PIVOT TALK BUSINESS
「玉木流減税」の盲点。消費も賃金も増えない
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2024年11月12日

「国民民主党の減税案の効果は怪しい」と主張するデービッド・アトキンソン氏。玉木流減税案の問題点はどこにあるのか?本当に手取りを増やすにはどうすればいいか?給料を上げる4つの方法と合わせて、アトキンソン氏に聞いた。 <ゲスト> デービッド・アトキンソン|小西美術工藝社社長 1965年 イギリス生まれ...
「手取りを増やす」減税政策は経済を回すか?データなき"祈り"の政策に警鐘
デービッド・アトキンソン氏が語る「減税と経済循環」の落とし穴

Q. 国民民主党・玉木代表が提案している「手取りを増やす」政策について、どう評価していますか?
これは「願望的」な政策だと言えます。財政を使って経済が良くなることを「祈る」ようなものです。手取りが増えれば30年間伸びなかった日本経済が伸びると考えていますが、なぜ30年間伸びなかったのかという検証が全くなされていません。
「減税→消費増→企業収益改善→賃上げ」の循環は本当に機能するのか
Q. 玉木代表は「減税→手取り増→消費増→企業売上増→賃上げ」という好循環を描いていますが、この流れは現実的ですか?
この循環には複数の問題があります。まず手取りが増える理由は、所得が増えたわけではなく単に税金が下がるだけです。次に手取りが増えても、所得500万円以上の層はその多くを貯金に回すでしょう。さらに企業の売上が増えれば賃上げするという保証はほぼゼロです。
日本企業は1990年代から売上が横ばいなのに、利益は最高水準を更新し続けています。2023年度には金融除く日本企業の経常利益は初めて100兆円を超えました。企業の現預金も激増していますが、賃金はそれに比例して上がっていません。企業が儲かっても賃上げに繋がるという前提は、過去の統計からみても非常に疑わしいのです。
低所得者に本当に必要なのは減税なのか
Q. この減税政策は低所得者支援という観点から見ると効果的ではないのでしょうか?
低所得者の問題は税金ではなく、そもそも所得が低いことです。「低所得者」であって「低手取り者」ではないのです。減税をしても所得税をほとんど払っていない低所得層にとって、効果は限定的です。200万円以下の人の減税効果は年間8.6万円(月7千円程度)にしかなりません。
一方で、年収1000万円の人には22.8万円の減税効果があります。つまり、85%の救わなくてもいい人たちまで恩恵を受ける政策になっています。本当に低所得者を助けたいなら、最低賃金の引き上げの方がよほど効果的です。
最低賃金引き上げの効果と企業への影響
Q. 最低賃金引き上げについて、企業団体は「支払い能力がない」「倒産が増える」と主張していますが、実際はどうでしょうか?
それは「都市伝説」です。第二次安倍政権以降、最低賃金は1.4倍に上がりましたが、企業数は約1割純増し、就業者数も300万人以上増えています。商工会議所などは毎年「最低賃金を上げると倒産が増える」と主張していますが、11回連続で外れています。
現在1500円に引き上げるために毎年89円上げるとすると、企業全体の負担は年間1.4兆円程度です。これは人件費の1%にも満たない額で、中小企業の利益増加分(昨年は2.5兆円増)の半分程度にすぎません。企業にとって大きな負担にはなりません。
玉木氏の政策の根本的問題点
Q. 玉木氏の提案の根本的な問題点は何ですか?
最大の問題は、データに基づく検証がないことです。例えば「103万円の壁」を引き上げることで労働供給が増えると主張していますが、それによって何人の労働供給が増えるのか、経済効果がどの程度なのかという検証がありません。
最低賃金で働く人が何人いるのか、「103万円の壁」で労働調整している人が何人いるのかというデータすらないまま、7兆円以上の税金を減税に使うのは非常に問題です。概念図で理想論を描くだけで、各ステップの実現確率も検証されていません。
日本の政策立案の根本的課題
Q. 日本の政策立案全体に共通する課題は何でしょうか?
日本の政策立案はデータよりもエピソードベースで行われることが多いです。政治家に意見を言う人は「ノイジー・マイノリティ(声の大きい少数派)」であることが多く、それをもとに政策を作ると偏りが生じます。
また、基本的なデータすら不足しています。例えば厚生労働省の統計は5人以下の企業を対象外としていますが、日本企業の平均社員数は3.4人です。つまり85%の企業に近い部分を排除したデータで議論しているのです。
このように日本の政策はイメージと概念でぶつかり合い、データによる検証が十分になされていないため、30年間経済が伸び悩んでいるのです。
現実的な解決策とは
Q. より現実的な解決策は何でしょうか?
最低賃金を引き上げることが最も効果的です。それは低所得者に直接効果があり、財政負担もなく、企業に支払わせるものです。最低賃金を引き上げればピンポイントで低所得者を助け、手取りが増え、消費が増えます。さらに最低賃金を引き上げていくという循環の方が、現実的かつ効果的です。
さらに、「103万円の壁」などの所得制限は本来不要です。日本は高度成長期に税収が豊富だった時代に様々な歪みを作り出しました。これらの壁自体を廃止して、シンプルな制度にすることが本質的な解決策になります。