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日本のりんごは世界一。農業はアジアで稼げ
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2024年12月10日

衰退が続く日本の農業。しかし、品質、美味しさでは世界トップレベルだ。りんごに集中してアジアに輸出し、急成長を遂げている日本農業。そのトップである内藤祥平CEOに、日本の農業の課題とポテンシャルについて聞いた。 <ゲスト> 内藤祥平|日本農業 代表 1992年生まれ。慶應義塾大学法学部在学中にイリノ...
日本農業の「勝利のストーリー」—市場拡大と高品質を武器に世界へ挑む
日本の農業は衰退産業と見られがちだが、アジア市場の拡大という新たなチャンスが生まれている。日本農業CEO・内藤祥平氏が語る日本農業の可能性と挑戦について紹介する。

Q. 日本の農業の最大の課題は何ですか?
衰退産業のゲームのルールで戦い続けていることが最大の課題だ。これまでの日本農業は、需要が伸びない市場で戦ってきた。産業というものは本来、需要が伸びていくから供給を増やし、効率性を上げる投資をする。しかし農業は特殊な産業で、戦後は輸入品がどんどん入ってきて国内需要が徐々に落ちていく中で、供給側も生産性を上げるインセンティブが働かなかった。そのため小規模で分散した非効率な状態を維持しながら何とかやってきたというのが実情だ。
ビジネス的視点が欠如していたのもその理由の一つだが、伸びない市場で生産性を上げても単価が下がるだけなので、それは当然の帰結だった。
Q. 現在、日本農業に新たなチャンスは生まれていますか?
ゲームのルールが完全に変わり始めている。海を一歩超えたアジア諸国では、経済発展によって美味しいものをさらに食べたいという人々が増加し、日本の農産品や食材への需要が大きく上がり始めている。これまで需要が下がっていたビジネスが、海外のニーズを取り込むことで需要が上がっていく異なったゲームになっていくのが、これからの日本農業の可能性だ。

Q. 日本農業はどのような戦略で市場に挑んでいますか?
伸びているアジア市場を効率的に早く大きく取りに行くことを目指している。そのためにバリューチェーンの川上から川下まで、海外市場を前提にした事業構造を作り上げている。
具体的には、生産面では大規模で効率的な生産方法を導入し、農家と協力してその方法を広げている。中間業者を挟まず農家から直接大量に仕入れ、画像認識技術などを活用した大規模なパッキング設備に投資し、グローバル市場で棚を確保して効率的に販売するという一気通貫の仕組みを構築している。
Q. 新しい生産方法とは具体的にどのようなものですか?
従来の日本のリンゴ栽培は原生的な四方八方に枝が伸びる木だったが、我々が導入している方法では、リンゴの木を細く仕立てて列状に並べる。これはワイン用ブドウの棚のような形で、同じ面積に木がたくさん植えられるため、ヘクタールあたり3倍の量が収穫できる。
さらに収穫作業も効率的で、機械も導入しやすいため、リンゴ1kg作る生産原価が半分以下になる。こうした技術はグローバルでは20年前から広がっていたが、日本ではまだ導入されていなかった。

Q. 日本の農業には強みがあるのですか?
日本の農業は効率は悪くても、品質を徹底的に追求してきた。需要が伸びない中で生産性向上に投資できなかった代わりに、同じ胃袋の数でも1円でも高く売れるように品質を追求した。これは普通の資本主義社会ではあまり行われない追求だが、日本人はそれを極めてきた。
その結果、日本の農産物は世界一美味しいと言っていい。例えば日本のリンゴは世界で最も美味しい。その理由は、日本では品種を作る際に生産性ではなく美味しさを最優先してきたからだ。
Q. 海外市場ではどのような評価を受けていますか?
日本では価値が低いと思われている大玉のリンゴが、台湾の旧正月などでは贈答品として非常に高く評価され、1玉800円程度(日本の4倍)の価格がついたりする。日本ではあまり重視されない特性が海外では高く評価されることがある。
現在、アジア10カ国で販売しており、中国は検疫の問題で輸出できないため、台湾と香港をメインに、東南アジアも成長している。インドにも一部販売しているが、コールドチェーン(低温物流)が遅れているため、品質で差別化を図る日本のリンゴにとってはまだ戦いづらい市場だ。
Q. 日本農業の現在の規模と成長性は?
昨年度の売上は53億円で、今年度は85億円を計画している。リンゴ市場全体は2000億円ほどあり、現在の売上は国内と海外で50%ずつの比率だ。リンゴ輸出のシェアでは10%程度を占めている。
農業もしっかりとした成長率を残せるビジネスだと考えており、それを実現していきたい。
Q. なぜリンゴに特化したのですか?
リンゴは代表的なフルーツで海外からの需要も高かったという理由もあるが、論理的に考えてもいくつかのメリットがある。まず、リンゴは貯蔵できるため1年間通して売上を立てられること、市場規模が大きいこと、そして生産地が青森県に集中しているため、ここを集中的に開拓すれば強くなれるという点だ。
リンゴは最大1年間貯蔵可能で、品質によっては味もほとんど変わらない。ただし貯蔵コストがかかるため、旬から外れるほど価格は上がる傾向にある。

Q. 日本の農業が政策面で求めることは何ですか?
輸出促進と農地の集約、大規模生産の促進、そしてそれをつなぐ物流網の構築が重要だ。つまり、これまでの衰退産業のルールに使っていたリソースを、成長産業のゲームに使うリソースに振り替えることが最も重要だと考えている。
Q. 日本の農業は品質だけで国際競争に勝てるのですか?
勝てる。日本は農家のこだわりで50年、60年と品質追求を続けてきた。海外も品質向上に努めているが、この日本の強みはあと10年、20年は続くと思われる。日本人の「オタク的」なこだわりを活かせる産業として、農業には大きな可能性がある。