超予測
【2025年超予測:規制改革(後編)】国と地方の二重行政解消で、大幅コスト削減
(41)
4,541回視聴
2025年1月8日

103万円の壁に議論が集中した2024年の政策論争。2025年に注目すべき規制改革は何か?自民党・衆議院議員で環境副大臣を務める小林史明氏に聞いた。 <ゲスト> 中島 達|三井住友フィナンシャルグループ 社長 1986年 住友銀行(現・三井住友銀行)入行。 2017年 三井住友フィナンシャルグルー...
「地方改革で数兆円削減」自民党・小林史明副大臣が語る2025年の規制改革
国と地方自治体の構造改革に焦点を当て、行政サービスのデジタル化や効率化を進めることで、「数兆円規模のコスト削減が可能」と語る小林史明環境副大臣。コンテンツ産業の海外展開による経済成長戦略にも言及し、日本の輸出産業としての可能性を指摘します。
Q. 規制改革の2025年注目点は何ですか?
国と地方の構造改革が重要だと考えています。規制というと業界の法律が多いですが、最も大きな規制は国と都道府県と市町村の権限をどう整理するかという点です。例えば渋谷区で許可が取れても港区では取れない、保育所入所手続きの書類が自治体ごとに異なるなど様々な問題が発生しています。
人口減少時代には同じような仕事は統合し、ルールも共通化すべきです。例えば大型蓄電池の設置について、ある町では3m間隔で良いが別の町では6m必要というような解釈の違いが生じています。必要なものは国や都道府県で共通化していくことが重要です。

Q. 具体的にどのような分野の改革が必要ですか?
最も象徴的なのは上下水道です。人口減少が続くと、2050〜60年頃には水道料金が2.6倍になるという予測があります。現在、浄水道は1300の事業体が運営していますが、これを電力事業並みの10程度に集約できれば、年間数千億円のコスト削減が可能になります。
例えば水漏れをAIで予測するスタートアップ企業も、現状では1300の事業体に個別に営業する必要がありますが、事業体が集約されれば発注ロットが大きくなり効率も良くなります。そうした事業が成長すれば海外展開も容易になります。
水道・下水道以外にも、国民健康保険、消防、警察など、広域化すべき分野は多くあります。全部実施すれば数兆円、あるいはもっと大きな財政削減効果が期待できます。

Q. 行政サービスの窓口改革についてはどう考えていますか?
行政サービスの窓口も、1741の自治体ごとに設けるのではなく、国が一つのコールセンターで受け付け、必要に応じて自治体に情報共有する形が望ましいです。これは民間の金融機関が当たり前に行っているサービスです。
千葉県では先行して子育て関連の問い合わせを県の窓口で一括受付するモデルケースが始まっています。これが全国に広がれば、どんな行政サービスでもチャットやコールセンターで問い合わせができ、そのまま手続きが完了する形に変わるでしょう。
政府の仕事はインフラ整備です。個別の事業に補助金を付けるよりも、誰もが公平に利用できるインフラサービスを向上させ、民間やNPOが事業しやすい環境を作ることが本来の役割だと考えています。

Q. こうした改革を阻む障壁は何ですか?
最大の障壁は固定観念です。現場に仕事があった方が良いという「地方分権」の概念が強く染み付いています。ただ、現場の自治体では人手不足で限界という声が上がっており、変革のチャンスが来ています。
平井デジタル大臣のもとでデジタル行財政改革会議が始まっており、上下水道の統合については今年6〜8月頃に大きな方針が出る見込みです。上下水道事業は昨年から国土交通省に一本化されたので、計画的に進められると思います。
Q. これらの改革で削減された財源はどう活用されますか?
削減された財源は減税や社会保険料の抑制に回すことが可能です。そのためには二つの道を同時に進む必要があります。一つは人口減少下でも成長する社会を作ること、もう一つはインフラをスマート化してコストを下げながらサービスを向上させることです。
デジタル化は必須ですが、行政のあり方そのものを組み替えていくことが重要です。このような改革を進めることで継続的に財源を生み出し、減税を実現できると考えています。
Q. コスト削減に民間のノウハウは活用できますか?
大いに活用できます。行政窓口の一本化などは、メガバンクの経験者のノウハウが生きる分野です。また、行政内でのデータ入力や問い合わせ対応などは民間へのアウトソーシング(BPO)が可能で、集約化によってコスト削減できます。
現在、霞が関ではリボルビングドア方式で民間との人材交流が増えていますが、今後は市町村や都道府県レベルでの人材交流が重要になるでしょう。
Q. 日本が成長するための規制改革として、海外展開の面ではどのような取り組みが必要ですか?
世界の成長を取り込むことが重要です。日本は2050年に人口が1億人に減少しますが、世界人口は100億人に増加します。日本からの輸出を強化すべきで、特に注目すべきは「コンテンツ産業」です。
現状、漫画家や映像制作会社が作品を作り、それをテレビ局や編集者に持ち込む際、IPの権利や対価が適正に分配されているか疑問があります。また、海外展開する際にはNetflixなどのプラットフォームを利用する必要がありますが、視聴データが提供されないなどの問題があります。
人材面では、例えば有名なヨーギアニメーション学院は学校法人ではなく民間サービスで、クリエイター向けのカリキュラムは充実していますが、それをビジネス化する人材の育成は不足しています。ハリウッドではイエール大学のMBAなど、体系的な人材育成が行われています。

Q. これらの課題解決に向けてどのような対策が進んでいますか?
まず、公正取引委員会がテレビ局や芸能事務所に対して契約の適正化を指導し、クリエイターに適正な報酬が支払われるようにしています。制作面では生成AIを活用することで、翻訳に要する時間を大幅に短縮し、正規版の迅速な海外配信が可能になります。
人材育成では、2025年に国立大学にクリエイター育成の学部・学科が新設される予定です。これが広がれば高校にもコースができるなど、教育機関の拡充が期待できます。
海外展開のプラットフォームとしては、TVerとNHKワールドが一体となって世界に日本のコンテンツを配信するサービスの構想もあります。すでにアセアン諸国では日本のテレビ番組を月額6,000〜10,000円で視聴できるサービスが存在しており、需要は確実にあります。
日本のコンテンツが世界に広がれば、インバウンド観光客の増加にもつながります。2030年に訪日観光客6,000万人、消費額15兆円という目標も前倒しで達成できる可能性があります。
また、食産業とコンテンツ産業のコラボレーションも効果的です。マクドナルドの「ワクドナルド」キャンペーン(漫画の世界で「マック」が使えないため「ワック」と表記される慣習を活用したマーケティング)のように、日本食や菓子の輸出を増やす戦略を今年6月に向けて策定していく予定です。