PIVOT TALK BUSINESS
新・富裕層マーケティング
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2024年12月5日

近年、株価上昇、パワーカップルの増加などにより急増している新富裕層。新しい富裕層はどのような人たちなのか?どんな価値観を持っているのか?新富裕層向けマーケティングの示唆を含めて、博報堂富裕層マーケティングラボの三宅大介氏に聞いた。
若年層インカムリッチの消費行動 - 自己実現と価値観が鍵
「富裕層」というと高齢者を想像しがちだが、今注目されているのは若年層の高所得者層。彼らは「若年インカムリッチ」とも呼ばれ、パワーシングルやパワーカップルとして知られる存在だ。この層は自己実現や成長に強い価値を置き、消費行動も特徴的だという。

Q. 若年インカムリッチとはどのような層なのか?
若年インカムリッチとは、20代〜30代の若い世代で世帯年収が高い層を指す。いわゆるパワーシングルやパワーカップルと呼ばれる人たちだ。彼らの絶対数はそれほど多くないが、特に消費の面で注目すべきターゲットとなっている。
彼らの最大の特徴は、人生における主要なモチベーションが「成長」と「自己実現」にあること。仕事においても自己実現が目的となっている割合が高く、新しい知識や経験を追求して自分を成長させたいという意識が強い。このため、自己実現や成長に対して積極的に投資する傾向がある。

Q. 若年インカムリッチの内面的自己実現とはどのようなものか?
若年インカムリッチ層は、内面的な自己実現に積極的に投資する傾向がある。今後お金をかけたいものとして、語学学習、旅行、芸術などが高いスコアを示している。これはキャリアを見据えたり教養を磨いたりすることへのモチベーションが高いことを示している。
特に芸術やアートへの関心も高く、商品選択の面でもこうした要素が重視されている点は興味深い。若い世代がこのような領域に関心を持っていることは、消費傾向の変化を示す重要な指標だ。

Q. 外面的な自己実現についてはどうか?
外面的な自己実現の面では、化粧品、美容医療、サロン、ジム、フィットネスなどへの消費傾向が高い。特に美容医療は顕著に高いスコアを示している。これには永久脱毛なども含まれると考えられる。若年インカムリッチ層は「自分らしくあるための投資」を重視しており、これらのサービスを利用することで自分に自信をつけ、ビジネスや社交の場での印象を高めようとする意識が強い。
男性においても美容消費額が高く、一般的な若年男性と比較すると美容カテゴリーへの支出が顕著に多い。メンズコスメ市場も2017年から2024年にかけて約20%成長しており、男性用化粧水の平均価格も2019年から約300円上昇して1000円を超えている。
Q. 男性の美容消費について、ビジネスチャンスはどこにあるか?
男性向けの美容市場には大きなビジネスチャンスがある。女性向けには化粧品の体験施設が充実しているが、男性が美容商品を知り、体験できる場所はまだ限られている。また、男性は何を購入すべきかわからないことも多いため、サブスクリプションプランやパーソナライズされた提案など、デジタルを活用したサービスが今後増えると予想される。
Q. 若年インカムリッチ層の体験消費には特徴があるか?
若年インカムリッチ層は、忙しい中でも心身をリフレッシュできる体験としてサウナやキャンプを好む傾向がある。特にキャンプは一般的なイメージより若年インカムリッチ層に人気で、調査でも高いスコアを示している。彼らは単に物を消費するだけでなく、体験や意味を重視する傾向があり、これらのアクティビティは彼らのライフスタイルに合致している。

Q. 高級品の消費についてはどうか?
若年インカムリッチ層は高級品への投資も積極的だ。特に腕時計、宝石・ジュエリー、ファッション、インテリアなどに対して積極的にお金をかける意向が強い。
興味深いのは、特に若年インカムリッチの男性を中心に「リセールバリュー」を重視する傾向が見られること。「投資目的で腕時計を買ったことがある」「腕時計は資産価値が高いことが重要だ」という回答が相対的に高くなっている。男性は資産性や価値が下がらないことを重視する傾向があるようだ。
一方、女性に関しては「ご褒美消費」や高級ブランド品に対する意識が顕著で、「自分へのご褒美のために贅沢したい」「ブランド品が自信を与えてくれる」と考える傾向がある。キャリアや自己成長のリターンとして高級ブランド品を購入する意識が強い。
Q. 百貨店の外商サービスとの関係は?
興味深いことに、若年インカムリッチ層は百貨店の外商サービスを利用する傾向が高い。2024年の4-6月期も百貨店は好調で、インバウンドだけでなく国内消費もプラスに転じており、特に外商などを通じた若い人たちの消費が増えている。
彼らが外商を利用する理由としては、忙しい中で効率よく買い物をするためのプラットフォームやコンシェルジュ機能として活用していることが考えられる。また、希少なアイテムを入手する可能性が高まることも魅力の一つだ。
さらに、外商はキュレーションメディアやコミュニティとしての機能も果たしている。同じような商品やサービスを利用している人たちとつながりたい、ウイスキーやワイン、アートなどについてもっと詳しくなりたいという欲求を満たす場としても機能している。
Q. 若年インカムリッチ層の市場規模はどの程度か?
世帯収入1500万円以上の層は現在約200万世帯強と推定される。日本の世帯数自体はいずれ頭打ちになるとしても、共働き世帯の増加や賃金上昇を考えると、当面は拡大するマーケットと考えられる。
個人消費に関しては、特定の富裕層が消費する商品のボリュームはかなり大きい。一方で、インカムリッチ層はマス層に近い部分の人も増えており、こうした人たちの消費はマスマーケットにおいて少しずつ高価格帯の商品を増やし、長らくデフレだった日本経済の局面を変える可能性を持っている。
Q. 投資行動についてはどうか?
若年インカムリッチ層はNISAやiDeCoなどの制度を積極的に利用する傾向がある。従来の金融機関のターゲットは準金融資産が多い層だったが、この若年インカムリッチ層は将来的に重要な顧客となる可能性が高い。
こうした層を早めに囲い込み、中期的に育成していくことが金融機関にとって重要な戦略となるだろう。また、富裕層の中でも創業者(自分で富を築いた人)と二世(親から受け継いだ人)では消費行動や価値観が大きく異なることも考慮する必要がある。
Q. 若年インカムリッチ層へのマーケティングで重要なポイントは?
若年インカムリッチ層へのマーケティングでは、彼らの「成長欲求」をどう捉え、満たしていくかが重要だ。単に希少なアイテムが買えるというだけでなく、人とのつながりや新しい知識・教養を得られるプラットフォームを提供することが効果的。
彼らは「自分が一つ上の自分になれる」「成長した実感を感じられる」体験を重視しており、これをどう提供していくかがポイントとなる。また、彼らは現役世代の富裕層であり、将来のウェルスリッチになっていく人たちでもあるため、将来を占う意味でも非常に重要なターゲットだ。