行った広告」として、映画「バービー」の例が挙げられました。これはマテル社のおもちゃを題材にした映画ですが、誰も広告だと思わずに楽しんでいます。
細田氏は「今後全ての企業がエンターテイメント企業になる可能性がある」と指摘します。LVMHやファストフード企業が自社スタジオを設立し、企業の思想を映像化する動きが増えています。「マスメディアは衰えたかもしれないが、メジャーコンテンツは常に必要。みんなが一緒に見たくなる共通体験が重要」と語ります。
企業の自社メディアも増えており、ヤンマーがTikTokで社員を起用したコンテンツを展開し、若年層の認知度向上とリクルーティングに成功した事例も紹介されました。
Q. AIはマーケティングをどう変えるの?
マーケッターの最大の関心事はAIですが、課題も多くあります。著作権問題や生成コンテンツの信頼性についての懸念が指摘されています。
嶋野氏は「PR領域におけるAI」に注目し、「検索結果の前に要約が表示されるようになり、AIがパブリックの意見をまとめる時代に。私たちは『AIリレーションズ』を考える必要がある」と述べています。
細田氏はAIの人格化に注目し、「企業と生活者が触れる最初の接点がAIになっていく。冷蔵庫や掃除機とも会話する時代に、AIの性能競争から『性格の競争』へ移行する」と予測します。「企業は自社AIをどのような人格にするかを考える必要がある」と指摘しました。
さらに「AI×過去」の可能性も言及され、歴史上の人物との対話や過去のコンテンツの掘り起こしなど、新しい体験の創出に期待が寄せられています。
Q. 2025年のマーケティングをどう予測する?
すべての議論に共通していたのは「人」への回帰です。細田氏は「デジタル化もAIもありますが、結局はヒューマナイゼーション(人間化)に向かっていくのが大きな流れ」と結論づけました。
嶋野氏は「バイブスで人の気持ちを上げることが重要。素晴らしい商品でも知ってもらえないと動かない。感情からデザインしていくアプローチが2025年の鍵」と語ります。
マーケティングはターニングポイントを迎え、従来のフォーマットを終わらせて新しい形を模索する時代に入っています。デジタル技術を駆使しながらも、最終的には人の心を動かすことが求められる—それがマーケティングの未来像です。
