PIVOT TALK FOOTBALL
日本代表が本大会までにすべきこと
(36)
1,923回視聴
2024年11月22日

インドネシア、中国に連勝し、W杯出場を決定的にした日本代表。両試合から見えた収穫と課題は何か?本大会までに何をするべきなのか?木崎伸也氏とミムラユウスケ氏に聞いた。
日本代表が攻撃的スリーバックで進化する理由【サッカー戦術分析】

Q. インドネシア戦と中国戦の振り返りから見えた日本代表の強みと課題は何ですか?
日本代表はインドネシア戦で4-0、中国戦で3-1と圧勝し、W杯予選での勝ち点を16に伸ばした。両試合からは攻撃的スリーバックによる流動的なポジションチェンジが功を奏し、相手の守備システムを混乱させる戦術が効果的だった。
特にインドネシア戦では、鎌田選手と森田選手のポジションチェンジが相手の守備を崩す要因となった。相手がツーシャドウに対してマンマーク気味に対応しようとすると、鎌田選手が下がり、森田選手が上がるという流れを作り出し、守備システムを逆手に取る動きが見られた。
一方で課題も明確になった。インドネシア戦では相手がスリートップで日本のスリーバックに対応し、3対3の状況を作り出した。また、オーストラリア戦とインドネシア戦に共通する課題として、攻撃に出ようとした際に守備の準備ができていないままカウンターを受ける場面があった。
Q. スリーバックというシステムについて、森保監督はどのような意図で採用していると考えられますか?
森保監督がスリーバックを採用している理由には複数の狙いがあると考えられる。まず、アジアカップでの反省を踏まえ、ビルドアップの安定性を向上させる意図がある。また、引いた相手を崩すための戦術的オプションとしての側面もある。
しかし専門家の見解によれば、現在のスリーバックは「仮の姿」であり、本大会のメインシステムではない可能性が高い。むしろ、様々な戦術オプションを用意しておき、相手や状況に応じて変化できる柔軟性を身につけるための過程と捉えられる。
中国戦の後半に見られた修正は非常に興味深い。スリーバックがややフラットな形から、より鋭いV字型に変化し、距離も広めに取りながら、状況に応じて誰かが降りてきてフォーバックになる形を取った。例えば町田選手がセンターバックになったり、久保選手が右に降りてサイドバックのような位置に入ったりするなど、流動的な動きを見せた。
「継続してそういう風にスリーバックなんだけども状況に応じてボランチが降りてフォーバックになったり、この試合では久保選手が右に降りてサイドバック的な位置に入り、鎌田選手が左でサイドバック的になったりした。誰が入ってもいいけどフォーバックになって、流動的に動くことで相手は掴めない」という戦術が徐々に高度になってきている。
Q. 小川航基選手と橋岡大樹選手のパフォーマンスをどう評価できますか?
小川選手については、日本代表の候補フォワードの中でクロスへの反応や空中戦での強さが際立っている。「クロスに入っていく強さがあった。強さというのは、ヘディングのヒットする強さもそうだし、相手よりも一歩前に行く強さ」という点で他の選手と差別化されている。
また興味深いのは、小川選手が自分の課題を認識し、それを克服しようとする姿勢だ。ポストプレーや楔のパスなど、これまで不得意とされていた部分にも積極的に取り組む姿勢が見られた。インドネシア戦前には、長谷部コーチと縦パスを入れる練習を行うなど、自分の弱点を改善しようとする姿勢が評価される。
一方、橋岡選手については、レギュラーと比較してまだ差があるという見方がある。特に1対1の場面でやや苦戦する場面が見られた。しかし、本来ウイングバックとして見られていた選手がセンターバックとしてカバーできたことは評価される点だ。ただし、現時点ではスタメンよりも「途中から投入して流れによってセンターバックかウィングバックかを選択できる選手」として起用する方が効果的かもしれない。
Q. 森保監督の戦術的な考え方や戦略についてどのような特徴が見えてきましたか?
森保監督は「勝負師」としての側面が強く、相手との駆け引きや戦略性に長けている可能性が高い。特に前回のワールドカップでのドイツ戦では、事前の準備と読みが的確だったことが明らかになっている。
興味深いのは、かつて「1つのやり方を突き詰めれば勝利の確率が上がる」と考えていた森保監督が、ワールドカップを経験して「オプションをたくさん持つことがさらに勝利の確率を上げる」という考えに変わったという点だ。
これまでの4年間は4バックを基本としていたが、現在は様々なシステムを試している。そのうちの一つの候補として、「センターバックを4人並べる4バック」があり、ビルドアップの際にサイドバックが内側に立ち位置を取るような形が考えられている。
森保監督の戦略は「選手すらもどのシステムに行くのか分からない状態で本大会に臨む」という可能性があり、これは相手の分析を困難にする効果がある。
Q. 日本代表はW杯予選をほぼ決めた今後、どのような戦略で臨むべきでしょうか?
日本代表はW杯予選をほぼ決めた現時点で、今後の戦略として以下の点が重要になる:
1. 選手層の競争を促進する - レギュラー争いを再度フラットな状態にして競争を活性化させること。森保監督はターンオーバーを積極的に行い、多くの選手に機会を与える可能性が高い。
2. ピーキングを意識する - 予選で良かったチームが本大会で失速する例は多い。早すぎる段階でチームが完成してしまうと伸び代がなくなり、また相手に研究されやすくなる。
3. 若手の登用 - チャーシーアンソニー選手や佐野海舟選手、塩貝選手など、新たな才能を試す機会になる。ただし、若手を入れすぎるとバランスが崩れる危険性もあるため、ベテラン、中堅、若手のバランスを考慮する必要がある。
4. システムの検証と発展 - 現在試しているシステムをさらに発展させるとともに、本大会で使用する本命のシステムを見極める時期になる。
「予選で良かったチームって意外と本大会でこける。予選結構苦しんだチームは本大会で意外と良かったりする。それは多分早い段階でチームが完成すると、そこからの伸びしろがない、プラス相手にも研究されやすいという状況があると思う」という点は非常に重要な指摘だ。
Q. 日本代表の攻撃面での課題はありますか?
日本代表の攻撃面での最大の課題の一つとして、ミドルシュートの少なさが指摘されている。データ分析によると、日本代表はミドルシュートの割合が減少しており、「丁寧に崩そうとしすぎている」傾向が見られる。
この問題は技術的な問題というよりも意識の問題であると考えられる。「ボールを受ける前からシュートを打とうと考えている選手が少ない」という指摘があり、「ボールを持っていい状態を作って判断してからプレイを選択する」という思考が強すぎる可能性がある。
これにより、攻撃のパターンが「崩して崩して崩して」という形になりがちで、テンポの早いシュートや大胆なシュートが少なくなっている。ワールドカップで優勝を目指すなら、「周囲を把握しておいて、反転した瞬間打つとか、ファーストタッチをちょっと大きく体が離して打つとか」といった判断の選択肢が必要になる。
具体的な例として、鎌田選手や遠藤選手はクラブでは積極的にミドルシュートを打っており、特に鎌田選手は2022-23シーズンにはヨーロッパ全体でエリア外からのシュート成功数が2位だった。このような能力をより代表でも発揮することが求められる。