PIVOT TALK BUSINESS
2025年 日本外交への提言
(58)
4,846回視聴
2024年12月31日

米中対立や韓国情勢など、さまざまな外交危機が日本を取り巻いている。2025年を歴史的な転換点にするには。元駐豪特命全権大使・山上信吾氏が日本外交の未来を解説。 <ゲスト> 山上信吾| 前駐オーストラリア特命全権大使 東京大学卒業後、外務省入省。在英国日本国大使館政務担当公使を経て前駐オーストラリア...
外交のプロが語る「日本が進むべき道」 元駐豪特命全権大使が示す未来への展望
2025年、日本は戦後80年という節目を迎える。この歴史的な年に日本はどのような外交を展開すべきか。元駐豪特命全権大使の山上信吾氏が、変化する国際情勢と日本外交の課題について語った。「80年前に日本が何をしたかよりも、今中国が世界中で何をしているか、戦後の日本の歩みを見てほしい」という山上氏の言葉には、日本が取るべき外交戦略が凝縮されている。

Q. 2025年、日本はどのような外交をしていくべきですか?
2025年は戦後80年の節目の年になる。この年には必ず「歴史カード」を振りかざす勢力が現れるだろう。徴用工問題や長崎の軍艦島、佐渡の金山など、様々な場面で「日本は謝罪と賠償をすべき」という声が国内外から上がると予想される。
このような状況に対処するには、日本が明確なナラティブ(物語)を打ち出すことが重要だ。80年前に何が起きたかよりも、「今そこにある危機」に目を向けるべきだ。現在の問題にどう対応するかを示し、日本として積極的に行動することが求められる。
日本は、「80年前に日本が何をしたかよりも、今中国が世界中で何をしているか」「戦後の日本の歩みを見てほしい」と訴えるべきだ。私の経験では、こうした主張をすれば10人中9人は同意してくれる。

Q. 諸外国は日本のそうした姿勢をどう受け止めるでしょうか?
韓国について言えば、保守派とリベラル派で反応が異なるため、一括りに語ることはできない。重要なのは「今そこにある危機への対応」を訴えることだ。
日本人自身が内向きになり消極的になることが、この問題の永続化を招いている。これはオセロゲームのようなものだ。現在は「日本は悪いことをした」という見方がボードの大部分を占めているが、新しいナラティブを打ち出すことで、黒だったマスを白に変えることができる。
日本はそれだけのソフトパワーを持っている。これは単なる開き直りではなく、戦後の日本の歩みや国際社会への貢献を粘り強く訴えることだ。南京事件や慰安婦問題などは、戦時中のプロパガンダや戦後になって問題化されたものだ。こうした非生産的な議論はもう終わらせるべきだ。
Q. トランプ大統領の再選は日本外交にどのような影響を与えますか?
トランプのような大統領がアメリカから出てきたことは、ある意味で達成感を感じさせる。私は外交の最前線で、中国の台頭がもたらす危険性について欧米人に訴え続けてきた。しかし、クリントン政権やオバマ政権はほとんど聞く耳を持たなかった。
ようやくアメリカが中国のもたらす問題に目を覚ましてきた。これは日本にとって好ましい展開だ。日本単独では今の中国に軍事面で対抗できない。日米同盟の力を日本の国益のために活用できることは、日本にとって幸運だ。
特に注目すべきは、トランプが選んだ新国務長官のマルコ・ルビオ氏だ。彼は「尖閣諸島は日本の領土」と明言し、「日本の総理大臣が靖国神社に参拝することについてアメリカは口出しすべきでない」と発言している。こうした明確な姿勢を示すアメリカの国務長官は過去に例がない。

Q. 日本の現在の外交姿勢についてどう評価していますか?
2022年8月、中国は史上初めて日本の海域にミサイル5発を打ち込んだ。これは前代未聞の事態だったが、当時の日本政府は中国大使を呼びつけて厳重抗議するのではなく、電話で済ませてしまった。
その後も、中国による福島の処理水問題での水産物全面輸入禁止、浮標の勝手な設置、日本人に対する暴行事件、靖国神社での不敬行為など、様々な問題が発生したが、日本政府は「遺憾」という言葉を繰り返すだけで、中国大使を呼びつけて厳正に抗議することはほとんどなかった。
外交において最も危険なのは、中国が自国の力を過大評価し、日本やアメリカの力を過小評価することだ。歴史を見ても、そのような状況で紛争が起きている。「なめるな」ということを言動で示さなければならない。残念ながら、現在の日本外交はそれができていない。
Q. 次期総理大臣に求められる資質は何ですか?
国内での政治基盤がしっかりしていて、中国と懐深く正々堂々と向き合える人物が望ましい。外交には力強さが必要だ。目の前の相手と妥協点を探ることから入ると、必ず軽蔑される。
例えば、中国の指導者と会った際に両手で握手をしたり、過度に親しげな態度を取ったりする政治家が多すぎる。外交のプロから見ると情けないし、国益を損なっている。次の総理大臣にはそのようなことがない人になってほしい。
トランプ大統領が安倍晋三元首相の妻と会談したことは、「安倍路線を継承せよ」というメッセージだと受け止めている。「安倍以降、日米関係を改悪するな。安倍が敷いたレールを着実に歩め」というのがその会談のメッセージだ。

Q. 若い世代に伝えたいことは何ですか?
まず、外交や安全保障に関心を持ってほしい。一人ひとりの日本国民の声が日本外交を強くし、誇り高いものにしていく。
次に、機会があれば外務省の門を叩いてほしい。私が様々な発言をしているのは、外務省を弱体化させるためではなく、強化したいからだ。日本外交を担う優秀な人材が必要だ。
最後に、日本という国に自信を持ってほしい。外交官は国を「売る」商売だ。日本という国を世界に売り込むほどやりがいのある仕事はない。
現在の30代、40代の人々が新しい日本のイメージを世界に植え付けている。大谷翔平をはじめ、サッカー、ゴルフ、テニス、バスケットボール、フェンシングなど、各分野で世界を相手に引けを取らない、強いインパクトを残せる日本人が増えている。これは誇るべきことだ。