PIVOT TALK BUSINESS
米国のYouTube・コネクテッドTV最新事情
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2025年3月5日

急速に視聴者数を伸ばすYouTube。今後、YouTubeはテレビCMのマーケットを食っていくのか?マーケターはテレビCMとYouTubeをどう組み合わせていくべきなのか?テレビCMの効果分析などを行うREVISIOの郡谷康士CEOに最新事情を聞いた。 <ゲスト> 郡谷康士|REVISIO CEO...
アメリカから見えるTV業界の未来 コネクテッドTVが変える視聴習慣と広告戦略
テレビ視聴の形態が大きく変わりつつある。かつては地上波テレビが主流だったが、今やYouTubeやNetflixなどのストリーミングサービスがテレビデバイスで視聴される時代に。特にアメリカではコネクテッドTV(CTV)市場が急拡大し、広告業界にも大きな変化をもたらしている。この動きは日本にも波及するのか?REVISIOの郡谷康士CEOに最新動向を聞いた。
YouTubeが「テレビである」宣言した理由とは?
Q: アメリカでテレビ業界に何が起きているのでしょうか?
YouTubeが最近「YouTube is the new television(YouTubeは新しいテレビである)」と公式に宣言しました。この発表の最大のポイントは、現在YouTubeを視聴する第一のデバイスがスマートフォンではなく、テレビになっているということです。YouTubeはテレビとしての視聴体験の向上に注力し、テレビCM予算を取り込むために広告最適化にも取り組んでいくと表明しています。

Q: アメリカのストリーミングサービスは儲かっているのですか?
実は多くが赤字を抱えています。ディズニーなどの大手メディア企業はテレビとCTVの両方を運営していますが、収益化に苦戦しています。問題の一つはサブスクリプション(定額制)モデルの限界です。視聴者は見たい番組があるときだけサービスに加入し、視聴が終われば解約する傾向があります。そのため、サービス間の加入・解約(チャーン)率が非常に高くなっています。

Q: それに対してどのような対策を取っているのですか?
NetflixやAmazon Primeなどが広告付きプランを導入し始めているのは、新たな収入源を求めてのことです。サブスクリプション収入だけでは競争に勝ち抜けないという判断です。また、アメリカではメディア企業の統合・合併の動きも加速しています。様々なプレイヤーが参入した後、規模の経済が働き、強いプレイヤーに集約される形になっています。
激化するAVOD(広告付き動画配信)競争
Q: 広告付きの無料視聴モデル(AVOD)は成功しているのですか?
AVODモデルは市場で激しい競争が起きています。各社はCPM(1000インプレッション当たりのコスト)など広告単価の最適化を含め、収益を強化する取り組みを強化しています。アメリカではフールー(Hulu)が強いポジションを確立しています。フールーはディズニーグループの傘下にあり、ディズニープラスとは異なるコンテンツ戦略で収益を上げています。
Q: Netflixの広告ビジネスはどうなっていますか?
Netflixは当初マイクロソフトと提携して広告ビジネスを展開していましたが、その後内製化に移行しました。彼らは自社ならではの広告フォーマットを開発しようとしています。例えば、「シティハンター」のシーンでUberEatsが登場するような作品内プロダクトプレイスメントなどの実験も行っています。また、コンテンツの内容と関連性の高い広告配信や、視聴者データを活用した最適化アルゴリズムによる配信など、デジタル広告の手法をテレビデバイスにも適用しています。

