
闇バイトのリアルと対策。「貧困×孤立×SNS」の闇
闇バイトが増える根本原因とは? 若者支援の第一線から見えてくる現実
青年たちがなぜ「闇バイト」に手を出してしまうのか。その背景には貧困だけでなく、孤立や自己責任論の強まりがある。若者支援のプロフェッショナルたちが語る、見過ごされがちな社会問題の実態。


Q. なぜ闇バイトが増えているのでしょうか?
貧困の影響は大きい。2020年4月には700人だった相談登録者が現在では1万5500人以上に増加している。新型コロナウイルスの影響で飲食店などで働けなくなった若者が増え、経済的に苦しい状況に追い込まれた。
LINE相談に来る若者の約半数は滞納や借金を抱えており、特に親との関係が良くない子どもたちは住民票を移せず、定額給付金などの支援も受けられなかった。親に頼れない状態で孤立し、貧困状態が続くと借金が膨らむ。
借金の額も大きく、50万円、100万円、200万円といった金額に上ることも珍しくない。奨学金と合わせると返済の見通しが立たなくなり、そのプレッシャーから闇バイトに手を出してしまう。
Q. SNSは闇バイトにどう関係していますか?
SNSの影響は非常に大きい。以前は地元の不良コミュニティなどで募集されていた闇バイトが、今ではSNSを通じて一般の大学生や普通のサラリーマンにも広がっている。
例えば「お金がない」とツイートすると、闇バイト組織から「こういう仕事がありますよ」というDMが来る。また、通常の求人サイトからも闇バイトに勧誘されるケースが増えている。
SNSでは個人情報を全て提供してしまうため、一度闇バイトに手を出すと抜け出せなくなる。「やめると言ったら警察に通報する」「SNSで拡散する」などと脅され、続けざるを得なくなる。
Q. どんな種類の闇バイトが多いのですか?
「受け子」「出し子」「運び」などが多い。具体的には口座やスマホを貸すだけで1万円、2万円がもらえるという誘い文句で勧誘される。また、「このロッカーに入っているものを別のロッカーまで運ぶだけで2万円」といった単純な仕事から始まることが多い。
「受け子」は「警察です」「銀行協会です」などと偽って高齢者宅を訪問し、キャッシュカードをすり替える役割。「出し子」はそのカードでお金を引き出す役割を担う。元締めは指示を出すだけで、末端の若者たちが実行犯として使われている。
最近特に増えているのは「叩き」と呼ばれる強盗。詐欺よりも強盗の方が若者にとってハードルが高いように思えるが、一度闇バイトに関わると個人情報を握られ、家族の職場なども特定される。「ここで降りるなら家族の会社に行くぞ」「個人情報をSNSに載せるぞ」などと脅され、断れなくなる。
Q. 闇バイトに手を出してしまう若者の特徴はありますか?
必ずしも「不良」だけが犯罪に手を出すわけではない。見た目は全く問題なさそうな子どもたちが、スマホゲームの課金で親のカードを使ってしまったり、優秀だけれど家族の期待がかかりすぎて相談できなかったりする子もいる。
おとなしくて臆病な子ほど、一度試しにやってみたことで個人情報を抜かれ、親や家族に迷惑がかかることを恐れて深みにはまっていくケースが多い。
また、冷静に考えれば騙されるとわかるような話でも、お金に困っていたり精神的に追い詰められていると判断力が低下し、フィルターがかけられなくなる。

Q. 支援制度はあるのに、なぜ闇バイトに走るのでしょうか?
若者たちの6割は社会保障制度を知らず、福祉窓口にも行かない。福祉に対する心理的ハードルが非常に高く、制度への拒否感もある。
一方で闇バイトは情報が早く届き、SNSで手軽に情報を得られる。福祉よりも闇バイトの方が早く情報拡散され、届きやすい。
お金の問題やトラブルがあっても「自業自得」と責められることを恐れて相談できない若者が多い。これは20年前のイラク人質事件での自己責任論が現在も強まっていると言える。SNSの普及により、個人からの批判も増え、自己責任と言われやすい環境になっている。
Q. 闇バイトに手を出してしまった後、どうすればいいのでしょうか?
一度手を出すと抜け出すのは非常に難しいが、実は「逃げていい」というのが専門家の見解。どこの組織も人材不足で、一人逃げた人を懲らしめるほどの余裕はなく、メリットもない。関係を切って安全なところに逃げることが重要。
ただし、その前に相談できる相手がいることが大切。家族や学校の先生に相談できない場合は、オンラインの相談窓口などを利用して早めに助けを求めるべき。
また、闇バイト防止には教育も重要。詐欺の手口や対処法を学ぶ「騙されないための教科書」などの取り組みも始まっている。
Q. 問題解決のためにどんな取り組みがされていますか?
NPO法人DPでは、LINE相談「ゆきさきチャット」を運営し、食料支援や給付支援を行っている。これまでに1万5000件以上の相談を受け、9000万円近くの給付と24万食の食料支援を実施。
発車大ソーシャルでは、全国の高校や少年院向けのプログラム、ヤンキーの若者向けキャリア支援、「ミドルライフフェス18歳の成人式」など様々な取り組みを行っている。
これらの活動は主に寄付で運営されており、NPOセクターと企業の連携が重要。企業が教育に投資し、若者たちがちゃんと納税者になれるよう支援することが社会全体にとっても良い循環を生み出す。

Q. 今後どのような対策が必要でしょうか?
1. オンラインでの福祉相談の充実
2. 学校と地域社会の連携強化
3. 第三者の大人との繋がりを増やす取り組み
4. 企業とNPOの協働による若者支援
5. SNSやオンラインゲームへの適切な規制と教育
特にSNSについては、完全な規制ではなく、AIを活用した不適切な会話の検知や闇バイト関連の警告表示など、プラットフォーム側の責任ある対応が求められる。
若者たちが貧困や孤立から抜け出し、社会で活躍できるよう、様々なセクターが連携して支援の輪を広げていくことが重要だ。