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体験価値を売れ “非効率”こそ大切だと語る理由【トリドールHD 粟田貴也社長】
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2024年11月8日

タクシーという半プライベート空間を舞台に、PIVOT MC陣が企業トップへ独占インタビュー。普段とは違う環境の中で「会社の変革」「新サービスの開始」「新社長誕生」など、経営者の生の声を引き出す。 <ゲスト> 粟田貴也|トリドールホールディングス 社長兼CEO 1985年 兵庫県加古川市で焼鳥居酒屋...
トリドールホールディングス・粟田貴也社長が語る「丸亀製麺」成功の秘訣
日本発の讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」を運営するトリドールホールディングスは、世界約30の国と地域で2,000店舗以上を展開し、2,300億円の売上を誇る企業に成長した。その原動力となったのは何か。代表取締役社長の粟田貴也氏に話を聞いた。

Q. トリドールホールディングスが目指している夢は何ですか?
世界規模で多くのお客様に来ていただけるグローバルフードカンパニーになることを目指しています。現在は国内の方が店舗数も売上も利益も多いですが、これが逆転して海外でもしっかりと店舗数と売上と利益を上げられるようになることが、私にとってのグローバルフードカンパニーと言えるところです。
Q. 創業から現在に至るまでの歩みを教えてください
1985年に兵庫県加古川市で焼き鳥屋から始めました。約15年間は焼き鳥専門店として展開し、上場も計画していました。しかし2002年頃に鳥インフルエンザが日本を席巻し、売上が半減以下となりました。上場計画を白紙にして事業の再構築を行う中で、2000年に1号店を開業していた丸亀製麺に注目しました。丸亀製麺が成長著しかったため、そこにリソースを集中させていきました。
Q. 丸亀製麺というビジネスモデルの着想はどこから得たのでしょうか?
焼き鳥専門店として事業を展開していた時、自分だけの圧倒的な強みを確立できていないと感じていました。そんな中、父親の出身地である香川に行った際、製麺所の前に行列ができている光景を目にしました。製麺所は店として見た場合、内装もサービスも特にない、うどんしか提供していない場所でした。しかし、多くの人が集まっていました。
その時に気づいたのは、お客様が求めているのは「粉からうどんを作って、出来立てを提供して、それを食べる」という体験価値だということでした。商品の美味しさだけでなく、製麺の過程を見せるという体験がお客様を引きつけていたのです。これは言わばミニテーマパークのような存在で、この体験価値を提供すれば唯一無二の存在になれると考えました。
Q. 全国展開する際に大切にしたことは何ですか?
標準化や効率化とは逆の道を選びました。チェーン店は通常、スケールメリットを追求し効率化を図るものですが、私たちは「体験価値」を最も重視しました。目の前で粉からうどんを打ち、釜でゆでて出来立てを提供するという一見非効率なプロセスをあえて守り続けました。
多くの人から「そんなことをしていては大きなチェーン店にはなれない」と言われましたが、自分たちの強みを手放すことはできませんでした。結果として、この「非効率」なプロセスがお客様を引きつけ、高い売上と収益をもたらし、早い展開につながりました。
Q. チェーン店として標準化しつつも、手作りの良さを残すバランスはどう取っていますか?
「二律両立」という考え方を大切にしています。一般的には「選択と集中」や「トレードオフ」という言葉のように、何かを得るためには何かを捨てるべきだと言われます。効率化のために属人性は排除すべきだという声もあります。
しかし、私たちは体験価値という唯一無二の強みを捨てることなく、両方を追求します。非効率に見える手作り体験を提供するからこそ多くのお客様が来店し、高い売上と収益につながります。成長のエンジンの源泉を常に忘れないことが重要です。
Q. 時代とともに変えてきた部分はありますか?
店の作りや商品メニューは時代に合わせて変えてきました。フェアメニューでは時代のトレンドを取り入れたうどんを提供しています。全てを変えないままでは時代錯誤が起き、お客様から見て鮮度が失われてしまいます。
コアな部分である「手作り出来立ての実演」は守りつつ、店の内装やフェアメニューは時代時代をうまく取り込んでいます。例えばコロナ禍では「うどん弁当」を開発しました。テイクアウトの需要に応えつつも、注文があってから目の前で調理するという丸亀製麺らしさは守りました。事前に作っておけば効率的ですが、体験価値を重視する私たちのあり方に反すると考えたのです。
Q. ヒット商品を生み出す秘訣は何ですか?
「面白くない」という言葉をよく使います。お客様の心に刺さらないと来店してもらえません。想像がつくことは、どこかで体験済みか見たことがあるということであり、そこでお客様の心をつかむのは難しいと考えています。
お客様がサプライズを感じた時に初めて来店動機になります。常識を疑うことが大事で、当たり前のことをやっても始まりません。人が「大丈夫?それでいいの?」と思うところに実は大きな正解が潜んでいると思います。人がノーと言ったときに「いけるんじゃないか」と思うことも実はあります。
Q. 人手不足や原材料高騰の問題にはどう対応していますか?
人手不足の環境はますます厳しくなり、自動化は避けられないテーマだと思います。ハイテクロボットやデジタル技術が利便性を発揮していくでしょう。ただ、私たちは体験価値と感動を提供するために、人の関わりを大切にしています。
一方で、お客様と向き合わない作業(バックオフィス業務)はAI予測などを活用して効率化を図っています。例えば需要予測で自動的にワークシフトを作成したり、自動発注システムを導入したりすることで、店長がお客様と向き合う時間を増やせるようにしています。
Q. 海外展開で成功するためのキーポイントは何だと思いますか?
高単価のハイエンドを目指すなら「ザ・日本」を持ち込めば歓迎されるでしょう。しかし私たちは大衆向け、最も大きいボリュームゾーンの方々に利用していただきたいと考えています。その場合、非日常の食事ではダメです。大衆に入っていくためには、味の親和性をどこかで担保しておかないとヘビーユーザー化していきません。
Q. 今後の課題や展望について教えてください
働く人の幸せも重要なテーマです。そのためにはコミュニケーションが日常的に行われていることが大切です。例えば、古い店舗をリニューアルする際には、客席数を減らしてでもスタッフルームを大きくするなどの取り組みを行っています。
世界規模で店舗展開を進め、海外での売上や利益が国内を上回るグローバルフードカンパニーを目指していきます。そのためにも、常に学び続け、時代に合わせた変化と守るべき価値のバランスを取りながら成長していきたいと考えています。