TIME IS
ドイツ人のすごい働き方・休み方/日本人と比べて生産性1.5倍、休暇3倍【西村栄基】
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2025年1月31日

多忙なビジネスパーソンへ、圧倒的な成果を上げている著名人が時間術のヒントを提供する「TIME IS」。今回は、GDPで日本を抜いたドイツ人のすごい働き方・休み方をドイツ式ライフスタイルコーチの西村栄基さんに聞く。 <ゲスト> 西村栄基 ドイツ式ライフスタイルコーチ <参考書籍> 『ドイツ人のすご...
「働くために休む日本人、休むために働くドイツ人」
この言葉がドイツと日本の働き方の違いを端的に表している。ドイツでは自分の時間を最も大切にし、労働時間内で仕事を完結させることを重視する。そして2024年、ドイツは日本を抜いて世界GDP第3位となった。なぜドイツ人は効率的に働きながら成果を上げられるのか。ドイツ式ライフスタイルコーチの西村栄基氏に聞いた。

Q. ドイツ人の働き方を一言で表すと何ですか?
個人の時間を重視し、労働時間内で仕事を完結させることだ。目的達成のためのあらゆる無駄を排除する意識が浸透している。そのための仕組みも構築されているのが特徴だ。
Q. 日本人とドイツ人の働き方に対する考え方の違いは何ですか?
日本人は自分を犠牲にしてでも与えられた仕事を全うする傾向がある。それに対してドイツ人は自分の時間を最も大切にするというメンタリティを持っている。同じ勤勉でも根本が全く異なる。労働観自体が違うのだ。
Q. 日本人が驚くようなドイツ人の働き方や労働観の具体的な事例はありますか?
例えばドイツの駅には改札がない。日本の駅には当然改札があるが、この自動改札を設置して維持するにはコストがかかる。そして通勤ラッシュ時に渋滞が起こる原因にもなる。ドイツでは改札をなくすことで効率化を図っている。無賃乗車を防ぐために抜き打ちで係員がチェックに入り、チケットがない場合は高額の罰金が課せられる。
もう一つの例は閉店時間の考え方だ。例えば18時閉店のパン屋があるとする。そのパン屋は18時ぴったりに閉店するため、17時40分あたりから店の片付けと清掃を行う。閉店5分前にはレジを閉め、18時ぴったりに閉店する。
Q. そういう働き方でもドイツ人は成果を上げているのですか?
2024年に発表された世界GDPランキングではドイツは日本を抜いて世界第3位になった。1位はアメリカ、2位は中国だ。また日本と比べて1.5倍高い労働生産性を実現している。さらに日本より年間266時間短い労働時間にもかかわらず、40%も多い平均賃金を実現している。
Q. ドイツ人の典型的な1日の働き方を教えてください
ドイツ人の朝は早い。朝6時に起き、7時前に出勤する人も多い。午後3時には1日の業務を終える人もいる。会社に着くと15分ほどのカフェタイムで職場の人とダンラタイムを持つ。私的な話から始まり、徐々に仕事の話に移っていくのがドイツ流のスタイルだ。
その後、午前中は集中力が上がるゴールデンタイムとして自席で仕事をこなす。ランチの後は散歩で脳をリフレッシュする。空気の質を重視しているため、頻繁に窓を開けて新鮮な空気を職場に取り込む。

帰宅時間が近づくと自分のデスクの片付けが始まる。ドイツの職場のもう一つの特徴だが、帰る時には机の上には全く何も乗っていない状態になる。17時には全員がいなくなる。ドイツ人は帰る時に「ファイヤー・アーベント」と言う。これはパーティーの夕方という意味がある。

17時以降は家族や自分の時間に使える。週の平均労働時間は38.5時間から多くても40時間で、残業は一切行わない。
Q. その日にやるべきタスクを時間内にきちんと終わらせるための仕事術は何かありますか?
ドイツ人が毎日欠かさず取る2種類のメモについて紹介する。まず退社時には帰宅前のメモを書き出す。これは翌日に行うべきタスクのリストになる。そして必要な資料やツールもあらかじめ準備しておく。
また翌朝は「朝の15分ロードマップ」を書き出す。これは前日に書き出したタスクのリストを重要度と緊急度も考慮してスケジュールに組み込んでいくものだ。これによって朝のスタートダッシュができる。
Q. 片付けも仕事術の1つなのですか?
ドイツ人は「整理整頓」という考えを持っている。その習慣付けのために子供の頃から親に仕付けられる。なぜドイツ人がこれほど整理整頓を重要視するかというと、探し物をするための無駄な時間を削減するという意味がある。また、これにより集中力を高め、ストレスを減らすという効果もある。
Q. ドイツ流の片付け法を詳しく教えてください
ドイツ流片付けの3原則を紹介する。この原則は非常にシンプルだ。物を置く場所を決め、使ったら元の場所に戻し、物を増やさず増えたら捨てるということだ。
1つ目は「ホームポジションの原則」。これは物の住所を決めて使ったら必ず戻すということ。2つ目は「スリムアップの原則」。定期的に持ち物を見直し、最低限のもの以外は整理する。3つ目は「アップデートの原則」。もし物を買ったら同じ種類の用途のものを手放すということだ。

