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トランプの経済政策とイーロンの政府効率化計画
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2024年12月19日

徐々に明らかになってきた第2次トランプ政権の人事。この人事にはどのような狙いがあるのか? イーロンマスクはどのような役割を果たすのか? 経済アナリストのジョセフ・クラフト氏に話を聞いた。 <ゲスト> ジョセフ・クラフト|経済アナリスト 1986年カリフォルニア大学バークレイ校卒業後モルガン・スタン...
トランプ次期政権が掲げる「333政策」とは?経済成長・財政管理・原油増産の三本柱
トランプ次期政権の経済政策の要となる「333政策」が注目を集めている。これはどのような政策なのか、またアメリカの政界で話題の「同時証」という組織の役割、そしてトランプ政権と日本の関係性について専門家が解説する。
Q. トランプ次期政権における経済政策の「333政策」とは何ですか?
「333政策」は財務長官に指名されているスコット・ベセント氏が掲げている政策目標です。これは実はアベノミクスからヒントを得たとされています。数字が分かりやすく、国民も含めてトランプ大統領が理解しやすい形で政策目標を作るというコンセプトです。
具体的には、以下の3つの数字「3」を掲げています:
1. GDP成長率3%の達成(日本の場合は2%でした)
2. 政府債券をGDP比3%以内に抑制(現在は約6%)
3. 1日の原油生産を300万バレル増産
この政策目標は、経済成長を促進しながら財政規律も守り、さらにエネルギー価格を削減することで生活コスト低減を目指すものです。

Q. トランプの移民排除や関税政策はインフレ促進要因なのに、なぜインフレ削減を目標にしているのでしょうか?
確かにそこには矛盾があります。トランプ政策は移民排除、減税、関税導入など、インフレを促進する要素が多くあります。にもかかわらず、インフレ削減を目標としている点は矛盾しています。
この矛盾をどう解消するかがベセント氏の手腕の見せどころとなりますが、その解決策として原油増産があると考えられます。300万バレルの増産は現在の生産量(1日約1300万バレル)の約2割に相当する大きな数字です。
重要なのは、有権者は経済全般のインフレ指標(CPI)ではなく、「体感インフレ」を重視する傾向があるという点です。ガソリン、牛肉、牛乳といった日常品の価格が選挙の判断材料になります。民主党はCPIが下がっていることをアピールしていましたが、有権者が感じる体感インフレは上がっていたことが選挙結果に影響しました。
ベセント氏はまず、アメリカ人が最も敏感に反応するガソリン価格・エネルギーコストを下げることで、完全にインフレを抑制できなくても、体感的なインフレ感を和らげる狙いがあると考えられます。

Q. 原油増産は政府が指示できるものなのですか?
政府が直接指示できるわけではありません。原油生産は需要と供給のバランス、特に採算性によって決まります。掘るコストと価格のバランスが取れなければ、シェールガス会社は生産を控えます。
しかし政府には以下の手段があります:
1. 補助金の提供
2. バイデン政権の環境規制を緩和
3. 生産のインセンティブを高める政策
環境規制の緩和は原油増産につながり、世界的なエネルギー価格の安定にも寄与する可能性があります。この点は日本など他国にもプラスとなり得ます。
Q. トランプ政権の関税政策について、法的な根拠はどうなっていますか?
トランプの関税政策には、実は法的な制約があります。大統領が思いのままに関税を上げることはできません。
例えば、トランプ1期目で課したアルミニウムへの20%関税、鉄鋼製品への25%関税は「通商拡大法232条」に基づいており、これは国家安全保障を理由にしています。単なる貿易赤字では関税をかけられません。
カナダとメキシコに対する25%の関税についても、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の枠組みの中で動いています。USMCAでは通常、貿易赤字や不均衡な貿易関係を理由に関税をかけることはできませんが、32.2条には「国家の平和もしくは安全保障が脅かされた場合、例外措置として関税などの措置が取れる」と明記されています。
トランプ氏が関税の理由として違法麻薬や不法移民を挙げているのは、この「国家安全保障」の例外条項を利用するための戦略です。法律の抜け穴を巧みに理解し、弁護士のアドバイスを受けていると考えられます。
Q. 日本は関税面でどのような状況にありますか?
日本は実は巧みな交渉で関税リスクを軽減しています。2019年に締結された日米貿易協定では、日本がアメリカの農産品に課している関税を引き下げる一方、アメリカは日本の自動車に課している関税(2.5%とトラック25%)について「継続交渉」するという形になりました。
一見すると日本だけが譲歩したように見えますが、この「継続交渉」という状態を維持している限り、アメリカは通商拡大法232条による高率関税(10%や25%)をかけることができないという条項が含まれています。日本の自動車メーカーにとって2.5%の関税は大きな問題ではなく、それを払うことで25%などの大きな関税がかけられないことが保証されるわけです。
問題は、トランプがこの協定を遵守するかどうかですが、少なくとも日米貿易協定を遵守する限り、日本に対して大きな関税をかけることは難しいという保障があります。

Q. イーロン・マスクが主導する「DOGE省」とは何ですか?
「DOGE省(Department of Government Efficiency)」はイーロン・マスクが考案した組織で、政府機関ではなく民間の組織(シンクタンクのような位置づけ)です。「DOGE省」はホワイトハウスに助言し、大統領がそれを採用して大統領令を発動、行政管理予算局(OMB)が各省庁と執行するという仕組みです。
マスクの戦略として特筆すべきは、政府職に就かないという点です。政府に入ると利益相反の問題が生じ、テスラやSpaceXの株式を売却するか、信託に預けるなどの措置が必要になります。しかし民間という形で助言することで、役割的にはほぼ同じことができながら、利益相反問題を回避し、議会の承認も不要となります。
また、マスクは同時証のメンバーとして、まずボランティアベースで参加する人材を募集しました。お金が必要なく、政府改革に強い思いのある人たちがリードする形で、効率化を進めるという戦略です。

Q. この「DOGE省」による行政改革は成功するでしょうか?
行政改革は日本でも成功した例が少なく、実現は容易ではありません。しかし今回は「マスク」と「トランプ」という二人の異端児がタッグを組んだことで、相当の効果が出る可能性があります。
マスクはすでにウォールストリートジャーナルに意見文を寄せており、戦後の最高裁判例や法令を詳細に調査し、官僚や省庁からの抵抗に対処する戦略を準備しています。思いつきではなく、弁護士を雇って法的根拠を固めた上での戦略であることは間違いありません。
ただし、医療保険など国民にとって重要な分野での削減は反発を招く可能性もあります。マスクがどこまで踏み込み、国民の支持を維持できるかが課題となるでしょう。
Q. トランプ政権と良好な関係を築くために、日本政府はどうすべきですか?
重要なのは「いつ会うか」ではなく「会って何を話すか」です。トランプ氏の最大の関心はアメリカへの投資です。日本としては、経団連と協力して企業のアメリカへの直接投資計画を前倒しするなど、トランプ氏が喜ぶような投資パッケージを用意することが有効でしょう。
むしろ焦って早期に会談を求めるよりも、じっくりと戦略を練り、トランプ氏が食いつくようなパッケージを作り、準備が整ってから会談に臨む方が効果的です。中身のない早期会談は逆効果になる可能性があります。