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5年で株価9倍。アシックス、V字回復の次
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2025年2月7日

5年で株価9倍を記録するなど、V字回復を成し遂げたアシックス。グローバル売上高85%を占める急成長の背景に何があるのか?今後のさらなる成長のカギは何か?ナイキ、アディダスとの戦い方などを、富永満之社長に聞いた。 <ゲスト> 富永 満之|アシックス 社長COO 米カリフォルニア・ポリテクニック州立大...
「2020年の赤字から一気に上昇。アシックスの世界戦略で見えた日本企業再生の鍵」
アシックスが劇的な成長を遂げている。2020年に赤字を経験した老舗スポーツメーカーが、わずか数年で売上高を倍増させ、株価は5年前の9倍に迫る勢いだ。この急成長の背景には何があるのか。アシックス社長の富永満之氏に聞いた。

Q. アシックスの売上高が急成長している要因は何ですか?
2020年には赤字まで経験したアシックスだが、今期の予想では売上高が6800億円程度まで回復。2020年に比べると倍以上の規模になっている。この成長の背景には、2018年頃からの大きな戦略転換がある。
従来は本社が物づくりを担当し、各地域の販売会社が販売するという体制だったが、これをプロダクト中心の組織に一気にシフトした。カテゴリーごとにPDCAを回し、戦略を立て直したことが成果につながっている。
ランニングやテニス、ライフスタイルなど、それぞれの商品カテゴリーごとに顧客も販売チャネルも異なる。そこを明確に分けて戦略を立て、一つずつ課題を解決していったのが今の結果に結びついている。

Q. 改革の原動力となった危機感とは?
2000年から2015年頃までは、日本をベースに米国、欧州、中国、オーストラリアなどグローバル成長がうまくいっていた。しかし、デジタル化の進展やチャネルの変化、競合の強化などにより、2020年まで業績は下降傾向が続いた。
象徴的だったのは箱根駅伝での出来事だ。ランニング分野では強みを持っていたアシックスだが、2021年の箱根駅伝では同社のシューズを履く選手がゼロという事態に陥った。当時、ナイキが厚底シューズにカーボンプレートを入れた革新的製品を投入し、「これで早く走れる」と証明された。
「これはもう絶対に変えなければならない」という危機感が社内に充満し、改革を加速させる原動力となった。

Q. グローバル展開で特に成功している地域はどこですか?
現在、アシックスの売上の約85%が海外からのものだ。特に欧州が成長し、米国も伸び始めている。アジアでは特にインドが熱い市場だという。
インドは平均年齢が20代と若く、GDPが一定水準に達すると人々がランニングを始める傾向がある。特に若い女性がランニングを始め、それに男性も続くというパターンが見られる。ムンバイマラソンには6万人が参加し、アシックスのシェアがトップになっている。
アシックスの広田会長は「1人当たりGDPが5000ドル程度になるとランニング市場が始まる」と分析しており、これからインドなどの新興国でさらなる成長余地があると見ている。
Q. グローバル企業としての経営体制はどう変わりましたか?
社員9000人のうち約6割が海外人材となり、本社でも2割程度が外国人になっている。今年からは各地域の責任者が社長直属となり、コミュニケーションを増やす体制に変更した。
また、日本から海外駐在員を送るだけでなく、海外のメンバーにもグローバルな役割を任せている。例えば、マーケティングやITといった機能のリーダーは必ずしも日本にいる必要はなく、現地でグローバルな役割を担えるようにしている。
さらに、経営会議もグローバル案件については英語で行うようになった。このような人材のミックスを進めることで、グローバルな視点を強化している。
Q. ブランド戦略でどのような変化がありましたか?
ランニング分野では「Cプロジェクト」を立ち上げ、初心に戻ってトップランナーをサポートする戦略に転換した。社長直属のチームを作り、予算を集中投下。厚底シューズの開発にも注力した結果、シカゴマラソンで好記録を達成し、箱根駅伝でも2位まで回復した。
ライフスタイル分野では、単にランニングシューズの機能を落としたカジュアルバージョンを作るのではなく、若者向けに特化した戦略を展開。外部デザイナーとのコラボレーションを積極的に行い、販売チャネルもスポーツ店から若者が集まるスニーカー専門店へと変更した。
オニツカタイガーも特にアジアで人気が高く、ミラノのファッションショーなどでトレンドを作り、それをアジアに伝えるという戦略が奏功している。

Q. 競合と戦って成長するためのポイントは何だと考えていますか?
ナイキ(時価総額17兆円)、アディダス(7.4兆円)、オン(3.1兆円)などの競合と戦うために最も重要なのはブランド力だと富永氏は語る。
ランニングシューズの機能性や安全性、価格など基本的な品質を確保しつつ、テニスなど他の分野でも世界一を目指す。例えば、テニスのグランドスラム大会の男子シングルスでは、アシックスのシューズが最も多く使用されている。契約選手は11人だが、実際には約30人の選手が自主的にアシックスの製品を選んでいる。
「日本製の品質と匠の技」は海外でも高く評価されており、これにマーケティングやデジタル戦略を組み合わせることで、大手競合に対しても勝機があると考えている。
Q. 2030年に売上高1兆円を目指す中で、どのような新分野を開拓していますか?
既存のランニングやテニスを伸ばすだけでなく、新たな分野も開拓している。例えば、安全靴(セーフティシューズ)にスポーツの要素を取り入れ、軽量化やファッション性を高めた製品を展開。日本ではすでに高いシェアを獲得している。
また、スケートボードも注力分野だ。かつては若者の娯楽だったが、東京オリンピック以降、競技スポーツとして認知が広がり、専用シューズへの需要も高まっている。アシックスはパリオリンピックで銀メダリストを輩出するなど、この分野でも成果を上げている。
一方で、学校体育用品や野球のアクセサリーなど、ブランド力を発揮できない分野からは撤退。選択と集中を進めている。
「私たちの目標は、ブランディングがしっかり出せて、機能性を発揮でき、結果として利益が取れる分野に集中することです」と富永氏は語る。