Deep Interview
【玉木雄一郎に聞く、2025年の経済政策(後編)】日本のムダと令和の事業仕分けのススメ
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2024年12月29日

2024年後半の最注目テーマとなった「103万円の壁」。結局、どこまで壁は上がるのか?最終ゴールとして何を目指しているのか?そして、115兆円に上る予算をどうすれば削減できるのか?日本のムダはどこにあるのか?国民民主党の玉木雄一郎氏と、慶應義塾大学の中室牧子教授に議論してもらった。
「規制改革や過剰な政府関与が生産性を阻害」中室教授と玉木代表が語る日本経済の課題
過剰な政府関与が生産性を低下させ、古い制度が時代に合わなくなっている日本。規制改革と民間活力の解放が経済成長の鍵となるのではないか。そんな問題意識から、中室牧子教授と玉木雄一郎代表が日本経済の課題について語り合った。


Q. 日本の生産性が低い理由は何だと考えていますか?
過剰な政府の関与が生産性を低めている要因の一つ。例えば規制改革会議の委員を務めていますが、議論されているテーマの一つがライドシェアです。また、高校生の就職制度についても問題があります。高校卒業生の15%が就職しますが、「1人1社制」というルールがあります。
この制度では、学校内で選抜をして、高校生は決められた会社にしか応募できません。企業側も自分で選びたいと言っているし、高校生も自分で選びたいと言っています。求人票は印鑑が押された紙で届き、高校教員が2500枚もの書類を確認する必要があります。
このような中途半端な計画経済的な仕組みが山ほどあります。ライドシェアも同様で、タクシー会社が雇用したドライバーが国交省の決めた限られた時間しか働けないというルールがあります。
もっと民間に解放して効率的にやってもらえば、国の予算を使わなくても済むし、生産性も高くなるでしょう。日本政府は市場の力を信じず、価格を統制して競争を阻害しています。そういうことにお金を使うより、減税した方がいいと思います。
Q. 中国の方が資本主義的だという意見がありますが、その点についてどう思いますか?
中国では空飛ぶ自動車やドローンなどの新技術が既に実用化されています。特に「低空経済」という300m以下の空間を活用するビジネスが積極的に展開されています。
中国では、ドローンを活用したビジネスのために、都市の低空空間の権利を買い取り、証券化するといった動きがあります。これはかつて日本のディベロッパーが行ったような不動産開発の発想を空間に適用したものです。
イノベーションを起こすためには、規制を見直し、「これはダメ」「あれはダメ」という制限を減らしていく必要があります。高校生の1人1社制のような古い制度も早急に廃止すべきでしょう。
Q. 規制改革を進める上での障壁は何でしょうか?
規制改革会議で活動していると「調整しろ」と言われることが多いです。官庁とも業界とも調整するよう求められますが、これは本来、政治家の役割ではないでしょうか。有識者は問題を発見し、専門知識を用いて提案をする役割があります。しかし調整は、予算を与えられた政治家の仕事だと思います。
規制改革は政治家にとって「敵を作る」と言われており、選挙に勝てないという理由でやる気がないケースも多いです。既得権を持つ人々への過剰な配慮があり、企業献金などを通じて政治との間に強い関係があるため、現状の制度が動かしがたい状況になっています。
また、日本の成長が鈍化している理由の一つは、「拒否権ばかり持っているおじさん」が増えていることです。何か新しいことをしようとすると、「話を聞いていない」「先に相談がない」などと言ってダメ出しをする人が増えています。
Q. 政治資金の透明性についてはどうお考えですか?
企業献金が悪で個人献金が善という単純な図式ではありません。個人献金でも様々な要求をする人がいますし、企業献金でも特に何も言わない場合もあります。
むしろ問題は上限と透明性です。現在、個人は年間2000万円まで政党に寄付できるのに対し、企業は1億円まで可能です。同じ2000万円に統一するなど上限規制を設け、タイムリーに公表する仕組みが必要でしょう。
企業献金を単純に禁止すると、企業が役員や従業員に給料を上乗せして個人献金の形を取らせるようになり、かえって透明性が失われる恐れがあります。透明性の確保と上限規制の強化が現実的な対応策です。
Q. 地方創生政策の効果についてどう評価していますか?
地方創生関連の予算は、公共事業的なものと形状的なものがありますが、地方に裏負担を求めるため使いづらく、94%が繰り越されています。また補正予算で年度後半につけられるため、自治体の事業計画に入っておらず、議会も通せない状況です。
そのため困った自治体は、PayPayポイントの上乗せや地域商品券の発行などで予算を消化しています。こうした地方創生の在り方はやめるべきです。地域が元気になるためには、核となる人材の育成が重要です。
Q. 予算の使い方をどう改善すべきでしょうか?
フランスのパリで実施されている「市民参加型予算」が参考になります。これは人に投票するのではなく、予算の使い方に市民が直接投票する仕組みです。例えば「減税でこれくらい税収が下がりますが、その代わりに手放してもいいと思う公共サービスは何ですか?」と市民に問いかけることができます。
水道やゴミ収集は必須でも、医療費の中で保険適用の必要がない部分は削減してもいいという意見もあるでしょう。このような民意をもっと反映できる仕組みが必要です。
現在はAI技術の進歩により、ソーシャルリスニングやブロードリスニングといった手法で大量の意見を集め、AIで処理して分析することも可能になっています。こうした技術を活用して「AI×民意」による予算配分の最適化が実現できるのではないでしょうか。
Q. 2025年の日本経済の注目点は何でしょうか?
まず、アメリカの経済政策がどうなるかは世界経済に大きな影響を与えます。トランプ政権の経済政策が、インフレを加速させる方向に進むのか、抑制する方向に進むのかは予測が難しい状況です。
また、中国に対する関税政策やメキシコ・カナダとの貿易関係も注目点です。特にメキシコには日本の自動車メーカーなど多くの工場があり、貿易政策の変更は日本企業にも影響します。
日本国内では、春の賃上げ交渉、特に中小企業の賃上げレベルが重要です。これは金融政策や財政政策、さらには夏の参議院選挙にも影響を与えるでしょう。賃上げの流れが頭打ちになるのか、中小企業でも4%台後半の賃上げ率を達成できるのかが注目されます。
また、「賢く縮む経済」という考え方も重要です。人口減少の中で無駄を削減しながら生産性を上げていくことが、日本経済の勝ち筋になるでしょう。ただし、若い世代には「まだまだチャンスがある」というメッセージを伝え、エンカレッジしていくことも必要です。