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國學院・前田監督に聞く箱根駅伝への軌跡
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2025年1月2日

1月2日から3日に開催される第101回箱根駅伝。今回は、國學院大学の前田康弘監督に、箱根駅伝までの軌跡やチームのマネジメント方法、他大学チームの動向について話を聞いた。 <ゲスト> 泉 秀一|ノンフィクションライター 1990年福岡県出身。関西大学卒業後、ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部...
國學院大學陸上競技部前田康弘監督に聞く、出雲・全日本優勝から箱根3冠への道
「出雲も勝って、全日本も勝って、ここまでは予定通り。でも箱根駅伝は全く別物なんです」――出雲駅伝と全日本大学駅伝で優勝し、大学駅伝2冠を達成した國學院大學。箱根駅伝3冠に挑む前田康弘監督が語る、勝利への戦略と選手育成論。

Q. 出雲・全日本と勝ち、箱根駅伝に向けての現在の状況をどう見ていますか?
全日本大学駅伝に最もフィットするチーム戦力を持っていると感じていたので、故障者なく主力を全て投入できれば勝ち負けになると予想していました。出雲駅伝はあくまで一つのステップとして捉え、全日本をメインターゲットとしてスタートしました。
選手たちは「箱根総合優勝という目標を達成できる力があれば、出雲も全日本も勝てる」というトップダウン的な目標設定をしていました。私個人としては全日本が最もフィットすると考えていましたが、選手たちの目標も無謀ではないと思いスタートしました。実際、6月か7月頃にはベスト8の選手たちに「君たちがスタートラインに立てば全日本は勝てる」と伝えていました。

Q. 出雲・全日本と箱根駅伝の違いはどこにありますか?
箱根駅伝は全く別物です。準備の仕方も違いますし、全日本との間に2ヶ月あるため、心理的な部分や選手のコンディションが変動しやすい非常に難しいゾーンです。
また、山という別物の区間があり、これをどう準備するかで総合順位が大きく変わります。出雲や全日本で連覇したとはいえ、箱根は全く別の競技と捉えるべきです。
ただ、まだ実績のない若いチームにとって、出雲と全日本の勝利は非常に価値があります。自分たちは本当にやれるという確信を得るためには、チームとして結果を上げていくことが必要だからです。