Q. 会議は多くの時間を取られます。ドイツ人はどのように会議をしていますか?
まず無駄な会議を減らして時間を作る。基本的に会議に参加するのは必要最低限な人たちだけだ。会議に出て発言しない人はその会議には不要とみなされる。また会議中に議事録が仕上がるというメソッドもある。このために会議前にあらかじめ議事録のテンプレートを作っておくことが習慣化されている。
会議自体に参加しないというスタンスをとることもできる。もし参加している会議に疑問を持ったら、次の3つの質問を自分に投げかけてみるとよい:
1. この会議のアジェンダは意思決定、報告、情報共有のいずれか?
2. 意思決定なのであれば、それは自分にどのような価値が提供できるのか?
3. 価値を提供できたとして、発言の機会はあり、意思決定に影響するのか?
さらに定例会議の見直しも行われる。参加者のリストを見直したり、定例会議を開催する頻度を週1回から月1回にするといったことだ。
Q. ドイツ人は休暇をどのように取りますか?
ドイツ人は新年が明けたら今年はいつ休むのかの年間の休暇計画を立てる習慣がある。ドイツでは30日間の有給休暇が与えられるのが一般的だ。つまり30日間仕事を入れない日を作ってしまう。夏休みなど大型連休の場合には3週間連続で休暇を取る人もいる。
一方、多くの日本人は仕事の進捗具合を見て「ここなら休みを入れられるかも」となんとか休暇をひねり出す傾向にある。このようにドイツ人と日本人では休暇の取り方が大きく異なる。
ドイツ人は休暇と一緒に目標も決める。仕事ではどのような成果を達成したいのか、また休暇を含めた家族との時間、自分の趣味、健康、自己投資などに費やす時間など人生全般について考える。これによって1年を生きる意味ができる。
長い休暇ではドイツ人は「空っぽになること」に注力する。基本的に何もしないということだ。言い方を変えるとドイツ流マインドフルネスを実践しているとも言える。これによりリセットボタン的に頭の中がクリアになり、職場に戻った後の集中力が増す。職場の人は休暇中の人への連絡を控えることで、休暇中の人は完全に仕事のことを忘れることができる。
Q. 日本人とドイツ人の休暇に対する考え方の違いは何ですか?
日本人とドイツ人の休暇に対する考え方の根本的な違いを表すフレーズがある。「働くために休む日本人、休むために働くドイツ人」だ。日本では働くことが主で、ドイツでは家族と過ごしたりリフレッシュする休みが主であることが大きな違いだ。
Q. ドイツ式ライフスタイルを日本人に広めるにあたって、何に注意すべきですか?
まずやってはいけないことは、「ドイツではこうだから」ということで、ドイツ式をそのまま日本に持ち込もうとすることだ。ドイツと日本の職場環境は大きく異なるので、ドイツ式をそのまま使うことはできない。
やるべきことはドイツ式の良いところの要素を抽出し、日本の職場に合わせた活用法を工夫することだ。日本では自分の役割を超えてチームでの助け合いの精神、「和の心」が自然に宿っているところが素晴らしい点だ。上司からの命令や同僚からの依頼がなくとも空気を察して柔軟に業務をこなすことができる。
私が提唱しているのはドイツ式と日本式のハイブリッドなワークスタイルだ。例えば「自発的KY」がある。これは空気は読めるがあえて読まないという選択をすることだ。空気を読みつつも変化が必要な場面ではあえて読まずに自分の信念や価値観に基づいて行動できる人のことを言う。
Q. 2025年こそ自分の時間を大切にしたいと考えているビジネスパーソンにメッセージをお願いします
自らの強みを生かすことにフォーカスしてほしい。そのために自分のことをより深く理解することが必要だ。他人や環境を変えることは難しくとも、自分を理解し、自らの行動を変えることはできるはず。周囲に流される前に自分は本当に何をしたいのかを意識し、信念に基づいて行動してほしい。それが自分の時間を取り戻すことにつながるはずだ。