JAPAN FUTURE DISCUSSION
日本の未来を明るくする「強いリーダー」のつくり方【平井一夫ソニー元CEO】
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2025年1月5日

CEOとしてソニーを改革し、復活へと導いた平井一夫氏。現在、プロジェクト希望を立ち上げて、子どもの貧困解消や未来のリーダー育成に挑んでいる平井氏に、日本の未来を明るくする「強いリーダー」のつくり方について聞いた。
「リーダーは選挙と逆。先に当選して、その後に票を取りに行かなければならない」- 元ソニーCEO 平井一夫氏に聞く日本の未来
日本企業の改革とリーダーシップのあり方について、元ソニーCEO平井一夫氏が語る。アウェイの環境で培われたリーダーシップと、失敗を恐れない文化の重要性とは。


Q. 日本の未来を明るくするために一番大事なことは何ですか?
より強いリーダーが出てくることが必要だと思う。日本にはまだまだ年功序列の文化が残っており、本当はより良いアイデアがあっても、リーダーのプライドが許さず自分の考えしか通さないような状況がある。EQ(感情知能)が高いリーダーが重要になってきている。
Q. 日本では強いリーダーが生まれづらい理由は何ですか?
年功序列の文化がまだ生きている。リーダーシップを発揮できるかどうかよりも、何年入社かで決まってしまうことがある。また、自分の言うことを聞く人間に後継を託したいという風潮もある。周りにイエスマンだけを集めると、異なる意見が出てこなくなり、議論が行われない。それでは良い判断ができない。
リーダーがプライドを許さず自分の考えだけを通そうとすると、社員のモチベーションも下がる。みんながきちんと議論して、良いアイデアを採用し、「うまくいったら手柄にするし、うまくいかなかったら私が責任を取る」と言えるリーダーの下では、社員のモチベーションも上がる。

Q. 平井さんのリーダーシップはどのように形成されたのですか?
35歳でソニーコンピュータエンターテインメントアメリカの社長を務めたが、それまで管理していたのはニューヨークのソニーミュージックで自分とアシスタントの2人だけだった。その前は東京で係長として7〜8人を管理していた程度だった。
アメリカに行って会社を任された時、「自分で考えて、自分で悩んで、仲間と相談しながらやっていく」しかなかった。現地のゲーム会社の社員からすれば「日本からの赴任者でソニーミュージック出身?私たちはゲーム会社なのに」という状況だった。そこでリーダーとして命令しても信頼性がない。
リーダーは選挙と逆で、先に当選してしまうが、その後にきちんと票を取りに行かなければならない。組織ではまず任命されるが、その後に信頼を勝ち取っていかないと、反発を食らってしまう。
Q. アウェイの環境がリーダーを鍛えるのですか?
そう思う。私の場合は小学校1年生の時にニューヨークの公立小学校に入った経験もある。英語が話せない状態で、しかも1960年代後半で差別感情も残っていた時代だった。そこでどうコミュニケーションするかを学んだ。
3〜4年後に英語を話せるようになり、アメリカ人っぽくなって日本に帰国したら、今度は「アメリカ帰り」と呼ばれた。自分の国に帰ってきても、異質なものとして扱われ、そのバリアを超えて「一緒に遊んでよ」と言わなければならなかった。
留学や海外赴任のチャンスがあれば体験することをお勧めする。文化的にも言語的にもバリアがある中でどうサバイバルするかは勉強になる。残念ながら、海外赴任しても日本人コミュニティの中だけで過ごす人もいるが、それでは海外に行く意味があまりない。
Q. どうすれば子供たちが良いリーダーになれるでしょうか?
子供の頃からいろんな体験をすることが大切だ。文化的な体験、演劇鑑賞など様々な体験を通じて見聞を広げること。中学生、高校生、大学生になれば行動範囲も広がるので、国内でも東京と地方では文化が違うから、そういった場所に行って体験してみることが大事だ。
可能であれば海外旅行に行くなど、貪欲にいろんなことにチャレンジして、体験することが重要。私が設立した「プロジェクト希望」では、そういった体験を提供する機会を作っている。
Q. プロジェクト希望の活動を通して、子供の貧困の実態をどう感じていますか?
日本の18歳以下の子どもの9人に1人が相対的貧困の家庭で育っている。シングルペアレント(主に母子家庭)で年収180万円以下、4人家族でも200数十万円以下で生活している家庭が多い。
教育の格差もある。静かに勉強する場所がなかったり、塾に行けなかったりする。さらに体験の格差もある。経済的な理由や時間がなくて、スポーツやコンサート、映画、旅行などに行けない子どもたちがいる。
私たちはその体験の格差に取り組んでいる。コンサートや映画に連れて行ったり、沖縄の子どもたちを冬の北海道に連れて行くなどのプロジェクトを行っている。また、将来のキャリアを考えるための職場訪問なども実施している。
目的は3つある。1つは共通の思い出作り、2つ目は自分のキャリアを考えられる体験、3つ目は世界観が変わるような体験を提供することだ。

Q. 子供の貧困問題を緩和するためには何が必要ですか?
まず政府、政治家、企業などが、この問題がどれだけ大きいかを認識することが必要だ。GDPが世界トップクラスの国でこれほど相対的貧困が多いことを知らない人が多い。また「本人の自助努力が足りない」という考え方もあるが、統計的に見てもそれは違う。
環境や最低賃金など、周りの環境が適切でない状況を考えなければならない。また、そのような環境にある子どもたちが教育の格差によって高等教育に行けないと、低い収入の仕事につかざるを得なくなり、貧困の連鎖が起きる。
この連鎖を断ち切るためには、問題の大きさを認識し、個人の問題と片付けるのではなく、社会全体で手を差し伸べる必要がある。
Q. リーダーになりたいと思う子供が少ないという問題はありますか?
ある。そういう風になりたいと思うような環境を作ることが、今の大人に求められていることだ。ニュースを見ると政治や企業の不祥事が多く報道され、子どもたちは大人に対してどのような認識を持つだろうかと心配になる。
リスペクトできないような社会では、リーダーになろうとは思わないだろう。素晴らしいことができている国や企業のリーダーがいて、明るい未来が描かれていると子どもたちに感じてもらえるような環境を作ることが、今の大人の責任である。
Q. 子どもたちがリスクを取れるようになるには、学校でどのような取り組みが必要ですか?
うまくいかなかったことに対して「ダメだ」と言うのではなく、プロセスを評価することが大切だ。夏休みの宿題を半分しかしてこなかった生徒に対して、「なぜできなかったか」「どう改善できるか」といった学びの場にするなど、失敗から学ぶ姿勢が必要だ。
ソニーでも、ユニークな商品を開発したが市場で成功しなかった場合、闇に葬るのではなく、その製品を作った人たちを集めて飲み会を開き、頑張ったプロセスに敬意を表した。「よくやった、次は何を学んだかを活かそう」という姿勢でないと、次にチャレンジしようという気持ちが生まれない。
これは会社レベルでも学校レベルでも同じで、失敗も学びの一つだという意識を持つことで、もう一度挑戦しようという気持ちになる。トーナメント制ではなく、リーグ戦で考えることが大切だ。