PIVOT TALK BUSINESS
フジテレビの今後。トップの首を切れるか?テレビCMモデルは終わるのか?
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2025年2月2日

幹部の辞任、スポンサー企業の広告差し止めなどに揺れるフジテレビ。一連のフジテレビ問題の本質とは何か?フジテレビに必要な改革とは何か?今後、フジテレビとメディアのビジネスにどんな影響があるのか?東京科学大学の柳瀬博一教授と、経営共創基盤の塩野誠・共同経営者に聞いた。 <ゲスト> 柳瀬博一|東京科学大...
メディアの未来を問う:コーポレートガバナンスとテレビ局の改革
多くの視聴者に支持されてきた日本のテレビメディアが岐路に立っている。広告収入の減少、インターネットメディアとの競争、そして企業統治の問題など、課題は山積みだ。テレビ局、特にフジテレビのあり方を通して、日本のメディア業界全体の課題と将来について専門家が語る内容をQ&A形式でまとめた。
Q. フジテレビなど日本のメディア企業における経営上の根本的な問題点は何か?
コーポレートガバナンスの観点から見ると、最大の問題は「トップを切れない組織構造」にある。本来、企業の統治機構では取締役が執行部を監督し、株主の代理として経営を監視する役割を担う。しかし多くの日本のメディア企業では、長年同じ人物が影響力を持ち続け、適切な評価や監視の機能が働いていない。
特に顕著な例として、取締役相談役という肩書きで長く影響力を持ってきた人物の存在がある。こうした状況では、その人物に目をかけられた人材が増え続け、社内から異議が上がりにくくなる。いわゆる「密室政治」が形成されやすい環境だ。
これを防ぐには、指名委員会など経営トップを評価し続ける仕組みが必要だが、フジテレビを含む多くの企業ではそれが機能していない。

Q. 問題のある経営者を退任させるためにはどのような仕組みが必要か?
上場企業においては、株主が取締役に対して不信任を示すことが重要な手段となる。例えば、フジテレビの場合、取締役相談役を退任させるには株主からの圧力が必要となる。
また、組織としては指名委員会等設置会社に移行するなど、トップを切れる体制を整備することが有効だ。ただし、これまでのフジテレビでは、取締役相談役という形で影響力を保持し、自分に従順な人材を増やし続けることで社内から異議が上がりにくい状況が作られてきた。
重要なのは、個人が辞めるという話ではなく、特定の個人が過度な影響力を持つような構造自体を改革することだ。人は年齢を重ね変わっていくものなので、個人ではなく仕組みで対応する必要がある。

Q. テレビ局のコーポレートガバナンスは現状どのレベルにあるのか?
現在の上場企業としてのスタンダードから見れば、フジテレビのような規模と影響力を持つ企業、特に規制業種と考えられる放送業では、指名委員会等設置会社に移行してトップを切れる体制にすることが望ましい。
長期政権自体が問題なのではなく、業績が悪い中で長く同じ人物が権力を持ち続けることが問題だ。仮に優秀な経営者であれば、ウォーレン・バフェットのように長く経営を任せることもある。上場企業としては結局は数字(業績)が全てであり、それを達成できているかどうかが重要だ。
また、メディア企業特有の問題として、「公共性」と「商業性」の使い分けがある。資本市場から何か指摘されると「メディアとしての公共性」を盾にし、メディアの役割を問われると「我々も商売だ」と主張する二面性が見られる。
Q. フェイクニュースが問題となる中、中立的で信頼できるメディアはどうあるべきか?
最近のフジテレビの記者会見は、日本のメディアの問題点を露呈した。第一に、取材する側のメディアが誰一人としてオリジナルの取材に基づく質問をしなかった。信頼できるニュースとは、自分で取材し、「これは私がちゃんと取材した」と言えるものであるべきだ。
第二に、記者会見の構造自体に問題があった。10時間半という長時間の会見だったが、会見側にも質問する側にも女性がほとんどいなかった。テレビのコンテンツは半分以上が女性向けであり、視聴者も女性が多いにもかかわらず、意思決定層に女性がいないという矛盾がある。
記者会見を夕方から夜遅くまで行うという配慮のなさも、子育てや家事を担う人々への考慮が欠けていることを示している。これは「子育てを自分でしたことのないおじさんの空気」がまだ残っている象徴だ。
Q. 上場企業としてのテレビ局と独立性のあるメディアという二面性をどう考えるべきか?
上場企業として株式市場に晒されることで透明性が高まる一方、広告収入に左右されビジネスの影響を受けやすくなる。逆に「独立性」を強調すると閉鎖的になり、情報公開が少なくなるというジレンマがある。
この点に関して、最近のフジテレビの問題では社外取締役が機能した面もある。社外取締役が「このまま行くと自分の責任問題になる」と臨時取締役会の開催を申し入れたことで、ある程度の歯止めがかかった。これは外部の目があることの重要性を示している。
今後のメディア企業には、コーポレートガバナンスの構造や社外取締役の配置などをより透明に公開していくことが求められる。また、「中立的なメディアを目指す」といった経営方針を明確にし、それを株主に説明(エクスプレイン)していくアプローチも考えられる。
Q. テレビ局の広告収入が減少する中、今後のビジネスモデルはどうなるか?
現在、フジテレビの広告が事実上停止している状況は、大規模な「社会実験」となっている。1〜3月で約200億円の損失があると言われるが、広告主は「この広告費を出さなくても、セールスやブランディングにさほど影響がない」ことに気づきつつある。
コロナ禍で私たちが「通勤や対面会議が必ずしも必要ない」と気づいたように、この「実験」は広告主のテレビ離れを加速させる可能性がある。資生堂などの広告主大手は、すでにテレビCMに頼らない方向へと舵を切り始めている。
一方で、テレビメディアには未だ強みがある。それは「リーチの広さ」と「人材育成力」だ。特に地方と高齢者層に対するリーチは強く、この層をターゲットとした戦略的な番組作りを進めれば、広告モデルは今後も成立する可能性がある。
また、テレビ局は優れた人材を育成する能力を持っており、日本のWeb系メディアの多くの人材が元々テレビ局や新聞社の出身であることからも、その強みは明らかだ。
Q. フジテレビを含むテレビ局の今後の展望はどうなるか?
現状では、スポンサーが広告出稿を再開するきっかけが見当たらない。第三者委員会の報告、適切な対処、再発防止のためのコーポレートガバナンス改革、経営陣の刷新などが最低限必要だろう。
しかし、仮に広告主が「テレビCMなしでも問題ない」と判断すれば、状況は一変する。また、フジテレビが値下げに踏み切れば、テレビ広告市場全体が値下げ圧力にさらされる可能性もある。
放送と通信の垣根が曖昧になる中、法律がテクノロジーの進化に追いついていない問題もある。TVer(ティーバー)のような配信サービスの急成長は、従来の「放送」の概念を変えつつある。
今後は、地方や高齢者層に焦点を当てた戦略が重要になる。BS放送やWEBニュースなど、すでに一定の成果を上げている分野を強化し、若年層には動画配信と組み合わせたアプローチが考えられる。
テレビ局の強みである「ニュース報道力」を活かした展開も鍵となるだろう。学生を含む若年層もニュースに関心を持っており、信頼性の高い報道を提供することで、新たな視聴者層を獲得できる可能性がある。