PIVOT TALK BUSINESS
米国ミネルバ大学式リーダーシップ 10のテーマと18の思考法
(90)
6,930回視聴
2024年12月20日

VUCA時代に求められる適応力。ミネルバ大学では組織を適応に導くリーダーを育てている。外交官出身の黒川公晴講師がそのノウハウを解説する。
成長するリーダーを育む18の思考習慣―複雑な世界で結果を出すミネルバ式リーダーシップ
リーダーシップとは何か。ただ人を指示するだけでなく、複雑な問題を解決し、チームを導く力が求められる現代。リーダーに必要なのは「学ぶ力」だという。システム思考から始まり、自己理解、人を動かす力、そして意思決定まで。ミネルバ式リーダーシップのエッセンスを紐解く。
Q. リーダーとして複雑な問題を解決するために必要な力とは何ですか?
システム思考、対自分、対人知性、対課題解決の4つが基本となります。これらが全て繋がって機能することが重要です。多くの人は対人・対課題だけに集中しがちですが、全体を見るシステム思考と自分自身を理解することがベースとなります。
このアプローチを18の思考習慣に落とし込み、10週間のプログラムとして提供しているのがマネージングコンプレクシティです。


Q. システム思考とは具体的にどのようなものですか?
システム思考とは「システムを見る目」を持つことです。これには3つの視点があります。
1. 鳥の目:局所的な問題だけでなく、全体の背景や関係性を広く見る視点
2. 虫の目:現場の一人ひとりの気持ちや、ミクロな視点で詳細を見る
3. 魚の目:時系列を行き来し、過去の経緯や将来の影響を見る
例えば、ビジネスパートナーと問題が生じたとき、そのパートナーのステークホルダーや他のビジネスとの関係など、見えていない部分まで思いを馳せるのが鳥の目です。現場の人々の気持ちを細かく理解するのが虫の目、そして過去の類似事例や将来への影響を考えるのが魚の目です。
日本人を含め、多くの人は虫の目(細部への集中)が強い傾向があります。そのため、鳥の目や魚の目のような広い視野を意識的に持つことが大切です。

Q. 対人知性を高めるにはどうすればいいですか?
対人知性を高めるには、まず人間の行動原理を理解することから始めます。人間の行動は主に4つの要素から生まれます。
1. モチベーション:何かをしたいという動機
2. 目標:モチベーションから生まれる具体的な目標
3. 信念・価値観:行動を無意識にフィルタリングする
4. バイアス:合理的な行動を妨げる認知バイアス
例えば、お金を貯めたいというモチベーションから「2年で100万円貯める」という目標が生まれますが、「正しくありたい」という信念があれば不正な方法は選ばないでしょう。さらに、現状維持バイアスや損失回避バイアスなどが行動に影響します。
重要なのは、これらのメカニズムを自分自身で理解することです。自分の感情、思考、信念を実直に見ることができれば、他者に対する共感力も自然と高まります。単なるテクニック(頷き方など)ではなく、内面から始める必要があります。

Q. EQと共感力についてもう少し詳しく教えてください
共感には3つのレベルがあります。
1. 認知的共感:相手の考えや感情を理解する
2. 感情的共感:相手の感情が自分の感情として伝わってくる(映画を見て泣くような感覚)
3. 共感的配慮:理解した上で手を差し伸べる行動を起こす
日々のコミュニケーションで、自分がどのレベルの共感を多く使っているか、足りないものは何かを分析し、意識的に鍛えていくことが大切です。
また、対人知性には「力の源泉」の理解も含まれます。リーダーが影響力を持つ源泉には、立場の力、カリスマ的魅力、情報力、専門性、関係性(ネットワーク)などがあります。自分の得意・不得意なパターンを知り、足りない部分を他者に補ってもらうことも重要です。
Q. コミュニケーションスキルを向上させるためのポイントは?
効果的なコミュニケーションのためには、様々なツールがあります:
- 明確に話す
- 相手に合わせた言葉遣いをする
- 聞く力を磨く
- インタラクションを取る
- 適切な問いを作る
- ストーリーを語る
- 具体例を示す
- 共感を表現する
- 非言語表現(表情、沈黙、トーン)を活用する
- 重要なことは繰り返す
また、スピーチを構成する際は、感情に訴えかける部分と認知的に訴えかける部分(データなど)をどのように配置するかが重要です。これらのツールを意識的に使い分けることで、コミュニケーションの再現性が高まり、新しい引き出しも増えていきます。
Q. 課題解決やイノベーションのプロセスはどのように進めるべきですか?
まず重要なのは、課題を正しく定義することです。日々取り組んでいる問題が本当に解くべき問題なのか、そもそも何のためにやっているのかを問い直す必要があります。
また、制約と障害を区別することも重要です。制約は重力のように変えられないもの、障害は乗り越えられるものです。予算や上司の意向を「制約」と思い込んでいると突破口が見えません。本当に制約なのか、障害なのかを明確に定義することが課題解決の第一歩です。
イノベーションのプロセスでは、「発散」と「収束」を明確に分けることが成功の鍵です。ブレインストーミングの場で「それは前にやりましたよね」「予算がありません」といったアイデアキラーが出ると、良いアイデアは生まれません。会議の場が発散の場なのか収束の場なのかを意図的に決め、参加者と共有することが重要です。

Q. 良い意思決定をするためのフレームワークはありますか?
意思決定のためのWRAPフレームワークがあります。
1. W(Widen your options):他のオプションを広く考える
2. R(Reality test):思い込みや前提を疑う
3. A(Attain distance):距離を取って客観的に見る(親友ならどうアドバイスするか考えるなど)
4. P(Prepare for failure):失敗した場合に備える、失敗の要因を事前に洗い出す
このフレームワークを繰り返し実践することで、バイアスを排除し、より良い意思決定ができるようになります。理論を学んだ後は、実際の課題に適用し、フォローアップを繰り返すことで身につきます。
Q. リーダーシップを磨く上で最も重要なことは何ですか?
3つの重要な要素があります:
1. システム思考:全体と局所を見る力、これが全ての土台
2. 自己理解:自分の行動、感情、価値観を深く理解する
3. ラーニングアジリティ(学びの俊敏性):新しい視点で物事を眺め、発見を楽しみ、仮説を立てて行動し、フィードバックから学ぶ循環
特にラーニングアジリティは「世界は本当は変えられる」という信念につながります。世界に対して能動的に働きかけ、主体的に変化を作り出す姿勢こそがリーダーシップの本質です。
リーダーは学ぶ人であり、学ぶ人はリーダーである(Learner is Leader)という考え方が、本当のリーダーシップを育む土台となります。