ECONOMICS101
為替から読み解く世界経済
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2025年3月9日

エコノミストの永濱利廣氏をはじめとする専門家から、経済の基礎知識をゼロから学ぶ番組。番組名の101とは、“基礎講座”を表す、英語でよく使われる表現です。 <ゲスト> 深谷幸司|為替アナリスト 1984年東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。チーフアナリスト、チーフエコノミストを歴任。ドイツ証券、クレ...
2025年の為替はどう動く?円高進行の可能性は?専門家が語る展望と注目ポイント
為替相場は世界経済を読み解く重要な指標の一つだ。2025年、ドル円相場はどのような展開を見せるのか。エコノミストの永濱利廣氏らが語る為替展望から、一般投資家が知っておくべきポイントを整理した。
Q: 為替相場を読み解く上で重要なポイントは何か?
為替相場を読み解く上で重要なポイントは主に3つある。
1. インフレ率の動向:これは金利政策に直結する要素で、各国の物価上昇率が為替に影響を与える。
2. 内外金利差の動向:2国間の通貨関係において、金利差がどう動くかが重要。
3. 対外収支:日本の貿易収支、サービス収支、証券投資収支、直接投資などの動きが為替に影響する。
これらが基本的な見方となるが、短期的な相場変動と長期的なトレンドでは、それぞれ影響度の強い要素が異なる点に注意が必要だ。

Q: 日米欧のインフレ率の現状と為替への影響は?
コロナ禍以降、世界的にインフレ率が上昇した。特に欧州では一時2桁に達したこともあり、過去にはほとんど見られなかった状況となった。ただし、最近は各国とも落ち着きを見せ始めている。
インフレ率は為替に二面性を持って影響する。経済学的には、インフレ率が高い国の通貨は購買力が低下するため価値が下がる傾向がある。しかし同時に、インフレ対策として金利が上がれば、その通貨に資金が集まり価値が上がる可能性もある。
この相反する力のうち、短期的には金利の動きの方が為替に強く影響する傾向がある。これは投資家が実質金利よりも名目金利を重視して投資判断を行うためだ。
Q: 日本のインフレ率の特徴と測定方法の違いは?
日本と米国ではインフレの測定方法が異なる。米国では「PCEコアデフレーター」という指標を重視している。これはGDPの個人消費のデフレーターに相当するもので、食料品とエネルギーを除外したものだ。
一方、日本では消費者物価指数(CPI)が一般的だが、複数の見方がある。「コアコア」と呼ばれる食料とエネルギーを除いた指標も存在するが、あまり注目されていない。この指標で見ると日本のインフレ率は1.5%程度と、全体で見た3%よりもかなり低い。
これは日本のインフレが主に食料品とエネルギー価格の上昇によるものであることを示している。日本銀行は、こうした総合的なインフレ指標を政策判断の材料としている。

Q: 金利差は為替にどう影響するか?
金利差については「名目金利差」と「実質金利差」という2つの見方がある。名目金利は表面上の金利そのもの、実質金利はそこからインフレ率を差し引いたものだ。
経済学的には実質金利差が為替に影響するとされるが、実際の市場では投資家は名目金利を見て取引することが多い。特にFXなど短期的な売買を行う投資家は実質金利をあまり考慮しない傾向がある。
一方、日銀などの政策当局は実質金利の考え方を重視する。現在の日本は先進国の中でもインフレ率が高い状況にあり、政策金利が低いことと相まって実質金利は大きくマイナスとなっている。そのため「多少金利を上げても金融緩和状態は変わらない」という論理が成り立つのだ。
Q: 円安・円高はどちらが日本にとって良いのか?
円安が良いか円高が良いかという議論については、マクロ経済の視点から考える必要がある。
安倍政権・黒田日銀総裁時代は円安が推進されていたが、現在は円安修正の方向に政策が動いている。企業経営者を対象にしたアンケートでは、適正レートは概ね1ドル130円程度とする回答が多い。
しかし、過度な円安(例えば150円など)は日本の対外収支の状況などから見ても好ましくない。一方で、円高も輸出産業などには厳しい影響を与えるため、バランスのとれたレートが望ましい。

Q: 日本の対外収支と為替の関係は?
日本の対外収支と為替の関係は、昔と比べて変化している。かつては貿易収支(輸出入の差額)が為替に大きな影響を与えていたが、現在ではその影響力は低下している。
最近の円安進行時には日本の貿易収支が大きく赤字となったが、その後収支が改善してもドル円相場は高止まりしている。これは貿易以外の要素、特に金融資本の流れが為替に大きな影響を与えていることを示している。
対外収支の中では、直接投資(日本企業の海外企業買収など)による資金流出が対外収支赤字の大きな要因となっている。一方、近年注目されているデジタルサービスの赤字(海外デジタルサービスへの支払い)は、インバウンド観光による黒字と相殺され、全体で見るとそれほど大きくない。
Q: インバウンド需要は今後も続くか?
インバウンド需要については、世界経済の不確実性があるものの、急減する可能性は低いと見られている。
訪日観光客は比較的余裕のある層が多く、多少の経済変動があっても旅行を控える可能性は低い。また、円が多少強くなった場合(例えば1ドル130円程度)でも、日本の物価は国際的に見れば依然として割安であるため、大きな影響はないだろう。
ただし、韓国など特定国の政治状況変化によるリスクはある。韓国は訪日観光客数で最多を占めており、日韓関係の変化によってはインバウンド需要に影響が出る可能性もある。
Q: 2025年の為替はどのように動くか?
2025年の為替展望としては、緩やかに円高方向に進む可能性が高いとの見方が示された。ただし、後半については不確実性が高い。
トランプ政権が大規模な景気刺激策を実施してドル金利が上昇すれば、再び円安方向に振れる可能性もある。一方、FRBの利下げが想定以上に進めば、より円高が進むシナリオも考えられる。
リスク要因としては、円高方向に振れるリスクの方がやや大きいという見方もある。ただし、為替予測が一致しすぎている現状は、想定外の動きが出る危険性も示唆している。

Q: 原油価格は為替にどう影響するか?
原油価格は為替動向を考える上で重要な要素だ。原油価格が下落すれば、以下のような影響が考えられる:
1. アメリカのインフレが落ち着き、FRBの金融政策にも影響を与える可能性がある
2. 日本のエネルギー輸入コストが下がり、貿易収支が改善する方向に働く
これらの要因から、原油価格の下落は円高要因となりうる。ただし、原油価格が極端に下落する(例:1バレル20ドル台)可能性は低く、60ドル程度での推移が予想される。
2025年の為替を見る上では、原油価格の動向も重要な注目ポイントとなるだろう。
Q: 為替の変動幅はどの程度考えるべきか?
為替の変動については、パーセンテージで考えると他の資産と比較して必ずしも大きくないことも理解しておくべきだ。例えば150円から135円への変動は10%程度だが、株式市場では20〜30%の変動も珍しくない。
ただし、最も注意すべきは、株価下落と円高が同時に起こるケースだ。例えば、米国経済の悪化により米国株が下落し、同時に米国の金利も下がることで円高が進むというシナリオでは、海外資産への投資は二重の打撃を受ける可能性がある。
このようなリスクを踏まえつつも、過度に為替変動を恐れる必要はないというのが専門家の見解だ。