PIVOT TALK BUSINESS
新しいPRの教科書。PRの5原則
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2024年12月4日

PRの仕事とは何か?PRの5原則とは何か?ダメPRパーソンとイケてるPRパーソンの違いは何か?ケーススタディと合わせ、新しいPRの技術を、博報堂執行役員で博報堂ケトル創業者の嶋浩一郎氏に語ってもらった。
PRの新常識:合意形成技術とビジネス拡大の秘訣
マーケティングとPRが両輪となって初めて、ビジネスは真に前進する。PRとは単なる情報発信ではなく、社会における合意形成を進めるための技術だ。そのひとつの手段がパブリシティであり、新しい概念やライフスタイルの普及はビジネスチャンスそのものである。

Q. PRの本質とは何ですか?多くの人が誤解している点は?
PRは単にメディアへの露出を獲得する「パブリシティ」だけではありません。本質は「合意形成を進めるための技術」です。パブリシティはその技術の一部に過ぎません。
世間ではPRパーソンの仕事といえば、記者会見の運営やプレスリリースの配信、メディアに取り上げてもらうための活動というイメージが強いでしょう。確かにテレビドラマで俳優が着用した服が売れたり、情報番組で紹介された商品がスーパーで品切れになるなど、パブリシティの効果は大きいものです。
しかし、PRの本来の役割はもっと広く、深いものです。PRとは「新しい当たり前」を世の中に普及・浸透させていく仕事なのです。例えば「男性も育児に参加する」「ライドシェアで移動する」「地方に住みながら働く」といった、従来の常識とは異なる新しい価値観やライフスタイルを社会に定着させていくプロセス全体を担うのがPRの役割です。

Q. 新しい当たり前を作るPR活動は、どのようにビジネスチャンスにつながりますか?
新しい概念や価値観の普及は、そのまま新たな市場創造につながります。例えば「朝活」という概念が広まると、ショッピングモールで朝イベントが開催できるようになりました。「グランピング」という新しいキャンプスタイルが定着すれば、高級テントなどの新商品が売れるようになります。男性の育児参加が進めば、関連する商品やサービスが必要とされるでしょう。
このように、新しい概念を世の中に広めることは、その概念に関連する商品やサービスの需要を生み出します。PRの視点を持つことで、未来の市場を自ら創造できるのです。
Q. PRの5原則とは何ですか?特に重要なのはどの原則ですか?
PRの5原則のうち、特に重要なのは「第三者を頼る」と「マルチステークホルダーへのアプローチ」です。
「第三者を頼る」とは、メディアなど影響力のある第三者の力を借りて新しい概念を広めることです。広告とは異なり、自分たちで直接メッセージを発信するのではなく、信頼される第三者を通じて伝えることで説得力が増します。
しかし今日特に強調したいのは「マルチステークホルダーへのアプローチ」です。多くのPRパーソンはこの部分が十分できていません。これは、様々な立場の人々、時には反対意見を持つ人々も含めて働きかけることを意味します。
例えば、男性の育児参加を進めたい場合、新聞社に取材を依頼するだけでなく、漫画の編集者に「育メンが登場する漫画を作りませんか」と提案したり、ドラマプロデューサーに「育児に熱心な父親が主人公のドラマはどうでしょう」と持ちかけたりします。さらには、ショッピングモールの責任者に男性トイレにおむつ替えコーナーの設置を提案したり、企業の総務部に男性育休制度の充実を働きかけたりするのです。

Q. 反対意見を持つ人々とどのように対話すべきですか?
PRの力量が問われるのは、特に「対話を続ける」という点です。新しい概念には必ず反対する人がいます。民泊に反対する住民、ライドシェアに不安を感じるタクシー業界など、どんな新しいアイデアも一筋縄ではいきません。
そんな時、大切なのは批判を無視せず、対話を続けることです。反対意見を持つ人と共通の目的を見つけることが突破口になります。例えば民泊に反対する自治体に対しては「関係人口を増やすという政策目標に民泊が貢献できるのでは」と提案したり、空き家問題の解決策として提示したりできます。
反対意見と向き合い、握手できる部分を探していくことで、新しい概念がより洗練され、より多くの人に受け入れられるようになります。これはPRパーソンの重要な仕事であり、高度な交渉力と創造性が求められます。
Q. メディアとの関係構築において、ダメなPRパーソンと優れたPRパーソンの違いは何ですか?
ダメなPRパーソンは、ただプレスリリースを持って行って「掲載してください」と言うだけです。これは自分の言いたいことを一方的に伝えているに過ぎません。
優れたPRパーソンは、「この情報がメディアの読者や視聴者にどのように役立つか」を考え、メディアの視点に立って提案します。各メディアには固有の人格があり、それぞれの読者や視聴者のために何を伝えたいかという思いがあります。その思いと自社の商品やサービスが共通して提供できる価値を見つけ出し、提案できるPRパーソンが真に優れています。
パブリシティはPRのすべてではありませんが、パブリシティの仕事には合意形成のテクノロジーのエッセンスがすべて詰まっています。メディアとの関係構築は、PRパーソンにとって重要な修行の場なのです。
Q. PRパーソンに必要な資質は何ですか?
未来を想像する力がPRパーソンにとって重要です。「この新しい概念が世の中に普及したらどうなるか」を具体的にイメージできる人がPRに向いています。
例えば、ライドシェアが普及した世界では「ライドシェアで人気の車ランキング」が発表されたり、カー用品店に「ライドシェア用品コーナー」ができたりするでしょう。そうした未来像を描き、それを実現するために動くべきステークホルダーを特定し、巻き込んでいくのがPRパーソンの仕事です。
この点で、PRは企業家精神にも通じるものがあります。新しい事業を創造する力と、新しい当たり前を作り出す力は、根本的に似ているのです。

Q. マーケティングとPRの関係はどのようなものですか?
マーケティングとPRは、ビジネスを進めるための両輪です。どちらか一方だけでは不十分で、両方がうまく機能してこそ、ビジネスは前進します。
特に現代は、ステークホルダー経営の時代です。かつては消費者だけを見ていればよかった時代もありましたが、今はメディア、学術界、行政、競合他社など、様々なステークホルダーの合意がなければビジネスを展開しにくくなっています。
マーケティングが主に消費者に向けた活動であるのに対し、PRはより広い社会的視点から多様なステークホルダーに働きかけます。両者が協力することで、ビジネスの可能性は大きく広がるのです。