PIVOT TALK BUSINESS
日本の文化的価値をさらに高める方法
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2025年1月13日

アメリカにおいて、漫画・アニメなどのポップカルチャーに加えて、日本庭園などの伝統文化への関心も高まっている。なぜ今、日本文化が人気なのか。ポートランドで日本庭園を運営する中西玲人氏と戦略デザイナーの佐宗邦威氏に聞いた。
第三の道を求めるアメリカ人と日本文化の可能性
アメリカのポートランドで日本庭園を運営する中西玲人氏と戦略デザイナーの佐宗邦威氏による対談から、海外における日本文化の価値と可能性について探ります。日本庭園に3500円も払うアメリカ人たち、彼らが日本文化に見出す「第三の道」とは何か、そして日本人自身が気づいていない文化的資産をどう活用すべきかを考察します。


Q. なぜアメリカ社会で日本庭園のような日本的なものが受け入れられているのでしょうか?
アメリカ社会の現状を見ると、大都市文化が牽引してきたLGBTQやダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンに代表される価値観と、それに反発するグループとの対立が起きています。多くの人々は「こちらかあちらか」という二者択一を強いられることに疲れ、第三の道を模索しています。
このような社会的背景の中で、日本が提示する自然との付き合い方や、リスペクトの関係、コミュニティとの関わり方に対して、多くのアメリカ人が期待を寄せています。必ずしも全員が意識的に「第三の道を求めて日本庭園に行く」わけではありませんが、潜在意識のレベルでは、二項対立ではない何かを日本文化に見出しているのです。
多くの人は静寂の空間を求めて来園しますが、その根底には、ノイズに満ち溢れた社会や「どちらかを選べ」というプレッシャーからの逃避路として、日本が機能しているという側面があります。

Q. ヨーロッパでも日本文化が注目されているのはなぜですか?
ヨーロッパでも、植民地主義や西洋化の考え方に対する反省として、オルタナティブな選択肢としての日本文化が注目されています。西洋的なものの行き詰まりがある中で、一つの選択肢として日本文化が現れてきているのです。
これは必然の流れなのか、それとも日本が提供できるものが少なくなり、本質部分が見えてきたからなのかは難しい問いです。バブル期には安全保障や経済成長の研究が多かった一方、近年では歴史や文化人類学など、日本のソフト面を掘り下げる研究が増えています。
ユダヤ教やキリスト教をベースとした価値観の行き詰まりに対して、日本がソフトランディングの方法を提供できるのではないかと考える研究者も多いようです。米中緊張の背景もあり、アジアの中でも比較的付き合いやすい日本文化への関心が高まっていると言えるでしょう。

Q. 日本人は自国の文化的資産をどのように活用すべきでしょうか?
日本人が無意識に持っている文化的資産を活用するには、まず「言語化・ナラティブ化」が重要です。なぜそうなったのか、どういう意味があるのかを言語化しながら考える習慣は、義務教育ではあまり教わりません。
例えば、浜離宮や六義園に行くときも、300円という入場料で済んでしまいますが、その価格設定の理由を考えることで、日本独自の価値観に気づくことができます。自分なりに言語化し、ナラティブとして人に説明できるようになることが、文化に携わる人間として大切です。
さらに、日本人は古いものを残す習性があります。「もったいない」という意識かもしれませんが、結果として日本には何千年も前から伝わってきたものが中国や朝鮮半島と比べても圧倒的に多く残されています。これは紙や木簡など、本来残りにくい素材を丁寧に保存してきた結果でもあります。
Q. 文化的価値と経済的価値を両立させるにはどうしたらいいですか?
文化的価値と経済的価値を両立させるには、3500円のような価格に対して、それに見合う価値を提供することが重要です。例えば、3500円のうち1500円は職人の技術継承のために必要なお金、残りの2000円は素晴らしい空間で飲み物を楽しむ価値、さらにワークショップなどの体験を通じて全ての要素が一つの体験につながる瞬間を提供することで、3500円分の価値を実感してもらうことができます。
300円で入れる日本庭園が本当に300円の価値しかないのか、なぜその価格になっているのかを考えることも、価値を再認識する上で重要です。インバウンド観光客が増える中で、自分たちの持つ文化の本質的価値を考え直す機会が今まさに訪れています。
Q. 中西さんは今後、どのような活動を目指していますか?
私たちが目指しているのは「三味一体」の実現です。一つ目は、ランドスケープ(庭園)と建築と文化(芸術・美術)の三味一体です。これらはもともと一体のものでしたが、現在はバラバラに売られている状態を、アメリカから日本に再認識させたいと考えています。
二つ目の三味一体は、実務者レベル、政策、学術(アカデミア)の連携です。文化交流を実践する人たち、それを可能にする政策、そしてそれを正当化する学術研究がバランスよく機能する状態を作ることがジャパンインスティテュートの役割だと考えています。
また、これからの展望として、地方からの自立的な発信(サブナショナル)をサポートすること、日本文化の言語化を進めること、そして海外からの日本文化への直接投資が容易になる制度づくりを目指しています。特に海外からの寄付金が自国でも税控除の対象となるような仕組みができれば、日本の伝統文化や職人に対する支援が大きく広がる可能性があります。