PIVOT TALK BUSINESS
日本人の英語の発音を飛躍的に改善する方法
(120)
5,911回視聴
2024年12月7日

英語のスピーキング力、リスニング力を高めるための柱となる発音。大人が発音を改善するにはどうすればいいのか?そのヒントが英語音声学にある。英語音声学のプロである青山学院大学の米山明日香准教授に「大人の発音勉強法」を解説してもらった。 <ゲスト> 米山明日香 大学卒業後、英国University Co...
日本人が2カ月で英語発音を劇的に改善する方法 - 青山学院大学准教授が解説
「発音記号なんて覚えなくてもいい」「耳で聞いて真似ればいい」という英語発音指導の現状に疑問を投げかける専門家がいる。青山学院大学准教授の米山明日香氏は、「科学的根拠に基づいた発音学習が、日本人の英語力を飛躍的に向上させる」と主張する。母音が5つしかない日本語と比べ、英語には20数個もの母音があるという事実。しかし、米山氏によれば、その違いを体系的に学べば、大人でも短期間で発音を劇的に改善できるという。

Q. 日本人の英語発音教育の現状と問題点は?
最近は発音の重要性が認識されつつありますが、学校教育では依然として発音指導が不足しています。教員養成課程で「英語音声学」が必修ではないため、教える側も発音の科学的知識を持っていないことが多いのです。
また、文部科学省の学習指導要領では発音記号の使用が曖昧に規定されているため、多くの学校で教えられなくなっています。以前より状況は悪化しているとも言えます。
週の授業時間数も限られており、高校・大学受験では文法やリーディングが重視されるため、発音練習の時間が確保できません。ネイティブ教員(ALT)も増えていますが、「聞いて真似る」だけの指導では限界があります。これは音楽のメロディーを聴いただけで楽譜に書き起こせと言うようなもので、大人の学習者には非常に困難なのです。

Q. 発音が悪いとどんな問題が生じますか?
最も深刻なのは「通じない・聞けない」という基本的なコミュニケーション問題です。海外では発音が悪いと相手が待ってくれなかったり、苛立たれたりすることもあります。
学校でも発音を笑われた経験は学習の障害になり、英語嫌いにつながります。また、発音力はリスニング力と直結しているので、発音ができないと聞き取りもできません。
発音コンプレックスも大きな問題です。YouTubeなどで「ネイティブが日本人の発音をチェック」する動画が人気ですが、これが「自分の発音はダメだから話すのをやめよう」という消極的姿勢を助長することがあります。言語に優劣はないのに、優劣をつけるような風潮は学習意欲を削ぐのです。
Q. AI時代になれば英語発音は不要になるのでは?
むしろ逆です。AI時代だからこそ、発音を含むスピーキング能力が差別化のポイントになります。AIツールで翻訳や文章作成が簡単になる一方、対面コミュニケーションの価値は高まっています。
コロナ禍以降、Zoomなどのビデオツールでのやりとりが増え、書くよりも話す能力が重要になっています。ビジネスでも直接会って話すことの価値は変わりません。口頭コミュニケーションはAI時代でもなくならない重要なスキルです。

Q. 「通用性のある英語発音」とは何ですか?
目指すべきは「通用性のある発音」です。これは相手が外国人であれ、ネイティブであれ、負担なく意味が理解できる発音のことです。
ネイティブのように完璧に話せなくても、相手にストレスを与えない発音ができれば十分です。極端な「ネイティブ至上主義」に陥る必要はなく、科学的な音声学の知識を活用して、効率的に改善できる部分から取り組むべきです。
Q. 英語音声学とは何ですか?
音声学は発音の科学です。単なる「音楽」ではなく、科学的根拠に基づいた学問です。音声学には話し手に焦点を当てた「調音音声学」、聞き手に焦点を当てた「聴覚音声学」、音が伝わる過程を研究する「音響音声学」があります。
この学問は古く、紀元前から研究があり、16〜18世紀にイギリスで確立されました。電話も音声学者が開発したもので、私たちの生活に密接に関わっています。
日本人が英語を学ぶ際には、言語間の音の違いを研究する「対照音声学」が重要です。これにより、日本語にない英語の音を客観的に捉え、効率的に学ぶことができます。

Q. 発音記号を使った学習と「フォニックス」の違いは?
フォニックスは綴りと音の関係を教える方法で、例えば「cat」を「c-a-t」と発音するよう教えます。これは子供の学習には効果的ですが、英語には多くの例外があるため、大人の学習者には不十分です。
音声学に基づく発音記号学習は、音の科学的な違いを示すもので、大人の学習者に適しています。例えば「peak」の「i」と「pen」の「e」と「happy」の「y」は、日本語では同じように聞こえても、音質が科学的に異なります。これを発音記号で明示することで、正確な発音を習得できます。
Q. 大人でも発音は改善できますか?
発音改善は大人でも可能です。ただし、子供とは学習方法が異なります。言語習得の「臨界期」は10歳前後と言われ、それを過ぎるとネイティブのように自然習得することは難しくなります。
しかし、大人は論理的に音の仕組みを理解し、体系的に練習することで効率的に習得できます。英語の音声システムのうち、重要な20弱の音を意識的に学べば、1ヶ月程度で基本は習得できます。さらに3ヶ月程度の練習で「通用性のある発音」に到達できることが多いです。
特にTOEICなどで高得点を取っている人は、基礎知識があるため、発音を改善するだけで眠っていた英語力が活性化します。実際、発音を学ぶとリスニング力も大幅に向上するケースが多いです。
Q. 効果的な発音練習法は?
まず発音記号を使って個々の音の違いを理解し、基本となる20弱の音を集中的に練習します。その後、シャドーイングやディクテーション(聞き取って書き取る練習)を組み合わせると効果的です。
また、自分の発音をスマートフォンで録音し、フィードバックすることも重要です。人間には「フィードバック効果」があり、自分の発音を聞いて分析し、修正するサイクルが上達を促進します。
英語の自然な速度では音が消えたり変化したりするため、単語単位ではなく文単位で練習するのも効果的です。例えば「Would you like a cup of tea?」が実際の会話では「a cup of tea?」と短縮されることがあります。こうした知識と練習を組み合わせることで、リスニング力も向上します。