MONEY SKILL SET EXTRA
インフレ時代の不動産サバイブ術【大槻奈那】
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2024年11月19日

株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを一流のプロの講義を受けて学ぶMONEY SKILL SETの応用編。今回はピクテ・ジャパン シニア・フェローで趣味が不動産投資という大槻奈那氏に2025年以降の住宅市場について聞く <ゲスト> 大槻奈那(ピクテ・ジャパン シニア・フェロー) htt...
住宅市場の今後はどうなる?金利上昇と物価高の中での賢い選択
物価上昇が続き、日銀も政策金利を引き上げる中、住宅市場はどう変化していくのか。多くの人が「マンションが買えない」と感じる時代に、住宅ローンの選び方や今後の見通しについて、金融のプロが解説する。

日本の住宅価格は本当に高すぎるの?
Q. 最近の住宅価格の状況はどうなっていますか?
マンション価格は全体的に上昇しており、2008年を起点とすると現在はその2倍になっています。一方で賃金はほとんど上昇しておらず、この差が「買いやすさ」を大きく低下させています。銀行も工夫して、共働き世帯にはペアローンをデフォルトとするなど対応していますが、それでも多くの人にとって住宅購入のハードルは高くなっています。
Q. 日本の不動産は海外と比べて安いと言われますが、実際はどうですか?
平均値でみると日本の住宅価格は高くはないという程度で、実際には坪単価や平米あたりの価格に換算すると、東京都心部の良い立地のマンションはニューヨークと変わらないという調査もあります。海外の高級物件は確かに10億円単位と高額に見えますが、それらは非常に広いスペースを持っています。
海外投資家が日本の不動産を購入する理由は単純な割安感ではなく、アジアの中で投資先として選びやすい国が限られていることや、規制面での問題、そして日本が暮らしやすい国であることなどの要素が大きいと考えられます。
Q. 日銀の利上げは住宅市場にどのような影響を与えますか?
日銀が政策金利を0.25%まで引き上げることを発表していますが、現時点では住宅市場への影響はほとんどないと考えられます。基準地価の上昇率の方がむしろ大きな影響を与えています。また、日本が利上げに進む一方で、アメリカは利下げ方向に進んでおり、このギャップにより円高に向かう可能性がありますが、不動産価格に対しては国内金利が重要なため、為替の影響は限定的です。
Q. 日銀はなぜ金利を上げるのですか?
インフレが進行しているためです。現在、消費者の物価上昇予想は実際の物価上昇率(3%未満)を大きく上回る11.5%程度となっています。このインフレマインドが定着すると、「物の価格はすぐに上がるから早く買わなければ」という心理が広がり、さらに物価を押し上げる悪循環につながる恐れがあります。
過度なインフレマインドを抑制することが必要で、そのために政策金利を上げることでインフレのスピードを調整する意図があります。しかし、物価上昇と賃金上昇のバランスも重要で、特に日本は賃金上昇が遅いため、物価上昇も緩やかにする必要があります。
Q. 住宅ローン金利は今後どうなると予想されますか?
政策金利が上がっていくとしても、住宅ローン金利が同じペースで上がるかは疑問です。銀行の与信率(預金に対する貸出比率)を見ると、銀行はまだ「預金余り状態」で、貸出意欲が高いのが現状です。銀行間の競争も激しいため、住宅ローン金利が大幅に上昇する可能性は低いと考えられます。
むしろ金利を維持しつつ、ポイント還元などで実質的な負担を抑える方策が取られる可能性が高いでしょう。
Q. 変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきでしょうか?
現状では変動金利で借りて、いつでも固定金利に変更できるオプションを持っておくのが良いでしょう。現在は変動金利(約0.3%)と固定金利(1%超)の差が非常に大きく、この差が小さくなるまでは変動金利の方が有利です。
特に固定金利の方が下がってきたタイミングがあれば、その時に変更を検討するのが賢明です。また、有価証券投資などで資産形成をしながら、必要に応じて住宅ローンの返済に充てることができる状態であれば、変動金利の選択はさらに合理的です。
Q. 不動産投資は資産形成として有効ですか?
株式などの短期的な投資で得た利益を安定的に活用する先として、住宅をはじめとする不動産投資は海外でも日本でも人気があります。不動産は株式と比べて「手触り感」があり、最悪の場合は自分で住むことも可能という安心感があります。
また、住宅ローンは個人がレバレッジをかけられる貴重な機会です。一般的に有価証券投資では借入れができませんが、住宅ローンは低金利で借りられるため、うまく活用すれば資産形成の一助となります。
Q. 「借金」に対する考え方はどうあるべきですか?
日本では借金に対してネガティブなイメージがありますが、時期、金利、将来の収入計画を加味して適切に借入れを行うことは必ずしも悪いことではありません。アメリカでは消費の約10%が借入れだと言われており、うまく資金を回していくことが一般的なライフスタイルです。
住宅ローンなどの「良い借金」を賢く活用し、資産と負債の両面からポートフォリオを考えることが重要です。ただし、過剰な借入れは避けるべきで、自分の返済能力を見極めた上での判断が必要です。
Q. 住宅を購入する時期についてはどう考えるべきでしょうか?
住宅価格が高くなっていることに対して「損をしている」と感じる人も多いですが、これは「サンクコスト」の考え方であり、将来を見据える必要があります。特にインフレ環境下では、資産価格は下がるよりも上がる可能性の方が高いと考えるべきでしょう。
変動金利の住宅ローンでうまく借入れをし、インフレ環境で資産価値が上昇することを期待するアプローチも一つの選択肢です。ただし、自分の資産状況や返済計画をしっかり立てた上での判断が重要です。