
2025年の日米株の行方
「日本株は4万円台がいずれ定着、米国株は大幅調整リスクあり」─専門家が解説する2024年の株式市場展望
日本株市場が徐々に実力を取り戻し、4万円の大台を回復した今、この勢いは今後も続くのか。そして米国株の躍進は持続可能なのか。今回は、日生基礎研究所の井出真吾氏に日米株式市場の現状と見通しについて聞いた。

Q. 日経平均株価が4万円を回復した背景は?
日米の金融政策が株価にポジティブに働いたことが大きい。米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げが見込まれ、日銀は利上げが見送られるとの見方から円安が進み、日経平均の回復につながった。
そもそも日経平均の実力水準は上値で4万円をやや超えるくらいだ。これまで日経平均は出遅れていただけで、23週間前までは3万8000円台だったものが、今週3万9000円台に下値が切り上がり、4万円に到達した。実力が徐々に評価されてきた結果と言える。

Q. 米国株と日本株の違いをどう見る?
米国株(NASDAQ)は8月の乱高下から順調に回復し、最高値更新や2万ポイント超えを達成している。一方、日経平均はもたついている印象があるが、これは日本株が出遅れているだけだ。逆に米国株は順調に見えるからこそ割高で、危険水域に来ていると見ている。
目先のアメリカ株は10〜15%程度の下落がいつあってもおかしくない。今後1年以内に大幅調整が起きる確率は80%以上あるだろう。
Q. 米国経済の現状はどうなっている?
米国のインフレ率は、コロナ禍で一時9%を超えたが、現在は2%台まで落ち着いてきた。直近発表された数値も2.7%と市場予想通りで、これを受けてFRBの12月利下げはほぼ確実視されている。ただし、来年以降はインフレが再燃する兆しもあるため、利下げは断続的になるだろう。
労働市場も、失業率は4.2%と若干上昇したものの依然として低く、雇用者数も回復している。また、消費者マインドは45ヶ月連続で緩やかに改善している。ガソリン価格の低下も米国民のマインド改善に寄与している。ただし、低所得層はまだインフレに苦しんでいる点に注意が必要だ。

Q. 米国消費の強さはどこから来ている?
米国の消費は顕著に強い。小売売上高は7月にAmazonのセールで跳ね上がった後、8月にわずかにマイナスとなったが、9月・10月は再び高い伸びを記録している。
この強さの背景には実質賃金のプラスがある。インフレ率よりも賃上げ率が高いため、実質的な購買力が増している。さらに、ここ数ヶ月はそのプラス幅が拡大している。
参考までに、日本の実質賃金も2年以上のマイナスからようやく水面上に出てきそうだ。直近の数値はプラスマイナスゼロとなっており、インフレ率も落ち着いてきたため、来年は日本でも実質賃金がわずかなプラスを維持できるかもしれない。
Q. トランプ政権の影響はどうなる?
トランプ次期大統領は不法移民を大量追放する方針を示している。仮に1100万人規模の全てを追放することは現実的ではないが、ある程度の移民が帰国することになれば、米国では人手不足が生じ、賃上げが必要になる。その結果、企業は価格転嫁せざるを得なくなり、賃金は上がるがインフレも再び強まる可能性がある。
FRBは金融政策においては政治的配慮をあまりせず、物価の安定と雇用の最大化という法律で定められたミッションに従って行動する。トランプ大統領がパウエルFRB議長に対して圧力をかけても、前回のトランプ政権時代と同様、FRBは淡々と金融政策を運営するだろう。
Q. 米国株の懸念点は?
懸念材料の一つがクレジットカードの延滞率だ。これは世代を問わず上昇しており、13年ぶりの高水準に達している。物は売れているが、カードの引き落としができていない人が増えており、このまま高止まりすれば消費行動のスローダウンにつながる恐れがある。
ただし、最新データでは若干下がり始めている兆しもあり、この傾向が続けば米国消費は堅調さを維持するだろう。米国経済が「ソフトランディング」(景気の軟着陸)できる確率は7〜8割と見ている。

Q. 日本企業の業績はどうなっている?
日本企業の今年度の予想純利益は、会社側発表では3.1%増、市場予想では2.8%増となっている。上半期の実績は過去最高を更新し増益だったにもかかわらず、年度予想が3.1%増ということは、下半期に大幅減益を想定していることになる。
しかし、米国経済は堅調で、日本国内の景気も悪くなく、為替も150円程度で比較的安定している状況を考えると、下半期も前年比で横ばいか若干の増益が見込める。来春時点では3〜5%程度の増益で着地する可能性が高い。
実際、過去10年間のデータを見ると、中間決算時点の予想と比べて期末実績が上振れした企業は全体の約3分の2を占めている。日本企業は予想を保守的に出す傾向があり、特に今年は為替変動や新政権の関税政策など不確実性が高いため慎重な見通しを示している。
Q. 日経平均の見通しは?
今の日経平均のPERは15倍台後半から16倍程度。市場心理が横ばいでも、1株あたり利益(EPS)が上がれば自動的に株価は上昇する。
4万円台はいずれ定着するだろうが、大きく上昇することも期待しにくい。米国経済がソフトランディングできれば、2025年度も3〜5%程度の増益が見込め、来年末時点では4万2000円程度まで上昇する可能性がある。
ただし、来年は変動の激しい1年になる見込みだ。米国株の割高感による調整リスクや、トランプ政権の予測不能な政策などにより、市場は上下に揺さぶられるだろう。短期投資家にとってはやりがいのある年になるが、難しい局面も多いと予想される。
Q. 個人投資家はどう対応すべき?
個人投資家は、積立投資による分散投資か、相場が下がった時にまとめて投資するのが良い。変動が激しい時こそ、安く買えるチャンスが何度も訪れる。
短期的な乱高下に一喜一憂せず、10年、20年先を見据えることが重要だ。トランプ政権はどんなに長くても4年間だが、資産形成のゴールは10年後、20年後、あるいは30年後にある。長期的に見れば日経平均もS&P500も現在より高くなっているはずだ。
興味深いことに、今年8月5日の大幅下落時には、日本の個人投資家は買い越していた。これは日本人の金融リテラシーが向上し、長期投資の考え方が根付いてきた証拠と言える。来年はさらに投資家としてレベルアップする1年になるだろう。