KUROFUNE
一般入試時代の終焉
(101)
8,199回視聴
2024年11月24日

日本に住む外国人が、 「ニッポン」の文化や経済をテーマに議論。今回のテーマは「学歴社会」。世界と日本を比較します。 <ゲスト> ○小宮山利恵子|スタディサプリ教育AI研究所所長 早稲田大学大学院卒。 衆議院秘書、 ベネッセコーポレーション、 グリーを経てリクルートに入社。 現在はスタディサプリ教育...
「学歴は10年後に価値がなくなる」元韓国人東大生と高学歴調査の専門家が語る、これからの受験とキャリアの正解
日本でも海外でも学歴社会は健在だが、AIの台頭とともに大きく変わりつつある。アメリカ、韓国、日本の教育事情に詳しい専門家たちが、これからの時代に本当に必要な学びについて語った。

Q. 世界の学歴社会の現状はどうなっていますか?
アメリカも学歴社会と言われているが、実際はどうなのだろう。UCバークレー出身のアナンヤは「アメリカは学歴社会ではないと言いたいところだが、かなりそうだと思う」と話す。特にコンサルティングや銀行業界では学歴が重視される。ただ、アメリカの大学入試はテストスコアだけでなく、エッセイや課外活動も評価される点が日本と異なる。
韓国は「世界一の学歴社会」とカリスは断言する。「韓国では学歴がないことは人権がないに等しい」とまで言い、高校3年生は1日15時間の勉強が当たり前だという。学力レベルも日本より高く、「東大生よりソウル大生の方が5倍から10倍優秀」と語る。
日本では従来の「学歴社会」が変化しつつある。リクルートの小宮山利恵子は「これまでの学歴社会は大卒までのことを指していたが、新しい学歴社会は大卒以降の社会人になってからの学び直しやリカレント教育を含むものになる」と指摘する。
Q. 日本の受験事情はどう変わってきていますか?
受験研究家の伊藤滉一郎によれば、日本では特に中学受験が加熱している。「子供の数は減っているのに、受験者数は毎年増えている」という謎の現象が起きているという。また、大学入試では一般入試から総合型選抜(旧AO入試)や推薦入試へのシフトが進んでいる。
「今は私立大学では全体の50%以上が一般受験ではない方式で入学している。30年前は8割以上が一般入試だったことを考えるとすごい変化」と伊藤は説明する。
例えば、早稲田大学に入りたいと思ったら、一般入試よりも系列高校からの推薦枠を利用した方が有利になる場合もある。そのため大学側も附属中学・高校を増やし、早期囲い込みを図っている。
Q. 学歴フィルターは実在するのですか?
「誰もが知るような大企業では、やはりマーチ(MARCH:明治・青山学院・立教・中央・法政)以上、マーチカンカン同率(マーチ+関西学院・関西)以上という暗黙のフィルターが設定されている」と伊藤は語る。
企業側にとっては、何万人、何十万人という応募者から質の高い人材を効率的に選抜するための手段として、ある程度の学歴でフィルタリングすることは理にかなっているという側面もある。
一方で、メガベンチャーのエンジニア職などでは学歴社会が崩壊しつつあり、専門学校や高専出身者が活躍している例も増えてきている。しかし、伝統的な日本企業では新卒一括採用の流れが継続しており、大きな変化は見られない。
Q. 総合型選抜の増加で体験格差が広がっていませんか?
総合型選抜や推薦入試の増加に伴い、ペーパーテスト以外の要素が重視されるようになった。「首都圏の経済的に裕福な家庭は色々な体験を積めるが、地方の公立高校の子供はペーパーテストの技術しか教えられない。そこで体験格差が現実問題として生じている」と伊藤は指摘する。
この状況に対応して「体験を買う塾」も登場している。ボランティアやNPO活動の経験を塾を通じて得たり、エッセイやプレゼンの指導を受けたりして総合型選抜に備えるサービスが増えている。アメリカでは「レジュメビルディング」として既に一般的な概念だが、日本でも普及しつつある。
リクルートでは高校生向けに「企業家精神(アントレプレナーシップ)のプログラム」を提供しており、去年は2万6000人の高校生が参加した。リーダーシップやプレゼン力、グリットやレジリエンスといった非認知能力を伸ばすプログラムだという。
Q. 親はどのように子どもの教育と向き合うべきですか?
小宮山は自身の子育て経験から「子どもをほぼ放置することが重要」と話す。「勉強しなさいと一言も言ったことがない」という小宮山は、代わりに「好奇心を研ぎ澄ますような体験をさせてきた」と語る。
日本全国への旅行や、ルワンダ、ケニア、ドバイなど一般的ではない海外への旅行を通じて、「頭の中に『はてな』マークが浮かぶ」経験を重視した。そうすると子どもは自然と疑問を持ち、質問ができるようになり、対話を通じて問題解決力や論理力が身につくという。
「親の価値観を植え付けないことが重要。完全に放置するのではなく、子どもの興味に合わせて種をまいておく」というのが小宮山の考え。例えば子どもが海外に興味を持ったら連れて行き、そこで英語ができないと会話ができないことに気づかせれば、自然と英語の勉強を始めるという。
Q. これからの時代、学歴はどのくらい重要ですか?
カリスは「学歴は10年20年後には無価値になると確信している」と断言する。その理由としてAIの台頭により人間の労働の価値が変わることを挙げる。「AIと機械が優秀な労働を担うようになれば、学歴など必要なくなる」というのだ。
ただし「10年20年は学歴にある程度価値がある」とも語る。特に専門職を目指す場合は「絶対に取った方がいい」というのがカリスの見解だ。将来的にはベーシックインカムのような制度が導入され、クリエイティブな活動が重視される社会になると予測している。
伊藤は「これからの時代は手に職、専門性の時代」と考える。1世代前は「とりあえず勉強して、できればマーチ以上の学歴を手にする」のが正解だったが、これからは「個人それぞれの正解を見つけていく時代」になると話す。
アナンヤは「自分の好きなことから入るのが一番」と提案する。「自分のアイデンティティキャピタルを作ることが大事」と語り、自分の興味を追求することで将来的に仕事を創り出せる可能性も指摘する。
Q. 東京と地方、どちらが将来性がありますか?
伊藤によれば「東京の息苦しいサラリーマン社会を生き抜いていくのであれば、絶対マーチ以上の学歴が必要」だが、地方であれば「地元の国立大学に行って、地元のメーカーなどに入る」という選択肢もある。
例えば愛知県豊田市では豊田工業高校を卒業して地元企業で働く人の方が、東京の大学に進学してサラリーマンになるよりも年収が高いケースもあるという。また熊本では半導体産業の発展に合わせて熊本大学に半導体学科が新設されるなど、地方にもチャンスが生まれている。
小宮山も「地方の方がチャンスが実は多い」と同意する。中学受験して名門校に行くことにこだわるよりも、地方で自分に合った道を選ぶ方が幸福度が高い可能性もあるという。