MONEY SKILL SET EXTRA
日本企業の大問題【井村俊哉×河北博光】
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2025年1月28日

株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを一流のプロの講義を受けて学ぶMONEY SKILL SETの応用編。日本企業の課題とポテンシャルを井村俊哉と河北博光が真剣対談 <ゲスト> 井村俊哉(個人投資家) https://x.com/imuvill 河北博光(根津アジア・キャピタル・リミ...
「キャッシュを貯めるだけでは日本企業は成長できない」〜投資のプロが語る日本企業の課題とポテンシャル
日本株のプロたちが警鐘を鳴らす「キャッシュを溜め込むだけ」の経営とは?解決策は従業員持株会の拡充やROICの活用にあり?


Q. 日本企業の最大の課題は何ですか?
日本企業の最大の課題は、CFOが明確な戦略を示せていないことです。株主還元は近年増加していますが、どれだけ還元するのかの説明が不十分です。特に懸念されるのは、設備投資や研究開発への投資が十分に行われているかという点です。これらが適切に行われなければ、投資家は企業価値を評価しにくくなります。
この問題の根本は経営層にあります。会社自体に問題があるのではなく、意思決定を行う経営陣の意識が足りないのです。特に資本コストや資本市場に対する認識が不足しています。

Q. なぜ日本企業はキャッシュを貯め込む傾向があるのですか?
財務省のデータを分析すると、日本企業の売上高や利益は成長していますが、1990年代から人件費はほとんど変わっていません。設備投資も1990年のピークを超えられていません。一方で現金・預金は急増しており、企業は利益を上げても大きな還元もせず、設備投資もせず、従業員への分配も行わず、ただ付加価値を生まない現金を溜め込んでいるのが現状です。
これが日本企業の本質的な問題です。企業が生み出した付加価値を社会に還元せず、蓄積するだけになっています。

Q. ROICとROEの違いは何ですか?なぜ重要なのでしょうか?
ROEは自己資本利益率で、自分の持っている資本から生まれる利益を示す指標です。一方、ROICは投下資本利益率で、資金調達の源泉である自己資本と借入金の両方を含めた投下資本に対する利益を表します。これは企業の実力をより正確に反映する指標と言えます。
ただし、ROICにも問題があります。例えば、減価償却が進むと投下資本が減少するため、何も変わっていなくてもROICが上昇しているように見えることがあります。これにより設備投資を抑制する傾向が生まれる可能性があります。
ROICを向上させる正しい方法は、ROICの高いビジネスへ移行すること、あるいは在庫や売掛金などのワーキングキャピタルを効率化することです。最近はこれらに取り組む日本企業も増えていますが、まだ売上や利益だけを追求しながらROICを語る企業も多く、設備投資を抑えることでROICを改善しているケースが見受けられます。

Q. 日本企業が競争力を向上させるためには何が必要ですか?
まず、非事業性資産をバランスシートから除去することが効果的です。例えば、多くの日本企業は事業に必要のないキャッシュや不動産を保有しています。これらを除くだけでROICは向上します。
次に、本業以外の低収益事業を切り離すことです。企業が本業とは関係のない低いROICの事業を行っている場合、それらを専門企業に譲渡し、本業に集中することで全体のROICを上げることができます。
また、従業員のオーナーシップを高めることも重要です。従業員持株会の奨励金を増額したり、ストックオプションを積極的に付与したりすることで、従業員が会社の株価上昇に関心を持ち、モチベーションが高まります。
Q. 従業員持株制度をなぜ拡充すべきなのですか?
従業員に株式を持たせることで、企業価値向上と従業員の利益を連動させる効果があります。台湾企業などはこの仕組みを積極的に採用しており、従業員がオーナーシップを持つことで、人件費を抑えながらもモチベーションを高めることができます。
具体的には、持株会の奨励金を現在の5〜10%から100%に引き上げる企業も出てきています。さらに、TSR(株主総利回り)に連動した株式報酬制度を導入することで、企業価値の向上に応じた報酬を提供する仕組みも効果的です。
これは投資家からも求められていることで、企業側とアクティビスト投資家の目線が一致する数少ないポイントです。
Q. 中国企業の台頭は日本企業にどのような影響を与えていますか?
中国メーカーの販売比率が特に2024年に入って急激に上昇しています。例えば、中国の自動車市場では現在3台に2台が中国製の車となっています。
BYDの決算を見ると、テスラよりも販売台数が多く、利益率も高い状況です。さらに研究開発費率もテスラより高く、営業利益率もテスラを上回っています。中国企業の猛烈なキャッチアップは日本企業にとって大きな脅威となっています。
Q. 日本企業が再び成長するためには具体的に何をすべきですか?
「3方よし」を本当に実現するためには、ROEを向上させる設備投資を行い、それを支える人的資源への投資を強化し、社会の循環につながる還元も拡充することが必要です。
キャッシュを貯め込むことには大きなリスクもあります。過剰なキャッシュは、企業がROEを低下させるような価値破壊的な投資を突如始めるリスクを高めます。経営者の影響力拡大のインセンティブから、採算の取れない投資やM&Aを実施する可能性があるのです。
したがって、企業は自社だけでなく社会全体を考慮した経営判断を行い、効率的な資本配分とキャッシュの有効活用を進めるべきです。それが日本企業の再成長と日本経済の活性化につながります。