コミュニケーションSS
芦屋市長・髙島崚輔と考える教育改革
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2024年12月12日

職場の人間関係、伝える力、聴く技術などコミュニケーションスキルを学ぶ。ハーバード卒で芦屋市長の髙島崚輔氏が目指す教育のあり方とは? <ゲスト> 髙島崚輔/兵庫県芦屋市長 灘中高→東京大学→ハーバード大学 令和5年5月、26歳の若さで芦屋市(兵庫県)の市長に就任 公式サイト takashimary...
「学校の教育の質を上げるのが最重要課題」兵庫県芦屋市の市長が語る教育改革と対話の重要性
教育の質を向上させるためには先生にゆとりを作ることが欠かせない。市長の最大の使命は市民の可能性を開くこと—。兵庫県芦屋市の高島崚輔市長が、野田クリスタルとの対談で教育改革や市政運営の考え方について語った。
Q. 市長として最重要課題は何ですか?
学校の教育の質を上げることが私の中での最重要課題です。子供たちの学びの質を向上させるためには、先生に余裕がないと始まりません。そのため、まずは先生にゆとりを作るという観点から働き方改革を大事にしています。
具体的には、従来の「研究指導」という制度を変更しました。これまでは教育委員会が学校を指定して研究テーマを与える形でしたが、今年からは自分で研究したいという先生が手を挙げる形に変えました。その先生が外部から講師を呼んだり、視察に行ったりする費用を市が負担する仕組みです。
Q. 中学生との対話から実際に学校が変わった例はありますか?
中学校を回って給食を一緒に食べながら、「この学校でどういうところを変えたら良いと思うか」「最近困っていることはないか」といった話をする機会を設けています。
ある回では、20個ほど校則の改善点を挙げてきた生徒がいました。市長の権限では直接変えられないので、「作戦会議をしよう」と車座になって話し合いました。「誰が反対しているのか」「校長先生は何と言っているのか」「応援してくれる先生はいるのか」など、様々なアイデアを出し合いました。
3ヶ月後に連絡があり、「3つの校則が変わりました」と報告がありました。これは中学生が自分たちで課題を乗り越えた大きな成功体験になったと思います。

Q. 小学生の児童会選挙についての興味深い例を教えてください
最近、小学校の児童会選挙が盛り上がっているようです。選挙に興味を持ってくれた小学生が増えているのは嬉しいことです。
ある児童が「宿題をなくす」という公約を掲げて当選しました。大人からすると「ポピュリズムか」と思うかもしれませんが、その子の主張は「勉強はやらされてするものではなく、自分からするもの。宿題のように強制されて学ぶのはどうか」という論理でした。
当選後、その児童は職員室の先生を一人ずつ回って対話を続けました。その結果、学校側も無視できなくなり、職員会議で話し合った結果、行事の時期の宿題を減らすという改善につながりました。子供がこうして行動を起こし、大人側も変わってきているのは良い傾向だと思います。

Q. なぜそこまで教育にこだわるのですか?
市長の最大の使命は市民の可能性を開くことだと考えています。行政は「マイナスを0にする」ことが目立ちがちですが、元々個人個人が持っている可能性を最大限に引き出し、開花してもらうような環境作りが重要です。
教育はそれに特化できる分野であり、芦屋市では小学校から中学校までの9年間を義務教育として預かることができます。この期間を通じて市長としての使命にチャレンジできるのです。
また、教育をしっかり行うと学校が地域のコミュニティの核になります。学校が元気になれば地域も元気になる。子供たちが前向きに活動する姿を見て、大人も「頑張らなければ」と変わっていく効果も期待しています。
Q. 芦屋市の学力と学習意欲のギャップについてどう考えていますか?
芦屋市は学力がとても高いです。例えば英語のスピーキングの点数は全国平均の1.5倍です。しかし一方で、「学びへのやる気」「学びが役に立っている」「学校が楽しい」といった指標は平均以下なのです。
このギャップを埋めることが重要で、単に「テストで100点取るための勉強」ではなく、「学ぶことは面白い」というモチベーションを高める取り組みが必要です。そのために一人ひとりに合った学びの提供を進めています。
Q. 学校での学び方をどのように変えようとしていますか?
従来の「全員が教室に座って黒板を見て板書を写す」という形から変化させようとしています。例えば、タブレットを使って教室の好きな場所で学んだり、床に座って勉強したり、友達と話しながら学んだり、あるいは一人で黙々と取り組んだりと、子供たちにもっと学び方を委ねる試みを始めています。
学習進度も本来は子供に合わせるべきです。病気などで休むと「もう終わり」という感覚があるのはよくありません。人生にはいろいろなことがあるので、学習進度も子供に合わせていくことが大切です。教える側の都合で「4月から5月はこれ」と決めるのではなく、子供の進度に合わせる方向に変えていきたいと考えています。
これによって教員の負担が増えるという懸念もありますが、タブレットやAIを活用した教材で自分で学べる環境も整ってきています。先生が1から100まで全部教えるのではなく、テクノロジーをうまく使いながら先生がサポート役に回るという学びのあり方に変えていきたいと思っています。

Q. 通知表のような数値評価について、どのようにお考えですか?
通知表を出すことは実は義務ではありません。みんなが「なんとなくやっている」状態です。5や3といった数値だけでは子供の成長が見えません。日頃の頑張りをどう評価で伝えるかは重要な課題です。
親からすると「あなたは3」「あなたは1」という数字だけが見えてしまいます。勉強しても「3」の子もいますし、3ヶ月間学校を休んだら「もう終わり」という現状もあります。学びは積み上げですが、病気などで休んだらもう追いつけないというのは良くありません。
評価のあり方ももっとしっかり考えなければいけません。子供一人ひとりの成長をどう伝えるかが大切です。
Q. 市長として職員との対話をどのように行っていますか?
行政は幅広い仕事を扱うので、全ての専門分野を理解することはできません。そのため役割分担をしっかり行うことが重要です。私は方向性を決めることが仕事で、細かい具体的なことは各専門分野の職員に任せています。
市長が直接会話するのはどうしても一定の役職以上の人になりがちなので、現場の声を聞くのは難しい課題です。そこで「同い年と話す会」を開催しました。30人ほどの同世代の職員が集まり、事務職員、消防士、保育士、ごみ収集担当者など様々な職種の人と話し合いました。様々な現場で頑張っている職員の姿を理解できたのは良かったです。

Q. なぜ国や県ではなく市長という立場を選んだのですか?
私は行政を良くしたいという思いがあり、国、県、市のどのレベルでも良いと考えていました。その中で市が一番面白いと思っています。市でできることは実はとても多いのです。
確かに外交や防衛は国にしかできませんが、日常生活に根差したサービスのほとんどは市の仕事です。世の中を良くしようと思った時に、市が果たしている役割は非常に大きく、実は市長が一番世の中を変えられると考えています。何かのステップや経験のためではなく、今これが最も良い選択だと思って市長をしています。