アメリカのCTV広告市場の規模と成長性
Q: コネクテッドTV広告市場はどのくらいの規模なのですか?
アメリカの広告市場全体は約900億ドルで、そのうち約1/3の300億ドル(約4.5兆円)がCTV向けです。これは日本の広告費全体(6〜7兆円)に迫る規模で、日本のテレビ広告費(約2兆円)の2倍以上になります。さらに、2030年頃までこの成長は続き、300億ドルから400億ドル、500億ドルへと拡大すると予測されています。将来的には全体の半分近くまでシェアが拡大する可能性もあります。
Q: テレビ局での視聴とコネクテッドTVでの視聴、どちらの価値が高いのですか?
一般的にCTVのほうが高い価値を持っています。テレビは興味があるコンテンツと興味の低いコンテンツが混在した「流し見」になる傾向がありますが、YouTubeやTVerなどCTVでは視聴者が自ら選んだコンテンツを見ているため、注目度が高いのです。これはテレビの中でも高パフォーマンスの時間帯に近いとも言えます。さらに、ターゲティングがしやすく視聴者データも得やすいため、価値が高くなっています。
広告モデルの変化と日米の違い
Q: アメリカと日本のTV広告の違いは何ですか?
日本では多くの企業がまだテレビ広告を重視しており、YouTube等のCTV広告への移行は進んでいません。これはテレビ広告効果への信頼が高かったためです。しかし、視聴習慣の変化に気づき始めた企業も増えており、CTV効果の一度限りの検証ではなく、1〜2年かけてテレビとCTVの最適なバランスを探る長期的な取り組みが増えています。
Q: アメリカの先進企業はテレビとCTVをどう使い分けているのですか?
アメリカの先進企業はテレビとCTVをフラットに扱っています。テレビ局の個別チャンネルとCTVの個別アプリを同列に並べ、各媒体のリーチ効率やビジネスへの貢献度を分析しています。例えば、従来であれば5つのテレビ局にCMを配分していたものが、そこにCTVプラットフォームも加わり、合計10の選択肢から最適な配分を決めるようになっています。アメリカでは元々多数のチャンネルの中で選択していたため、この移行がスムーズだったとも言えます。
テレビ広告とデジタル広告の境界線が消える
Q: テレビ広告の買い方にも変化がありますか?
テレビとデジタルの広告手法が融合しつつあります。従来テレビには「タイム」(特定番組のスポンサーになる)と「スポット」(時間帯等を指定して配信する)という2つの買い方がありましたが、これがデジタルにも広がっています。YouTubeでは基本的に自動配信(スポット的)ですが、特定チャンネルに直接広告を出す(タイム的)アプローチも可能です。
TVerでも番組指定型とインプレッション数指定型があり、NetflixやAmazonプライムでも同様の動きがあります。アメリカでは「アップフロント」と呼ばれる広告契約の場にYouTubeやNetflixも参加し、新シーズンのコンテンツへのスポンサード提案を行うなど、テレビと同じ営業手法を取り入れています。このようにデジタルとテレビの区別がつきにくくなっています。
Q: コネクテッドTVではどのような広告が出ていますか?
現状では、多くの企業が地上波テレビと同じCMをCTVでも使用しています。高コストをかけて制作した質の高いCMをCTVでも活用するのが一般的です。ただし、今後はAI技術の発展により状況が変わる可能性があります。生成AIの進化によりクリエイティブ制作のハードルが下がれば、バリエーション豊かな広告素材が簡単に作れるようになり、デジタルならではのより柔軟な広告展開が増えるでしょう。

コネクテッドTVがもたらす社会的影響
Q: コネクテッドTVの増加は社会にどのような影響を与えるでしょうか?
最大の影響は「社会の共通認識が作りにくくなる」ことです。マスコミュニケーションによって形成されてきた共通の価値観や情報基盤が、個人化された視聴環境によって分断される可能性があります。
アメリカではすでに政治的な分断が激しく、トランプ勝利にも従来のマスメディアよりポッドキャストなどの影響が大きかったという分析もあります。日本では兵庫県知事選がテレビ業界に衝撃を与えた例として挙げられます。
日本ではアメリカほど激しい対立はないものの、今後は「日本として進むべき方向」や「大事にすべき価値観」についての合意形成が難しくなる可能性があります。特に日本では「サイレントマジョリティ」が多く、彼らにとって「何が常識か分からない」状況はストレスになるかもしれません。声の大きな少数派の意見が、あたかも社会全体の意見のように見えてしまうリスクもあります。
この不安定な状況は長期的に続く可能性が高く、それが新しい標準になるでしょう。その中で一人ひとりがどう振る舞っていくかが今後の課題となります。