PIVOT TALK BUSINESS
メガバンク vs. 証券。資産運用ビジネス大競争
(70)
5,173回視聴
2025年2月20日

金利上昇や政策保有株売却などもあり最高益を記録するメガバンク。この勢いは今後も続くのか?さらなる成長のカギを握るのは何か?東洋大学の野崎浩成教授に聞いた。 <ゲスト> 野崎浩成|東洋大学国際学部 教授 1991年、イェール大学経営大学院修了。あさひ銀行、シティグループ証券などを経て、2018年から...
「銀行が変われば日本経済は変わる」—NISA・イデコから資産運用、銀行の未来戦略を考える
資産運用ビジネスの世界では今、大きな変革が起きている。NISAやイデコなどの制度拡充、銀行・証券業界の再編、そして金融機関に求められる新たな役割など、私たちの資産形成を取り巻く環境は大きく変わりつつある。今回は東洋大学の野崎浩成教授に、これからの金融機関の在り方について聞いた。

NISAとイデコ、金融機関はどう変わるべきか
Q: NISAについては、ネット銀行が口座でかなり優位になっていますが、今後の見通しはどうでしょうか?
これからの金融機関にとって鍵となるのは20代などの若年層です。NISAの口座開設ではネット証券が強い傾向がありますが、今後は制度の細かい見直しも予想され、状況が変わる可能性はあります。
一方、イデコ(個人型確定拠出年金)は銀行にもチャンスがあります。イデコや企業型DCでは、運営管理機関として信託銀行や証券会社が関わっていますが、重要なのは年金商品について適切なアドバイスができるかどうかです。
顧客本位の業務を実現するために
Q: 資産運用ビジネスの今後の見通しはどうでしょうか?
資産運用ビジネスには様々なプレイヤーがいますが、日本で強いのは主要金融グループ系の会社です。今後注目すべきは資産運用機関でしょう。ETFを含めると株式投資の約8割をトップ10社が占めている状況で、外国株式運用など、これまで外注していた分野の運用力強化がポイントになります。
販売面では、顧客本位の業務原則が肝心です。いかに客観的で公平な意見を顧客に提供できるかが重要です。アメリカにはIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)がありますが、日本でもより客観性の高いモデルを構築できれば信頼されやすくなります。

Q: 顧客に対して公平なアドバイスをするには、組織的にはどうすればいいのでしょうか?
特に銀行や証券会社では、顧客基盤を握っているのは商業銀行部門です。資産運用会社は収益全体の一部でしかないため、組織内の発言力が弱くなりがちです。しかし金融庁もこの問題を指摘しており、各社がいかにガバナンスを効かせ実効性を高めるかが今後の差別化ポイントになるでしょう。
銀行にとっての若年層の価値
Q: 銀行にとって若い世代は価値がありますか?預金もあまりない世代ですが。
短期的に見れば若年層の金融資産は少ないですが、長期的な視点では非常に重要です。彼らが金融資産を形成していく過程に関わり、信頼関係を築くことが重要です。また、2030年に向けて相続が頻発する時代がやってきます。現在最も個人金融資産を保有しているのは70代後半ですが、その資産は徐々に世代交代していきます。
現在お金を持っている層だけでなく、その下の世代と関係を築くことが将来的に極めて重要な戦略となります。

地域銀行の再編はどう進むか
Q: 業界再編について、中期的に注目している分野はありますか?
銀行業界では、メガバンクは一服感がありますが、地域金融機関ではまだ再編の余地があります。特に地方銀行(第一地方銀行)では再編があまり進んでいないため、今後は都道府県内だけでなく、より広域での再編も考えられます。
Q: 銀行の再編にはどんなメリットがありますか?
コスト削減は大きなメリットの一つです。特に地方銀行には、信金のような中央組織がないため、システム対応やコンプライアンス対応を各行が独自に行わなければなりません。再編によってそれらの負担を軽減できます。
しかし、コスト削減以上に重要なのは、マーケットシェアを高めてプライスリーダーになることです。アメリカの研究では、地域のマーケットシェアを増やすような再編が株価にもポジティブな影響を与えるとされています。都道府県単位ではなく、もう少し広い地域で市場を掌握できるプレイヤーが出てくると、収入面でも効果が期待できます。
証券業界の再編と差別化戦略
Q: 地方銀行以外に再編が進みそうな業界はありますか?
証券業界でも再編が進む可能性があります。リアルの世界とネットの世界がまだ拮抗していますが、今後ネットが優位になると予想されます。そうなると、独自性の強い証券会社だけが生き残るため、再編が進むでしょう。
Q: 「独自性が強い」とはどういう意味ですか?
例えば中小型株に特化したり、外国株式に特化したりするなど、特定分野での専門性を持つことです。また、非上場株式のような新しい分野に注力するのも一つの方向性です。非上場株式市場は特定投資家の範囲が近年拡大しており、大きなポテンシャルがあります。
経済活性化のための銀行経営
Q: 銀行経営がどう変われば日本経済の活性化により役立つでしょうか?
銀行員の思考で最も苦手なのが「デルタの発想」、つまり微分的な考え方です。銀行は過去の業績や現在の財務状況を見て判断し、成長より返済能力を重視します。しかし現在は、お金を借りるだけのモデルではなく、付加価値を求める企業が増えています。無借金企業も増えている中、成長に対してお金や知恵を出す「デルタを追求する」姿勢が、経済活性化と銀行ビジネスを結びつける鍵になるでしょう。
Q: そういう意味では、銀行系ベンチャーキャピタルはうまくいっていないのでは?
これからが本番です。銀行員には心の切り替えが必要です。スタートアップは失敗するのが当然であり、その失敗を恐れず、ダイヤモンドの原石を見つける姿勢が重要です。銀行には潤沢な資金があるので、従来の融資(デット)に加え、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ(PE)を通じた投資(エクイティ)、そして知恵の提供という3つの軸で支援していくべきです。
銀行融資は収益の非対称性があり、企業が成長しても銀行の利益は増えません。一方、エクイティ投資なら企業の成長が銀行の収益にも直結するため、企業と銀行の利害が一致します。実際に100億円単位で導入しようとしている銀行もあります。
外資系PEファンドと競合するのではなく、連携しながら市場を開拓するアプローチも有効です。銀行には資金力がありますから、その強みを活かせます。

グローバルリーダーを目指して
Q: 銀行がPEになるという考え方は面白いですね。他に変わるべき点はありますか?
銀行はPEとして単にエクイティ投資をするだけでなく、大きなプロジェクトを構築する際にベンチャーデットの仕組みを活用し、それを細分化して個人投資家にも還元するモデルも検討できます。
また、スタートアップ業界は現状では小さく見えるかもしれませんが、鶏と卵の関係で、銀行自身が育てていく気概が必要です。日本のユニコーン企業はまだ数社しかありませんが、そこから始めなければ状況は変わりません。
さらに、グローバル展開も重要です。日本の銀行が率先してグローバルな対象を引き込み、インバウンド・アウトバウンド両面でリーダーシップを発揮すべきです。理想を言えば、JPモルガンを追い越すような銀行が出てくることを期待しています。
自分がグローバルトップになるというミッションを掲げ、躍動感のある組織であれば、就職先としても魅力的な業界になるでしょう。