Q. 國學院大學のライバルと考える青山学院・駒澤大学との戦力差はどう見ていますか?
ほぼ互角と見ています。ただ、戦い方の難しさは箱根駅伝が2日間に分かれて開催されることにあります。現在のトレンドとしては、往路に上位5人の選手を配置し、復路に6番から10番の選手を配置するようなイメージです。
全日本大学駅伝は1日の中で走力に波があり戦いやすかったのですが、青山学院と駒澤は1番目から3、4番目までの選手が國學院よりも少し強いです。そのため往路で流れを作りやすいのはこの2大学だと思います。また、山の経験者や実績のある選手も両大学は持っています。
一方、國學院は6番手から10番手の選手が、青山学院と駒澤よりも力を持っていると考えています。ただ、駅伝は流れがあるので、往路のタイム差などは読みにくいです。戦力的には青山学院と駒澤が平均点では少し上かもしれません。
Q. 往路終了時点でどれくらいの差なら逆転可能と考えていますか?
1分半から2分差であれば逆転のチャンスはあると思います。ただ、区間配置にはまだ迷いがあります。往路の差を最小限に抑えたいという思いと、場合によっては往路の途中でトップに立ちたいという流れもあるので、キーマンとなる選手を往路に使うか復路に使うかは現在微妙なところです。
青山学院と駒澤がどのような区間配置をしてくるかも含めた駆け引きがあります。我々のキーマンは青木瑠衣選手です。オランダで世界と戦ってきた選手で、現在状態もいいので、彼が今年のジョーカーになると思います。このジョーカーをどこに置くかで流れが変わるでしょう。
Q. 青山学院の「一号車マジック」と呼ばれる現象をどう分析していますか?
心理的な優位さがあると思います。また、青山学院はしっかり走り込みをしているので、20kmを一人で走り切る基礎的な能力を鍛えています。単独走で大きくペースを落とさずに走り切る能力と、原監督が直前までコンディションを見極め、調子の良い5人を復路にも配置しているからこそ逃げ切れるのだと思います。
追いかける側の心理としては、最初の5kmくらいは詰めるのですが、無理が祟り、青山学院の選手の方が伸び切るという現象が起きます。これは心理的な部分と、そこを想定した選手育成を原監督が1年間やってきた結果だと思います。
ただ、全日本では我々が青山学院に1分27秒差をつけられながらも、繋ぎで詰めて逆転できました。今回の箱根は我々がプレッシャーをかけられている立場かもしれません。
Q. 箱根駅伝の山の区間は、最近どのように変化していますか?
シューズの進化が非常に大きいと思います。最低限のところで5区のランナーも走り切れるようになりました。昔の柏原選手の時代は薄い靴で走っていて、基礎的な強さがないと走れませんでしたが、シューズが変わったことで、どの選手も登りに挑戦しやすくなりました。
ただ、「山の神」と呼ばれるような突出した選手はなかなか出てこないと思います。過去10年くらいの間に柏原選手のような山の神は出てこないのではないかと予想しています。
むしろ、昨年の創価大学の山本選手のように、一人の切り札がいると一気に順位を上げることができますが、そのような選手が複数出てくるような全体的なレベルアップが起きているのではないでしょうか。67分台ではなく、69分台で走れる選手が複数出てくるような状況です。
Q. 平林選手はどのような選手ですか?
非常に繊細な選手です。趣味が陸上競技、特技も陸上競技というくらい、常に陸上競技のことを考えています。ゲームやアニメなどの一般的な趣味もなく、昭和の歌やドラマに詳しいという特徴があります。
自分がここで生きていくフィールドだと理解しており、マネジメント力が非常に高いです。一つのレースを考えた時に何パターンも自分の中で用意していて、大阪マラソンでもそのパターンの一つが来たのでそれに合わせて走ったと言います。これは普通の大学生では言えないことです。
箱根も2回走っているので、コース形状もよく理解しています。頭も良く、戦略も自分で立てて、マネジメントできる賢い選手です。誰よりも練習し、誰よりも食事も摂ります。これからまだまだ伸びしろのある選手だと思います。
彼は福井の山奥の、同級生が10数人しかいないような中学校の出身で、自転車で山を登って通学していたというハングリー精神を持っています。都会育ちというよりも、田舎でのびのびと育ち、こちらに勝負しに来たような選手です。
Q. 國學院大學陸上競技部はどのようにして強くなってきたのですか?
チャンスをものにしたことが全てのスタートでした。2015年に箱根駅伝予選会で落ちた後、自分のやり方を見直していた時に、肘井竜一選手や浦野雄平選手たちと出会いました。彼らが同学年で入学してきたことがチャンスでした。
彼らが2年生だった第94回箱根駅伝で、1区と3区と4区に彼らを投入し、区間2位、6位、3位という結果を出しました。往路で一桁順位を取ることは國學院大學では珍しく、ようやく光が見えたと感じました。
その後、彼らが4年生の時に出雲駅伝で初優勝し、それを見た平林選手が入学してくれました。このように一つの成功が次の成功につながり、徐々に膨らんでいきました。
スカウト活動も非常に大変でした。國學院大學は知名度があまりなく、国士舘大学と間違えられることもありました。高校の先生の中にも顧問として國學院大學出身者が少なく、突破口がなかなか見つからない状況でした。
しかし、偏差値が高い大学に行きたいけれど、強豪校ではないため通用しないと感じている選手たちが國學院大學を選んでくれるようになりました。一つ結果を出すとそれが次につながり、現在では「入りたい」という学生がある程度いてくれる状況になっています。
チーム作りの面では、選手たちを全て見ることを重視しています。カテゴリーを決めず、エントリーメンバーから外れた選手たちも含めて全員を大切にする伝統があります。これが好循環を生んでいると思います。

Q. 今後の國學院大學と前田監督の目標は何ですか?
平林選手は卒業後も残って一緒に世界を目指すことになっていますので、実業団に所属しながらも私と練習を続けます。私自身も学びながら、その経験を箱根駅伝やチームに還元していきたいと考えています。
目指すのは駒澤大学のような上昇軍団であり、常に勝ちを意識できる集団です。一過性ではなく持続性のあるチーム作りのフェーズに移行できるよう、コーチたちとも連携を取っていきます。
また、アディダスと提携したことで、ドイツや上海などの海外レースに選手たちを連れていける環境が整いました。日本国内だけでなく、世界を見せることで選手たちの成長を加速させたいと考えています。大迫傑選手のように日本の常識を覆す考え方を取り入れ、学生たちが成長し、世界との距離を縮めることが最も大切だと思います。