教育新常識
専業主婦とフルタイム 子どもの学力が高いのは?
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2025年3月12日

子育て・教育の新常識を一流講師から学ぶ。教育経済学者・中室牧子氏のエビデンスで子育てシリーズ第二弾!親の時間投資、習い事、先取り学習の効果を科学的根拠を基に紐解く。 <ゲスト> 中室牧子/教育経済学者 慶應義塾大学総合政策学部 教授 慶應義塾大学卒業後、日本銀行等を経て、2010年にコロンビア大...
子育て「科学的根拠」Q&A!~「時間投資よりも働き方」「第1子と第2子の差は親の行動次第」【教育経済学最前線】
「親は子育てにどれだけコミットすべきか」「勉強できない子をできる子に変えられるのか」—こうした子育ての悩みに、教育経済学者の中室牧子氏が科学的根拠に基づいて答えます。

Q: 親は子育てに時間を割くべきですか?また専業主婦と働く親では差がありますか?
子育ては時間投資が重要です。経済学では、塾や習い事などのお金だけでなく、親が子どもに使う「時間」も重要な教育投資と考えられています。
親の時間の使い方を記録した「生活時間調査」のデータを分析すると、実は「学歴が高い親ほど子育てに時間をかけている」という結果が出ています。
意外なことに、親の働き方(フルタイム勤務か専業主婦か)による時間投資の差はそれほど大きくありません。子どもが小学生以上になると、親の労働時間と子どもの学校時間が重なるため、専業主婦か否かで子どもと接する時間に大きな差が生じないからです。
ただし、日本の場合は海外のデータと若干異なり、専業主婦の母親の方が子どもの教育に使う時間が長い傾向があります。しかし、その差は1日あたり約10分程度で、そこまで大きな差ではありません。
長時間労働が一般的な日本では、親が子どもと過ごす時間が短くなりがちです。子どもを支えるという観点からは、企業の働き方改革も重要といえるでしょう。

Q: 幼児期の子どもにはどんな習い事や学びが効果的ですか?
幼少期の教育投資は非常に効果が高いとされていますが、習い事の内容が重要です。多くの親は文字の読み書きなどを幼児期から先取り学習させたいと考えがちですが、実はそれはあまり効果的ではありません。
最新の研究によると、幼児期に読み書きやそろばんなどを一生懸命学んでも、小学校入学後にはほとんど差がなくなることがわかっています。
なぜなら、幼児期の子どもは発達段階上、じっと座って話を聞き、それを理解して紙に書くといった学習スタイルに適していないからです。発達に合わない学習を無理に行うと、ストレスや問題行動の原因になることもあります。
幼児教育の専門家によれば、幼児期に最も大切なのは「遊び」です。遊びを通じて、子どもたちは様々なことを学びます。例えば、絵を描いたり歌を歌ったりする活動は、「どの色を使おうか」「どう声を出そうか」といった意思決定の連続であり、考える力(認知能力)を鍛えることにつながります。
Q: 子どもの自主性を引き出すにはどうすればいいですか?
子どもは「やれ」と言われたことは絶対にやりたがりません。しかし、自分で見つけて「やろう」と思ったことには夢中になります。
幼稚園や保育所の先生たちは、子どものやる気を引き出すのが上手です。彼らは「何々があるよ。どうする?」と問いかけ、常に子ども自身に意思決定をさせます。
この手法は「スカッフォルディング(scaffolding)」と呼ばれ、「橋渡し」を意味します。子どもが今はできないことでも、適切な刺激を与えることで可能にしていく教育的アプローチです。
幼稚園の先生たちはこの技術を熟知しているので、親としては幼稚園の先生がどのように子どもに声をかけ、どのように動かしているかを観察するといいでしょう。家庭でも使える技術をそこから学べます。

Q: 時間が取れない親は、どうすれば子どもの教育に貢献できますか?
仕事や出張で子どもと十分に時間が取れない場合、効果的な対策の一つは祖父母の力を借りることです。
最近の研究では、祖父母と関わることで子どもたちの認知能力や発達が良くなる可能性が示されています。フィンランドなど複数の国で3世代分のデータ分析が進み、祖父母の影響の重要性が明らかになってきました。
例えば、若い親世代は「やばい」「すごい」といった簡略化された表現を使いがちですが、祖父母世代はより丁寧な日本語で説明する傾向があります。こうした言語的な多様性に触れることは、子どもの言語発達にプラスになります。
必ずしも血のつながった祖父母である必要はなく、シッターさんなど信頼できる大人の存在も有効です。これらの人たちは、親が十分に時間投資できない場合に、その役割を肩代わりしてくれます。

また、子どもが小さい頃には、ハグなどの愛情表現や愛着関係の形成が特に重要です。祖父母やその代わりとなる人たちは、そうした部分でも大きな役割を果たせます。
Q: 兄弟の出来はどのように決まりますか?第1子と第2子で差がありますか?
一般に、第2子が第1子から学ぶことで能力が高くなるのではないかと思われがちですが、実は学力や学歴では第1子の方が優れている傾向があります。
これは日本だけでなく、アメリカやデンマークなど様々な国でも同様の結果が出ています。研究データによると、第1子から第2子、第2子から第3子と生まれ順が下がるにつれて、教育年数が減少していきます。
第1子と第2子の差がなぜ生まれるかについては、主に親の行動が原因と考えられています。第1子は初めての子育てなので、親は何をすべきか手探りの状態で、あらゆることを試み、結果として子どもに多くの時間を費やします。第2子になると経験から「これは必要ない」と判断し、手抜きが生じる傾向があります。
また、親は子どもたちに平等に時間を使おうとしますが、人生全体で見ると第1子は第2子より先に生まれているため、必然的に親からの時間投資の総量が多くなります。
さらに、第1子は家庭内でリーダーシップを発揮する機会が多く、弟妹の面倒を見ることで自然とリーダー気質が育まれます。実際、企業の社長や政治家には第1子が多いという統計もあります。
これらの事実を知った上で、親としては第1子と第2子の間で時間投資や躾に差が出ないよう意識的に配慮することが大切です。
Q: 子どものやる気を引き出すための有効な方法はありますか?
子どものやる気を引き出すには、彼らのインセンティブ(動機づけ)を理解することが大切です。教育経済学では、「人々がどういう状況でより勉強しようというインセンティブを持つか」を研究しています。
子どもが自ら勉強してくれるような動機づけや環境を作ることが、親にとっては理想的です。その一つの方法として、「勉強を好きなことと結びつける」ことが効果的です。
また、子どもは同級生から非常に大きな影響を受けています。研究によれば、同じクラスに女子が多いほど学力が高くなる傾向がある一方、理系進学が減るという結果も出ています。子どもの周囲の環境、特に友人関係も学習意欲に影響する重要な要素です。
子どものインセンティブを理解し、適切な環境を整えることで、子どもは自ら学ぶ意欲を持ち始めるでしょう。
子育てや教育の方法は日々進化しています。科学的根拠に基づいた子育てを行うことで、子どもの可能性を最大限に引き出せるでしょう。