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アシックス、売上高1兆円、利益率20%への道
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2025年2月14日

タクシーという半プライベート空間を舞台に、PIVOT MC陣が企業トップへ独占インタビュー。普段とは違う環境の中で「会社の変革」「新サービスの開始」「新社長誕生」など、経営者の生の声を引き出す。 <ゲスト> 富永 満之|アシックス 社長COO 米カリフォルニア・ポリテクニック州立大学卒。米パデュー...
「M&Aで勝ちパターンを作り、利益率20%を目指す」アシックス富永社長の未来戦略
アシックスのD2C戦略が大きく進化し、特にEコマースは2018年の4%から現在20%まで成長。データ活用と会員制度の充実で顧客理解を深め、ランニングエコシステムを構築。M&Aを活用した成長戦略と利益重視の姿勢で、2030年には1兆円規模を目指す同社のビジョンに迫る。

Q. M&Aを行うとしたら、どのような分野を狙うのか?
ランニングエコシステムの構築を進めており、この分野ではすでにいくつかのM&Aを実施している。レース登録会社やランニングアプリなど、すでに勝ちパターンが見えてきた領域だ。特にレース登録ではナンバーワンになっているが、市場占有率はまだ10%程度なので、タイム・トゥ・マーケットという考え方で積極的に買収を進める可能性がある。次のフェーズでは、サービスやポートフォリオを拡大する検討も行っている。

Q. D2C戦略で見えてきた勝ちパターンとは?
2018年までは卸売が90%を占めていたが、D2C比率を40%まで高めたことで、顧客データの把握が可能になった。「OneASICS」というロイヤルティプログラムを作り、誰がいつ購入したのかが見えるようになった。例えば、東京マラソンの参加者は6ヶ月前から登録するので、トレーニング期間からレース後まで様々な接点を持てる。海外からの参加者には宿泊やレストラン、イベント情報も提供できる。どのような人が購入し、どのようにトレーニングしているか、朝走るのか夜走るのか、どのタイミングで筋肉を鍛えているかなど、詳細な情報が把握できるようになった。

Q. D2C比率はどこまで高めるべきか? 卸売の重要性は今後も残るのか?
全体としては現在のバランスが良いと考えている。例えば鬼塚虎は90%がD2Cだが、ブランディングを自社でコントロールしたいという理由がある。一方、ライフスタイルシューズはマーケットリーチが弱いため、80%が卸売だ。カテゴリーによってバランスを変えている。
靴は比較して選びたいというニーズは今後も存在するし、専門店との関係も重要だ。ランニング専門店やテニス専門店などの存在は非常に価値がある。
鬼塚虎がD2C90%でも成功しているのは、ディスプレイの仕方や世界観を統一できることが大きい。そのことでファンが店舗に足を運んでくれている。
Q. シューズを起点に様々なサービスを展開しているが、今後はどのように拡大していくのか?
マラソン大会ではマッサージサービスやフィニッシャーズビデオの提供など、他では実現できないサービスを展開している。東京マラソンでは4割が海外からの参加者で、富士マラソンでは8割がインバウンドだ。彼らは特別な体験を求めているので、例えば100万円のVIPコースを用意したところ、予想以上の反響があった。
旅行と合わせてテニスやパデルを楽しみたいという需要もある。出張や観光だけでなく、スポーツを組み合わせることで、より楽しい経験を提供できる。そのようなエコシステムを進めていきたいと考えている。

Q. アパレルビジネスにはどう取り組んでいくのか?
アパレル市場は参入障壁が低く、これまであまり収益に貢献できていなかった。以前は「ヘッド・トゥ・トゥ」という考え方で、上から下まで全てアシックス製品で揃える方針だったが、利益が出にくかった。
そこで、得意分野であるランニング、テニス、トレーニングなどに絞り込み、それ以外は縮小した結果、ようやく利益が出るようになってきた。今後は機能性を追求することで勝負していく方針だ。
Q. 利益重視の姿勢を徹底できているのはなぜか?
日本企業は売上を重視しがちだが、それが招く弊害として、売りやすい先に販売したり、ディスカウントやアウトレットで出したりすることでブランド価値が低下してしまう。
そこで全てのKPIを利益率に設定した。各地域に対しても、売上ではなく利益を出すよう求めるようにしたことで、一気に変わった。2026年までに17%の利益率を目指しており、2030年には20%も視野に入れている。
Q. 2030年に1兆円企業を目指す中で、ライバルはどこか?
特にナイキは多くを学んだ相手だ。彼らのデジタル戦略やアプリ、エコシステムの考え方は非常に参考になった。現在ビジネスが厳しい中、今後どう展開していくかは注目している。長年ブランドを築いてきた企業なので、どのように転換するかは自分たちの将来にも関わる可能性がある。
よく言われているのは、ナイキがD2C戦略に注力しすぎて卸売をおろそかにしたことと、イノベーションの停滞だ。トップランナーは常にイノベーションを続けなければならない。
Q. シューズに対する顧客ロイヤルティはどの程度あるのか?
顧客は自分に合わないと感じると、比較的簡単にブランドを変えてしまう。若い世代はトップアスリートへの憧れから選ぶことが多い。サッカー選手やテニス選手が使っているものと同じものを使いたいという気持ちが強い。
シューズはファッション的要素もあるため、常に王者であり続けることは難しい。
Q. 株式持ち合いを解消し、個人投資家向け施策を強化している理由は?
戦略を明確にし、投資家とのコミュニケーションを強化する中で、政策保有株式についての指摘を受けた。そこで思い切って売却し、長期で保有してくれる国内外の投資家に移行した。
また、B2C企業として個人投資家も増やしたいと考えている。正しい評価を得て時価総額を上げるために、戦略をマーケットに伝える努力をしている。株価が一時的に下落した時は不安もあったが、その後回復し、現在は上昇傾向にある。
個人投資家向けには「OneASICS+」を通じて、単なる会員特典だけでなく、運動を継続するためのアドバイスや特別なサービス、株主には戦略的情報やイベントを提供していく。株主優待もデジタル化して充実させている。
Q. 今後のアシックスの成長において最も重要なポイントは?
グローバル成長やデジタル化も重要だが、最も重要なのは「グローバル・インテグレーテッド・エンタープライズ」になることだ。売上の85%が海外という状況になったが、需要予測や生産計画、在庫管理などのレベルはまだ十分ではない。
生産側と販売側がお互いの状況を理解し、グローバルで一体的な運営ができれば非常に強い会社になれる。若い人材も増えており、採用でも人気が高まっている。報酬面でもプロフィットシェアリングを導入し、前年の5倍程度を還元できるようになった。社員も株主と同じ立場になることで、より会社の成長に貢献できると考えている。
