PIVOT TALK BUSINESS
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2024年11月25日

「年金は破綻している」「未納率が4割を超えている」「積立方式に改革すべき」など俗論が飛び交う年金議論。なぜ俗論が繰り返されるのか?俗論のどこが過ちなのか?雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏が熱弁する。 <ゲスト> 海老原嗣生|雇用ジャーナリスト 大手メーカーを経てリクルートエイブリック(現リクルート...
年金制度について多くの誤解が蔓延している。年金未納率が50%近くあり制度が破綻するという説から、消費税に置き換えるべきという主張まで、様々な「解決策」が提案されている。しかし雇用ジャーナリストの海老原嗣生によれば、日本の年金制度は世界的に見ても優れた仕組みであり、適切な対応さえ続ければ将来的にも安定するという。本記事では、年金に関する誤解と真実を探る。

国民年金の未納率が4割を超えて5割に迫るというデータが報道されることがある。しかし実態は大きく異なる。
未納率が50%近いというのは自営業者などが加入する第1号被保険者のデータだけを見た場合の話だ。サラリーマンや公務員など第2号被保険者、その配偶者である第3号被保険者も含めた全体で見ると、未納率は約12%程度まで下がる。
さらに、この未納者の中には免除や猶予の対象者も多く含まれている。母子家庭や生活保護受給者は免除され、学生は猶予される。これらを除くと、「悪意の未納者」は全体の4.8%程度にすぎない。さらに年度末までに未納となっていても、2年後までに後払いできる制度もあり、実質の未納率は4%を切る水準だ。
この案は維新の会などが主張しているが、実現すれば国民負担は大幅に増加する。
基礎年金を全て消費税に置き換えるには、5%の消費税率引き上げが必要となる。現在年金を納めている人への返還や、既に年金を受給している高齢者への支給を考慮すると、さらに4〜5%の追加が必要で、合計9〜10%の消費税率引き上げが求められる。
年収400万円の人の場合、現在の国民年金負担は年間約10万円だが、消費税5%上乗せなら年間20万円、9%上乗せなら36万円の負担になる。これは個人の負担増だけでなく、企業負担(現在約6兆円)がゼロになるという点も重要だ。さらに、現在免除・猶予されている低所得者も消費税は払わざるを得なくなる。
つまりこの案は「企業が得をして、貧困層が大損をして、一般の人もかなり損をする」仕組みと言える。
積立方式とは自分で積み立てたものを自分が老後にもらう方式、不可方式とは現役世代が高齢者を支える方式だ。一見すると積立方式の方が少子高齢化の影響を受けないように見えるが、実際には大きな問題がある。
まず制度開始当初、年金制度が始まる前から年齢を重ねていた人々への支給をどうするかという問題がある。積立方式では彼らは何も積み立てていないので、税金で補填する必要が生じる。
また、積立方式では69歳までの分しか積み立てていないが、現在の平均寿命は男性で82歳、女性で85歳。この差をどう埋めるかという問題も発生する。
対して不可方式は現時点での即時決済のため積立金が不要で、インフレの影響も受けにくい。人口減少が一定になれば負担も安定する。そのため、世界の大国は基本的に不可方式を採用している。
よく「騎馬戦型」から「肩車型」へと支え方が変わり、若者の負担が増え続けるという図を目にする。しかし現実はそう単純ではない。
確かに出生率が急激に低下した時期は若者の負担が増加する。しかし日本の出生率は2005年の1.26を底に1.2〜1.45の間で安定しており、減り方は一定になりつつある。
人口減少が一定の率で進むなら、現役世代の1人当たり負担も一定に近づく。例えば「毎世代0.8倍に人口が減る」状態が続けば、1人が支える高齢者の数も一定に収束する。
日本の年金制度は2004年に「100年安心プラン」で改革され、マクロ経済スライドを導入した。これにより2018年以降、保険料率は18.3%で固定され、それ以上は上がらない仕組みになっている。給付額を調整することで財政的安定を図る設計だ。
年金制度には実は柔軟な選択肢がある。
まず65歳から70歳まで働き続ければ、所得代替率(現役時代の収入に対する年金の割合)は54.4%になる。国民年金も65歳まで納付できるようにすれば57.9%まで上がる。
さらに受給開始年齢を遅らせる「繰り下げ受給」を活用すれば、1年ごとに8.4%ずつ年金額が増える。70歳からの受給なら約42%増、75歳からなら84%増となる。
また最近の年金学会では「WPP」(Work Longer, Private Pensions, Public Pensions)という考え方が広まっている。これは「長く働き、企業年金や個人年金を先に使い、公的年金は後から」という戦略だ。企業年金などを65〜67歳の間に使い、公的年金は67歳や70歳から受給開始するといった方法で、より豊かな老後が実現できる。
確かに1940年生まれの世代は払った額の6倍の年金を受け取れるのに対し、今の若者は2.3倍程度になる見込みだ。しかし、これには歴史的背景がある。
1940年代生まれの人々は戦中・戦後の貧しい時代を生き、無年金の親世代を介護する負担も背負った。また、当時は年金加入自体が任意で、多くの人が全く加入していなかったか、部分的にしか加入していなかった。
実際、2008年時点でも月額20万円以上の年金を受け取っている高齢者は15%程度しかいなかった。「昔の世代はもらい放題」というイメージは実態と異なる。